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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
暗躍する影
300/953

第300話

「あの、ジークさん、この声って、それに今、シュミット様って」


「……ノエル、フィーナを置いて帰るか? 面倒事に巻き込まれる前に」


ノエルは怒声を響かせながら近づいてくる声の主の名に苦笑いを浮かべるが、ジークはこの屋敷に残っていると厄介な事に巻き込まれるとしか思えないようであり、ノエルに魔導機器を出すようにと彼女の前に手を出した。


「ダ、ダメですよ。わたし達はルッケルの連絡係なんですから、役目を果たさずに帰るわけにはいきません」


「でもな」


ノエルはジークの言葉には従えないと自分の懐の中にしまった魔導機器を抱え込み、ジークは先ほどより、さらに近付いてきているシュミットの声にため息を吐く。


「ラース!!」


「シュミット様、お待ちください」


その時、小奇麗な服を身にまとった青年がラースの名を叫び、その後にラースの屋敷に仕えている従者の男性が息も絶え絶えの状況で庭に入ってくる。


「来ちゃったよ」


「そうですね」


「ラース、私の声が聞こえないのか!!」


目に映った青年の姿にジークは眉間にしわを寄せ、ノエルは苦笑いを浮かべるが、シュミットは平民とバカにしている2人の事など目に入れる気もないようで、自分がきているにも関わらず、返事をする事のないラースに苛立っているようで彼に近づいて行く。


「……バカだと思ってたけど、やっぱり、バカだな」


「あ、危ないです!? ラース様、フィーナさん!?」


フィーナとラースはお互いのスキを狙っており、シュミットの事など視界に入ってなどなく、近付くのは危険な状況であるのだが、シュミットは王族である自分に木剣が向けられるとなど思っていないようである。

そんな彼の姿にジークは頭が痛くなってきたようで手で頭を押さえ、ノエルはシュミットを制止しようと声を上げたが彼が立ち止まる事はなく、2人との距離を縮めて行く。


「ラース!!」


「……」


シュミットが再び、ラースの名前を叫んだ瞬間、フィーナが地面を蹴り、一直線にラースに向かって駆け出した。

彼女が駆け出した時にはラースに対して怒りをあらわにしたシュミットがラースにつかみかかろうとしている。

しかし、戦いに集中しているフィーナとラースにはお互い以外目に映っていないようであり、2人の木剣はシュミットを叩きつけ、シュミットは地面に頭から倒れ込んで行く。


「あ、あの。ジークさん、どうしましょうか?」


「ほっといて良いんじゃないか? 訓練の中に自分から乱入して行ったわけだし、自業自得だ」


地面に倒れ込んだシュミットをフィーナとラースは気にする事無く踏みつけながら、木剣をぶつけ合っており、踏まれるたびに小さく悲鳴を上げるシュミットの様子にノエルは顔を引きつらせるが、ジークはシュミットにあまり関わり合いたくない事もあり、無視する方向で話を進めようとしている。


「ダ、ダメですよ。あのままじゃ、大ケガしちゃいます!!」


「あー、その時はウチの薬を買ってもらうって方向で」


「ジークさん」


「わかったよ。ったく」


ノエルはやはり無視する事は出来ないようでジークの顔を見上げると、ジークはノエルの様子に1度、頭をかくと腰のホルダから魔導銃を抜き、フィーナへと照準を合わせるとその引鉄を引いた。


「へ!? ちょ、ちょっと、ジーク、何をする気よ!?」


「小僧、邪魔をするな!!」


「……もう1発」


魔導銃からは青い光が放たれ、その光はフィーナの右足を包み込むと右足から凍りつき始め、フィーナは足が動かない事に気づき、原因であるジークを怒鳴り付ける。

フィーナの動きが急に鈍り、ラースはジークを怒鳴りつけるが、ジークは何もしないとノエルに怒られ、2人を止めるとフィーナとラースに怒鳴られるとこの状況に理不尽なものを感じているようで躊躇する事無く、2発目をラースの右足に向かって放つ。


「小僧、どう言うつもりだ!!」


「そうよ。くだらない事だったら、ただじゃ済まさないわよ!!」


ジークの魔導銃から放たれた青い光をラースは交わす事ができず、フィーナと同様に右足を凍りついてしまい、2人は怒りの表情でジークを睨みつける。


「……足元を見てくれ」


「足元? ……誰よ。こいつ?」


「……シュミット様? こんなところで何をしているんですか?」


ジークは2人の足元を指差すと、フィーナとラースの視線は足元に移り、地面に倒れ込んでいるシュミットに気づく。

フィーナはシュミットの顔にまったく見覚えがないようで首を傾げるが、ラースはシュミットが地面に倒れ込んでいる意味がわからないためか眉間にしわを寄せた。


「ほ、本当に気が付いてなかったんですね」


「みたいだな。おっさん、フィーナ、とりあえず、そのバカをずらすぞ。治癒魔法は良いか? このバカのためにノエルの魔力を使うのはもったいない」


「な、何を言ってるんですか。それくらいやりますよ」


ノエルは2人の反応に顔を引きつらせると、ジークはフィーナとラースの足元からシュミットを引っ張り出す。

シュミットは完全に目を回しており、ジークはバカに巻き込まれたとしか思っていないため、シュミットの治癒までしてやる必要はないと考えている。

しかし、ノエルはシュミットの事を放っておけないと言うと精霊に呼びかけ始め、彼女の身体を淡い光が包んで行く。


「で、ジーク、こいつ、誰よ?」


「……おっさん、俺はこの小者を何と説明したら良いんだ?」


「小僧、お主はもう少し礼儀と言う物を覚えようとは思わんのか?」


ノエルの治癒魔法は無事に発動し、彼女の手から淡い光はシュミットの身体に移り、彼のキズを癒し始める。

その様子を見ながらフィーナはジークにシュミットについて聞くが、彼自身、シュミットを小者としか評価しておらず、他に説明のしようがないため、眉間にしわを寄せるとラースは眉間にしわを寄せた。


「礼儀も何も俺だってそれくらいは考えてる。ただ、少なくともこの小者に礼を尽くす必要性を感じないんだけど、それにこいつは俺の店に嫌がらせをしてるわけだし」


「嫌がらせ? 何、ずいぶんな小者ね」


シュミットがしている嫌がらせの事もあるため、ジークはシュミットに気をかける必要性などないときっぱりと言い、フィーナはジークの言葉に汚物を見るかのような視線でシュミットを見下ろす。


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