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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
暗躍する影
276/953

第276話

「ホントかよ?」


「あくまで噂だけどね。街道を整備して王都から兵士や騎士を呼び寄せるってなると結構な大軍よ。そうなるとゴブリン達やリザードマン達って合わせても200人くらいでしょ。下手したら……」


フィーナから聞かされた噂にジークは噂が本当だった場合に起きるであろう事に3人の表情は暗く沈んで行く。


「エルト王子にも話を聞いてきた方が良いよな……後はカインとも話をしておきたいな。集落を捨てる事になっても死ぬよりマシだろうし、カインの領地のそばで保護できないかも視野に入れてだな」


「……頼りたくはないけど、仕方ないわね」


重くなっている空気のなか、ジークは冷静にギド達が殺されない方法を考えようとするが、直ぐに良い案が浮かぶわけもなく、カインやエルトと言った親魔族の人間の協力を仰ぎたいと言う。

フィーナもカインに頼るのは納得がいかないようだが、性格に目をつぶれば彼ほど優秀な人間はなかなかいなく、大きく肩を落とす。


「ジークさん、どうして、ギドさん達が逃げださないといけないんですか? 悪い事なんてしてないのに」


「それは、確かにそうなんだけど……」


しかし、ノエルは魔族と人族だから、戦争になるという考えを捨てて欲しいため、納得がいかないような表情をする。

そんな彼女の様子にジークはノエルの考えが間違っていない事は理解しているが現実問題では話し合いの解決は考えられない事もあり、どう答えて良いかわからずに頭をかく。


「何て、言ったら良いかな?」


「ジーク、あんたらしくないわね」


「何だよ?」


「言い難い事があっても、それが言うべき事なら、バッサリ言うのがあんたでしょ。私相手だと周りに甘やかすなって言ってたくせに、自分はノエルを甘やかす気?」


ノエルと同じ道を歩くと決めた事で、ノエルの考えを尊重したいジークは伝えやすい言葉を探そうとしており、その様子にフィーナはため息を吐くとノエルに遠慮しすぎだと言う。


「……お前は誰だ?」


「あんた、何を言ってるのよ?」


「いや、フィーナがまとものな事を言ってるから、偽物だと思って」


フィーナの口から出た言葉が信じられないようで眉間にしわを寄せるジーク。フィーナはジークが何を言いたいかわからないようで首を傾げるが、彼の口から続く言葉はかなり失礼なものである。


「どう言う事よ。あんた、表出なさい!!」


「いや、俺、調合中だから、俺は無職と違ってヒマじゃないんだよ」


「私は無職じゃないって言ってるでしょ!!」


「フィ、フィーナさん、落ち着いてください!? ジ、ジークさんもどうして、フィーナさんを怒らせるような事を言うんですか!!」


フィーナの顔は怒りで直ぐに真っ赤に染まり、ジークを怒鳴りつけると調合室に乱入しようとする。

ジークはフィーナの怒りなど知らぬ顔で調合を続け、ノエルはフィーナの腕をつかみ、何とか彼女を引き止める。


「まぁ、フィーナの言う事は珍しく正しいからな。ノエル、今回、ギド達に何も悪い事はしてない。ノエルの言い分は正しい。だけど、それを伝える手段が現状で言えばない」



「それなら、わたし達が間に立てば、ギドさん達もわたし達の考えに共感してくれていますし、できるはずです」


「誰が聞いてくれる? ギド達には話し合いをする意思があっても、悲しい事に人族が話し合いの場に出てくる事はない。ノエルは見ただろ。ゴブリンとリザードマンの話し合いを、相手の考えを聞いてくれる場所に引っ張り出す事が出来なければ話し合いでの解決はない。話し合えてもお互いが妥協点なりを見つける事が出来なければ、話し合いも無駄になってしまう」


ノエルとフィーナの様子に苦笑いを浮かべた後、ジークは真面目な表情をしてノエルが正しい事には納得するが、彼女の考えが現実的ではない事を改めて、告げた。

ノエルは自分達がその架け橋になろうと主張するが、それだけでは何も解決しないとジークは首を横に振る。


「で、でも」


「人族と魔族の間を取り持つ架け橋にはなりたい。だけど、今はお互いに準備ができていない。フィーナが言った噂の信憑性もわからないし、もし、討伐隊が組まれた時、指揮する人間がどんな考えを持っているかもわからない。指揮する人間がエルト王子のような考えを持っていれば、話を聞いて貰えるけど、場所の面から考えてワームの中のお偉いさんが指揮を執るような事になれば、共存を望んだって鼻で笑われるだけだ」


「それで、済めば良いわよ。最悪、首が飛ぶわよ」


納得がいかなさそうな表情のノエルにジークは情報も集めずに飛び出すのは危険だと言い、フィーナは裏切り者と言われて処刑される可能性が高いと冗談めかして言うが笑える事ではない。


「何も考えずに突っ込んで行けるほど、俺は殊勝じゃない。2人で殺されるより、2人で生きてく道を探したいんだからな。そのために努力はするけど、殺されるかも知れないところにノエルを送り出す気もないからな。それともノエルは俺を置いて、1人で無謀に突っ込んで行くつもりか?」


「わたしだって、ジークさんと一緒が良いです」


「あのさ。2人とも私がいる事、忘れてない?」


ジークの言葉にノエルは顔を赤くして頷くとフィーナは少し居心地が悪くなったのか。自分に気を使えと言いたいのかため息を吐く。


「す、すいません!?」


「いや、謝られるものなんか違う気がするんだけど、それで、ジーク、あんたがどうする気?」


フィーナのため息にノエルは慌てて謝るが、それはフィーナにとっては喜ばしい事ではなく、苦笑いを浮かべると真剣な表情に戻り、ジークにどうする気かと聞く。


「とりあえずは、噂の真偽の確認。あれだけの街道を整備するなら、かなりの時間がかかるし、明日、明後日でどうにかなる話じゃないしな。それにアズさんやおっさんがその噂を知っているかも気になるし、王都から騎士や兵士を呼び寄せるつもりなら、エルト王子の耳に話が入っていてもおかしくないだろうしな」


「と言うか、エルト様が知ってたら、こっちに飛んでくるんじゃないの?」


「その可能性もあるけど……セスさんはノエルが魔族だって知らないし、セスさんがいるところだと話せる話じゃないから、避けてるかも知れないな」


ジークは情報をまとめる事で噂の信憑性を確認してから、行動を決めて行きたいようで、考えないといけない事が一気に増えた事に大きく肩を落とす。


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