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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
暗躍する影
302/953

第302話

「シュミット様、何か御用ですか?」


「当たり前だ。そうでなければ、私がこのような場所まで足を運ぶわけがないだろ。まったく、それくらいもわからんのか? これだから騎士は使えないのだ。まともに頭を使うと言う事を知らん。だいたい、平民と話しているなら、優先すべきは王族であるこの私であろう。それくらいも理解できんのか!!」


ラースはシュミットに屋敷を訪れた理由を聞くと、シュミットはラースを見下したように言う。


「……あの小者を見てると、少しは礼儀が必要かと思うな」


「そうね。まぁ、おっさんには使う気もないけど、後はエルト様にも最近は必要ないんじゃないかって思ってきたわ」


シュミットの様子にジークは少しだけ態度を改めようと思ったようであり、フィーナも同じような意見も持ったようだが、あまり使う機会もないためか苦笑いを浮かべる。


「あの、エルト様もライオ様も気にしてはいませんけど、いろいろとありますし、もっと気にした方が良いと思いますけど」


「そうなんだけどな。ウチの店にきてる時に下手に敬語だなんだってやって王族だってばれるのもなんだしな」


「でも、ジークさんは正式な場であってもエルト様にはあのままの気がします」


ノエルは王族相手にもあまり敬語などを使おうとしな2人の事が気になっているようであり、考えを改めるように言うがジークはジオス以外なら気を使うと言う。

しかし、その視線はノエルから外れており、ノエルはジークの性格をしっているためか小さく肩を落とした。


「それで、私達って、どうしたら良いの? おっさんはあの小者の相手をするのに忙しそうだし、ここに残ってる理由もないでしょ」


「そうなんだけどな……フィーナのせいで報告書も貰えてないからな。帰るに帰れないんだよ」


「それは私のせいじゃないわ」


ラースとシュミットの様子を眺めながら、フィーナはそこで初めてジークが早く帰りたいと言っていた理由に気が付いたようであり、ジオスに戻ろうと言う。

ジークはフィーナの意見に頷きたいものの、ここで帰ってはノエルに怒られる事もあり、その責任をフィーナになすりつけるが、フィーナはきっぱりと自分の責任ではないと言い切った。


「……まぁ、今の状況でフィーナを責めても仕方ないか?」


「そうよ。だいたい、責められる理由がないわ。それでどうするのよ? ここで待ってるのもなんだし、久しぶりに相手をしてくれる?」


ジークは自分でもどこかフィーナに責任をなすりつけている事がわかっているようで小さくため息を吐くと、フィーナは自分が悪いなど思ってない事もあり、ラースとシュミットの会話が終わるまでの時間がヒマなためか、手に持っていた木剣の剣先をジークに向ける。


「いや、俺の武器は魔導銃だし、木剣は向かないんだよ」


「何よ? 昔は木剣を振ってたじゃない。今だって使えるんじゃないの?」


ジークは武器が違うと言って断ろうとするが、幼なじみであるフィーナを誤魔化せるわけなどない。


「ジークさんって、剣でも戦えるんですか? 魔導銃しか使ってるとこみた事ないんですけど」


「そりゃそうでしょ。曲がりなりにもおじさんとおばさんの息子なんだから、子供の時は木剣振り回してたわよ。体術もあのクズに叩きこまれてたし、こんな事を言ってるけど、実際、剣で武術大会に出場したって良かったのに」


「それなら、もっと先に進めましたか?」


「そりゃそうよ。小さい子供だって手を抜いてくれてた事もあると思うけど、子供の頃に村にきてる冒険者相手に練習していたんだから」


ノエルはフィーナの言葉に驚きの声を上げるとフィーナはため息を吐きながら、ジークの戦闘能力の高さをノエルに話す。

ノエルは単純にジークの事を知れる事が嬉しいようで目を輝かせながら、フィーナに詰め寄り、フィーナはノエルに期待されてはジークは断らないと判断したようで、ジークの子供時代の練習について話し始める。


「おい。余計な事を言うな」


「余計な事でもないでしょ。だいたい、魔導銃は強力だろうけど、それが使えない状況になったら、どうするつもりよ? 魔導銃自体が特別な武器なんだから、取り上げられて役に立たないとか止めて欲しいのよ。この先の事を考えると鈍った身体を鍛え直すには充分な機会じゃない」


ジークはノエルを味方に引き入れようとしているフィーナの様子に大きく肩を落とすが、彼女にしては彼女の言い分があるようであり、その言葉の先にはいつの日か起きるかもしれないレムリアと対峙する日の事を見据えている。


「鍛え直すか? ……確かにそれはそうなんだけどな」


「小僧」


「……ついに来たか?」


ジークもどこかでフィーナの言い分もわかるようで頭をかく。

その時、眉間にしわを寄せたラースがジークを呼び、ジークはラースからの指名に悪い予感しかしないため、眉間にしわをよせるとラースとシュミットの元に向かって歩き出し、その後をノエルとフィーナが付いて歩く。


「……」


「あれね。ラング様を見てる分、さらに小者に見えるわね」


「フィーナさん、言葉を慎んでください。こう言う人はどこにでもいますから」


「……ノエル、さらっと言ったけど、今、かなりきつい事を言ったぞ」


3人を値踏みをするような視線を向けた後にシュミットは小バカにするように鼻で笑う。

フィーナはシュミットの態度にすでに呆れているのか小さくため息を吐くとノエルは苦笑いを浮かべるが、ノエル自身、ドレイク領でシュミットのような血脈で他者を見下す人間になれているようであり、その言葉は少しきつい。


「おっさん、それで、何かようか? 俺達は報告書を受け取って、早くジオスに帰りたいんだけど」


「そうだな。応接室に戻るか」


ジークはシュミットの相手をする気はないため、ラースに報告書について聞くとラースは小さく頷き、シュミットを無視して3人に付いてくるように言い、3人はラースの後に続こうとする。


「ラース、貴様、いったいどう言う事だ!! なぜ、私の意見を無視する!! このような平民など使わなくても、この平民から、魔導機器を取り上げてしまえと言っているだろう!!」


「……シュミット様、何度も説明していますが、そのような権利は例え王族にもありません」


シュミットは自分を無視するラースにつかみかかるが、彼の意見はあまりにも自分勝手であり、ラースは眉間にしわを寄せて彼の手を払う。


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