第28話
「……あれだ。人族の使う薬草ってゴブリンに効果があるのか?」
「……正直、やり過ぎたとは思ってるわよ」
ゴブリンのリーダーはジークに膝を屈し、一先ずはノエルと話をしており、ジークはフィーナがぶっ飛ばしたゴブリン達の簡単な治療を始めているのだが自分の持っている傷薬の効果が心配なようで首を傾げる。
「……イッパンテキナモノハコウカハアル」
「そうか? それなら良いな。ノエルと……」
「『ギド』」
「フィーナ、魔香草を2人にやってくれ」
「了解」
ゴブリンのリーダーは話をする上で名乗らないのも都合が悪いと思ったようで『ギド』と名乗り、ジークは2人に使用した魔力を回復させる貴重な薬草を渡す。
「……ノエルサマ、コノニンゲンハバカナノデスカ?」
「違います。ジークさんは優しいんです」
ギドは魔香草を受け取ると人族と敵対関係にあるはずのゴブリンに治療を施し、貴重な治療薬を渡すジークに眉間にしわを寄せるがノエルはにっこりと笑う。
「それで何ですが」
「……ココマデジツリョクサヲミセツケラレテイノチヲタスケラレタノデス。コレイジョウハナニモシマセン」
「ありがとうございます」
ギドはこれ以上の戦闘は無意味だと説得に応じてくれ、ノエルは深々と頭を下げ、
「あのさ。ギド、この遺跡って何があるか知ってるのか?」
「……シラズニキタノカ?」
ジークはギド達は遺跡の奥に何があるか知っているのかと気になったようで軽い口調で聞くと何も知らずにジーク達がここにきた事にギドはため息を吐き、
「……成り行きなんだよ」
「そうね」
ジークとフィーナはギドの呆れた様子に彼から視線を逸らす。
「……コレハオマエタチニニンゲンニワタスワケニハイカナイモノダ。タチサレ」
「人間が持ってはいけないもの? あれか。聖剣とか魔剣の類で魔族を倒すために鍛えられた武器とか?」
「ジーク、何くだらない事を言ってるのよ。こんな片田舎にそんな大層なものが眠ってるわけがないでしょ」
「……ソノトオリダ」
ギドの言葉にジークとフィーナは冗談交じりで魔族と戦うための武器があると言うとギドは2人の言葉を肯定し、ジーク、フィーナは顔を引きつらせるが、
「ジークさん、その武器なら、わたしの角を折れるんじゃないですか? その武器をジークさんが手に入れれば角が生えてきたらまた折れば良いわけですし。これで解決です♪」
ノエルだけは呑気そうに奥に眠る武器を使えば村に残るために邪魔な角を落とす事ができると喜んでおり、
「……いや、ノエル、それは違うだろ。それもそんな大それた武器で簡単に言うな」
「……ノエルサマ、ナニヲオッシャラレテイルノデスカ?」
「そうなんですか? だって、ギドさん達が持ってて誰かに襲われて奪われたらまた戦いの火種になりますし、ジークさんの家で保管しといた方が安全じゃないですか?」
ジークとギドはノエルの言葉に彼女の間違いを否定しようとするがノエルは何を考えているのか遺跡の奥に眠る武器を片田舎のジークの家で保管しようと言い始める。