表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
暗躍する影
277/953

第277話

「アズさん、遅いですね」


「まぁ、忙しい人だからな」


薬の調合は失敗する事無く無事に終わり、2日後にアズの屋敷を訪問する。

応接室に2人は通されるが、領主であるアズはやはり忙しいようで直ぐに面会は叶わない。


「ジーク、ノエル、待たせてしまって、申し訳ありません」


「別にかまいませんよ。それより、おっさんはどうしたんですか? アズさんの屋敷にしばらくいるって言ってましたよね?」


しばらく、待っているとアズが1人で応接室に現れるが、目的のラースがいない事にジークは首を傾げた。


「ラース様がルッケルにいると言う事で、鉱山の調査をしてくれている方が、せっかくだから、巨大ミミズの捕獲に付き合えと言って、連れて行ってしまいました」


「そ、そうなんですか?」


「……今更だけど、おっさんの家って、聖騎士も出してる名門なんだよな。それなのに付き合えって言って、引っ張って行く人間がいるのかよ」


ラースは王都からの研究者に連れて行かれてしまったようで、アズは困ったように苦笑いを浮かべる。

ジークはラースに自分でもかなり失礼な事を言っているにも関わらず、自分の事を棚に上げて、研究者へと文句を言う。


「それに関してはジークが言うのはおかしい気がしますね」


「そうですね」


「……」


そんなジークの様子にため息を吐くアズ。ノエルは少し困ったように笑って頷くとジークは2人の反応に少しだけ気まずそうに視線を逸らす。


「まぁ、おっさんがいないなら、どうしますか? アズさんだって忙しいですし、しばらく、待ってましょうか? それとも、いつも通り、自分の生活を放り投げて診療所でくたばりそうになっているリックさんの家の片付けでもしてきますか?」


「また、荒れてそうですよね」


ジークにとってはラースが仲介してくれる取引が重要であり、彼がいない時に話し合いを行って2度手間になるより、ラースが戻ってくるのを待とうと言う。

その際に、冗談なのかリックの名前を出すとノエルはいつも、訪れる度に荒れているリックの家を思い浮かべてため息を吐いた。


「確かに荒れていそうですけど、問題はないでしょう。それにそちらに行くのなら、鉱山へ行って、ラース様を呼びに行って貰いたいです」


「鉱山に? いや、行っても俺とノエルじゃ、足手まといだから」


アズはラースを呼んできて欲しいと言うが、ジークは戦力面を考えるとノエルと2人で巨大ミミズと戦う事になっては危険なため、首を横に振る。


「そんな事もないと思いますけど、ジークとノエルの実力はこの間のイベントや毒ガス騒ぎの時にも見せていただきましたし」


「いや、その前に元々、探索を視野に入れてないんで魔導銃を持ってきていませんから」


「はい。転移の魔導機器で移動するなら、村や街の外に出ませんし、材料集めを予定していなければ装備品は」


アズは2人の実力を認めているようだが、2人は戦闘を行う気もなかったため、武器も防具も持ってはいない。


「そうですか? 護身用に持ち歩くのは必要だと思いますよ」


「武器を持ち歩いてると厄介事に巻き込まれそうな気がしてならないんですよね」


「何を言ってるんですか? 武器を持っていても持っていなくてもジークはきっと巻き込まれますよ」


「……恐ろしい事を言わないでください」


アズはジークがおかしな事を引き寄せる才能を持っていると思っているようで苦笑いを浮かべる。

しかし、ジークにとってはアズの言葉は冗談では済ませたくないため、力なく笑う。


「……まったく、ワシは今はレギアスの代わりにルッケルに来ていると言うのにお前は」


「あまり、硬い事を言うな。それにその無駄なバカ力を持て余しているのはもったいないだろう。お前のバカ力があってこそ、あの巨大ミミズを生捕りにできたんだ。これで調査が進む。若い冒険者は目先の利益に流されて、殺してしまうんでな。研究が進まなくて困っていたんだ」


その時、ラースが戻ってきたようで応接室の外からラースの怒声が響く。


「誰か、いるみたいですね」


「あの声はフィリム先生ですね。鉱山で何かあったんでしょうか?」


「フィ、フィリム? アズさん、ひょっとして、魔術学園の教授のフィリム=アイって人ですか?」


ラースの声の様子から、彼が1人でない事は予想が付き、ノエルは首を傾げるとアズはラースと一緒にいる人間に心当たりがあるようでもう1人の名前をジークとノエルに伝える。

その名前は以前にセスから関わってはいけないと言われた魔術学園の教授の名前であり、ジークは顔を引きつらせた。


「そうです。王都から、巨大ミミズや巨大モグラの生態と地震について研究して貰っています。ジークとノエルは知り合いなんですか?」


「……いや、セスさんから絶対に関わるなって言われたんで」


ジークの様子にアズは首を傾げるが、ジークは今この時をどう乗り切るか考えているようで眉間にしわを寄せる。


「遅れて申し訳ない」


「失礼します……ほう。君がトリスとルミナの息子かい? トリスに似て、なかなかふてぶてしい顔をしているな」


ドアが開き、ラースとともにフィリムと思われる中年男性が入ってくる。遅れた事をラースは謝罪するがもう1人の男性は彼の横を何食わぬ顔で通るとジークの顔をのぞき込むと彼の両親である『トリス=フィリス』、『ルミナ=フィリス』の名前を呼び口元を緩ませた。


「……」


「ジークさん」


「フィリム、余計な事を言うな。ワシはレギアスに頼まれて、この者達と話す事があるんだ。邪魔をするなら、追い出すぞ」


「それは悪かった」


両親の名前にジークの顔には怒りの表情が現れる。その様子にノエルは不安そうな表情で彼の服を引っ張る。

ラースはフィリムがジークを挑発している様子に視線を鋭くし、彼を恫喝するがフィリムは気にした様子もなく、屋敷の主であるアズに断りを入れる事無く、ソファーに腰を下ろす。


「すまんな。小僧、フィリム、お前は小僧に言うべき事があるのではないか?」


「言うべき事? 特にないな」


ラースはフィリムの態度をジークに謝罪し、フィリムにも謝罪を促すが、彼はまったく気にした様子はない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ