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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
暗躍する影
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第288話

「確かに、レギアスの父親に良いように使われている可能性が高いけど、そこら辺はレギアスが上手くやってくれると思うよ。ラースもいる事だしね」


「おっさんもって言うけど、本当におっさんで大丈夫なのか?」


ジークの口から出たシュミットの名前にエルトは眉間にしわを寄せるが、エルトはレギアスだけではなくラースの事も信頼しているようであり、直ぐに表情を和らげる。

しかし、ジークはどこかでラースの暴走する欠点を信頼できないようでため息を吐いた。


「ジークはまだ、ラースを信頼できてないみたいだね」


「うーん。何と言って良いのかわからないけど、確かに冷静になってみるとおっさんが若い騎士にも信頼が厚いってのはわかるんだけど、最初のがやっぱりどこかで引っかかってるんだよな」


「あの時は、慣れない土地でライオが行方不明になった事もあるから、ピリピリしていても仕方なかったと思うけどね」


ジークは今回の連絡係の件でのラースへの評価を上げたようだが、それでも、最初に誘拐犯扱いされた事が引っかかっており、苦笑いを浮かべる。

エルトは状況も状況であったためか、ラースの気持ちも組んで欲しいと言う。


「まぁ、そこら辺は、今回の連絡係をやって行けば、わかるだろ」


「そうだね。できれば、私としてはジークとラースには上手くやっていて貰いたいんだよ。私としてもシュミットの命を奪う事はしたくない」


ジークはエルトの言いたい事もわかるようで頭をかくと、エルトはシュミットの件もあるためか、少しだけ表情を曇らせる。


「やっぱり、シュミットの事は気になるのか?」


「それはね。出来が悪くてもやっぱり従弟だしね。叔父上にも世話になっているし、見捨てる事は出来ないよ」


その表情の変化にジークはエルトの心の中が気になるようであり、彼の顔へと視線を移す。

エルトはラングや小さな頃のシュミットの事を思い出しているのか少しだけ困ったように笑う。


「きっと、シュミットも悩んでいるんだよ。叔父上は優秀だ。何をさせても結果を出してくれる。その後継者を言われて育ったんだ。だけど、自分にはできない事があって、それを簡単にやってのける人間がいれば、鬱屈したくなる気持ちもわかるよ。才能を引き継げなかったものがどれだけ哀れかもね」


「エルト様?」


エルトは自分の苦手な分野を理解しているが、彼が今のような考えに至るには彼なりの葛藤もあったようであり、そんな彼の様子にノエルは心配そうに彼の名前を呼ぶ。


「叔父上は私の葛藤を理解してくれた。それを見て、フィリム=アイ教授に頼み、カインと引き合わせてくれた。彼の持つ考えは私に多くの物を与えてくれたよ。シュミットにもそう言う友人がそばにいてくれれば良いんだけど」


「シュミットはエルト王子と違ってそこまで割り切れてないんだろうな」


「そうですね。でも、そのために誰かを落としいれるのは悲しいです」


エルトはシュミットのそばに彼の苦しみを理解してくれる者がいない事を嘆いており、ジークはバカにしていたはずのシュミットに少しだけ同情してしまったようである。

ノエルは争う事に良い感情も持っていない事もあり、悲しそうに目を伏せた。


「それにね。この国を1人2人で治める事なんて絶対に無理なんだ。アズやレギアス、優秀な人間はいくら居ても困らない。シュミットにだってやれるべき事はあると思うんだよね。だいたい、不必要な人間なんてこの世にはいないんだから」


「まぁ、人気取りが得意ってのは、民の声をいち早く聞けるって事だろうし、行動力はあるんじゃないか? それが自分の保身のためだったりしても、と言うか、じっくりと考える事ができる人間をそばにおけばそれなり上手く行くんじゃないのか?」


エルトの考える国のあり方ではシュミットも欠かせない人間であり、ジークは少し考えると方向性は間違っているがシュミットの行動力には目を見張るものがあると思ったようで苦笑いを浮かべた。


「そうだね。シュミットの行動力は目を見張るものがあるね。方向性が確実に間違ってるけど」


「エルト王子、誰か、いないのか? シュミットのそばに仕えさせる人間。エルト王子からラング様や王様にでも話せば付けてくれるんじゃないか?」


「うーん。それで付けられたのがラースだから、ワームにはレギアスもいたし、人材的には申し分ない気もするんだけどね」


ジークはそこまでわかっているなら、シュミットに当たらしい目付け役を付けるべきだと言うとエルトはラースとレギアスの名前を出す。


「レギアス様は問題ないけど、おっさんはな。他人の話を聞かないだろ」


「ジークさん、どうして、ラース様をおざなりに扱うんですか!?」


「あー、冗談だよ」


ジークはラースを誉めるのは納得がいかない部分もあるようでため息を吐く。

その様子にノエルは驚きの声を上げるとジークはノエルの反応が面白いのかくすりと笑う。


「まったく、ジークさんは、だいたい、いつまで、ラース様の事をあんな風に呼んでいるつもりですか? わたし達は正式にルッケルとワームの連絡係を任せれたんですから、少し態度を改めないとダメです」


「そうですね。ジークも正式なものなら、分別は付けるべきだと思います」


「いや、おっさんはおっさんで良いだろ」


「そうだね。ジークとラースなら、そのままで良いんじゃないかな? ラースもイヤだったら言うだろうし」


ノエルは正式な依頼として仕事を受けたのだから、今までのままではダメだと思っているようでラースの呼び方を変えるように言うとセスはノエルの意見に賛成のようで大きく頷いた。

しかし、ジークはラースに敬語を使う気はないようできっぱりと言い、エルトはジークのそんなところをラースが気に入っていると思っているようでくすりと笑う。


「エルト様もジークさんを甘やかさないでください」


「いや、甘やかしてるわけじゃないけど」


ノエルはエルトからも賛成意見が貰えると思っていたようであり、エルトの反応に声を上げるがエルトはそんな彼女の様子に苦笑いを浮かべるだけである。


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