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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
暗躍する影
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第307話

「200人の魔族? それは本当に大丈夫なんですか? それもゴブリンにリザードマンなんて、可愛さの欠片もないのに、無理、無理に決ってますわ」


「200人か? ずいぶんと進んでいるね」


「進んでる気は全くしないけどな。あくまでもノエルの言葉を聞いてくれただけで、人族への偏見がないのはわずかなんだよ。ゴブリンのリーダーが協力的だから、ゴブリンはリーダーについて行っているだけ、リザードマンはカインが恩を売った事で、少し信じてくれているくらいだ」


協力的な魔族の人数と種族にセスは勝手に追い込まれ始め、顔を真っ青にしてぶつぶつと言い始めるが、エルトはそんなセスの様子を気にかけるわけでもなく、純粋に魔族側に200人もの協力者がいる事に驚きの声を上げると、ジークは2人の反応の違いに苦笑いを浮かべた。


「カインも知り合いなのかい? まったく、そんな報告は受けてないんだけど」


「いや、流石に言って回るような事でもないだろ。表だって言える事でもないし、エルト王子とカインが会う時は2人っきりってわけでもないだろ」


「そうだね。フォルムに行ってもセスやレインが一緒だからね。話す機会もないね。セスも魔族に偏見もあるし、レインに至ってはセス以上に頭が固いから」


「と言うか、エルト様が頭が柔らかすぎるのよ」


エルトはカインからの報告がない事に表情を小さく歪めるが、魔族へと偏見を持っている者達の前では話せるような事でもないため、直ぐに表情を戻す。

フィーナはエルトが簡単に状況を理解してしまった事に、少しだけ面白くなさそうに口を尖らせた。


「セスさんが味方になってくれましたから、カインさんがジオスに帰ってきた時に時間が合えば打ち合わせができますね」


「そうだね。まぁ、なかなか、そんなタイミングが合う時なんてないと思うけど」


「……そんな事を言ってるとあのクズが本当に現れそうでイヤね」


ノエルは自分達の求める世界に少しずつでも進んでいる事を実感できたのか笑顔を見せる。

ノエルの笑顔に釣られたのか、エルトはくすりと笑うが、フィーナはなるべくカインとは会いたくないようで眉間にしわを寄せた。


「フィーナ、そんな事を言ってるとあいつは本当にくるぞ。あいつはそう言う奴だ」


「そ、そんなわけないわよ!! ……そ、そうよ。くるわけないわよ。仮とは言え、あんな性悪のクズとは言え、領主になったんだから、用もないのに帰ってくるわけがないわ」


フィーナの様子にジークがからかうように言うと、その場にいた全員の視線は店のドアに向けられるが、ドアが開く事はなく、フィーナは安心したのか胸をなで下ろす。


「フィーナはどうして、そこまでカインが苦手なんだい?」


「フィーナはガサツで、カインはあれできっちりとしてるからな。性格は悪いけど、その性格の悪さで反論なんてできないくらいに徹底的に叩き潰すし、フィーナがキレて襲いかかったら、今度は肉体的に叩き潰すからな。フィーナが自分の非を認めればそこまで行かなかったはずだけど」


「まぁ、2人とも頑固だからね」


エルトはフィーナとカインの軋轢がいつ生まれたか気になっているようで首を傾げると、ジークは性格の不一致が原因だと言うが、エルトは2人が似ていると思ったようで苦笑いを浮かべた。


「変な事を言わないでよ。それじゃあ、私とあのクズが似てるみたいじゃない!!」


「似てると言えば、似てるか?」


「そうですね」


エルトからの評価が不満なフィーナは声を張り上げるが、ジークとノエルはエルトの言いたい事もわかるのか顔を見合せて頷く。


「似てないわよ。誰があんな人間のクズと!?」


「俺も他人をクズ扱いする人間にクズと言われる筋合いはないね。まったく、どこで育て方を間違えたかな」


「フィ、フィーナさん!? カ、カインさん、突然、何をするんですか!」


フィーナは冗談じゃないと言いたいようで大声を上げた時、タイミング良くカインが現れ、素早く店の中に入ってくるとフィーナを床に叩きつけると落ち方が悪かったのかフィーナは白目を向いてしまい、ノエルは慌ててフィーナに駆け寄ると治癒魔法の詠唱を始める。


「……タイミングを外してきたか?」


「いや、店の前に着いたら、タイミング良く、愚妹の叫び声が聞こえたから、少し時間を空けるべきかな? と思ってさ」


「……そうだな。お前はそう言うヤツだよな」


予想外のカインの登場に眉間にしわを寄せるジーク。その様子にカインは笑顔で言い切り、その性格の悪さに力なく笑う。


「それより、コーラッドさんに何があったんですか?」


「ノエルが魔族だって話をしたんだよ。ノエルとも仲良くなってきたし、そろそろ頃合いかと思ってさ」


「完全な不意打ちでな。セスさんだけじゃなく、俺達も思いっきり不意を突かれた」


カインは完全に1人の世界に入り込み、これからの事を考え始めているセスに目を止めると首を傾げた。

エルトは苦笑いを浮かべて、簡単に状況を説明すると彼の言葉をジークが補填するが、ジーク自身も不意打ちを受けた事もあるのかどこか納得はいかなさそうである。


「なるほど、それなら、納得できますね。真面目なコーラッドさんには処理しにくい状況ですからね」


「……私のせいではありませんわ。それより、カイン=クローク!! なぜ、あなたは200人の魔族を前にして、ひょうひょうとしていたのですか。その神経が信じられませんわ!! 魔族が200人もいるんですよ。その中に突っ込むなんて何を考えているのですか!!」


「ひょうひょうって、その場面に立ち会ったわけでもないのにそんな事を言われると、まるで、俺が何も考えていないようじゃないか」


カインは苦笑いを浮かべると、セスはカインの声に反応したようで、素直になれない性分のせいか、まるで見てきたかのようにカインがゴブリンとリザードマンの前に立った時の事を言い始める。

カインはセスの言っている事がわからないと言いたげにわざとらしく肩を落とす。


「……いや、ひょうひょうとしてただろ。俺達を含めて、あの場にいた全員を手玉に取ったんだからな」


「そ、そうですね」


ゴブリンとリザードマンの和解に立ち会ったジークとノエルはその時のカインの姿とセスが決めつけているカインの姿が同一だと思ったようで苦笑いを浮かべた。


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