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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
王都探索
268/953

第268話

「……何で、付いてくるんだ?」


「そりゃ、ジークがヘタレて、ノエルに告白できないかは置いておいて、彼女を目の前にして、また逃げ出しても困るからね。2度も逃げ出したら、ノエルが傷つくだろ」


「まったくですわ。ノエルを泣かせてみなさい。すぐにその頭蓋を粉々に砕いて差し上げますわ」


ジークはエルトが加わった事で、これ以上、王都にいても逃げきれないと思ったようでまたも転移の魔導機器で逃亡を試みていたのだが、転移魔法の使い手であるセスがいる以上、転移魔法で逃げ切る事はできない。

そのため、大人しくジオスに帰ると言い、2人から逃げる事を考えたのだが、エルトとセスはジークの考えを知ってか、彼の肩をつかむ。


「エ、エルト様、セス先輩、私はまだ研究がありますので失礼しますわ」


「そうかい。ああ、カルディナ、私の事をバカにするのは構わないけど、もう少し考えて言葉を発しなさい。私は構わないが、王族には無駄に高い自尊心を持っている人間もいるからね」


「わ、わかりました。それでは失礼します」


カルディナはエルトへ暴言も吐いた事や、ジークの恋愛事情などどうでもいい事もあり、研究室から逃げ出そうとする。

エルトはその様子に表情を引き締めると、カルディナに発言の重要さを考えるように言い、カルディナは王族であるエルトからの叱責を受け止めたのか神妙な面持ちで返事をし、研究室を出て行く。


「あんな簡単に帰して良いのか?」


「良いんじゃないかな? カルディナの攻撃魔法の才能はかなりのものだからね。魔法騎士隊の編成には欲しい人材だからね」


「魔法の才能は有っても、おっさんの娘だけに冷静な判断ができるとは思えないんだけど、あんなのが居れば部隊がまともに動く事ができないんじゃないのか?」


「冷静な考えができないのはある種、オズフィム家の才能だからね。でも、立場を踏まえる事が出来れば、きちんと動く事ができると思うよ。他人の命を背負った時のオズフィム家の人間は頼りになるんだ」


カルディナが出て行き、閉じられたドアを見て、ジークはエルトの判断が甘いのではないかと言う。

しかし、エルト自身はカルディナの成長を期待している部分もあるようであり、苦笑いを浮かべている。


「そんなもんか?」


「そう。だから、ラースも父上や叔父上からの信頼も厚い。そんな事より、ジオスに戻るよ。セス、ジークが逃げる前に行こうか?」


「わかりました。それでは行きましょう」


ジークはラースが現政権の中で信頼が厚いと言う事が信じられないようで眉間にしわを寄せている。

その隣でエルトはジークに時間を与える気はないようでセスに転移魔法を使うように指示を出し、セスは転移魔法の詠唱を始める。


「ちょ、ちょっと待った!?」


「何を言ってるんだい? 往生際が悪いよ。ジーク」


セスが転移魔法の詠唱を始めた事で、ジークは再度、逃走を試みるがエルトがしっかりとジークの身体を押さえつけており、素早さや身のこなしと言ったものには有利であっても純粋な腕力ではエルトに敵わないジークは逃げる事ができずにエルトの腕の中でバタバタと暴れているが、セスの転移魔法は発動し、3人は光の球に代わり飛んで行く。


「……帰って来ちまった」


「往生際が悪いね。付いたんだから、文句を言ってないで、店に入りなよ」


転移魔法は無事に発動し、3人はジークの店の前に到着するとジークはまだ、ノエルに顔を合わせずらいようでドアに手を伸ばすが、なかなか開けられずにおり、立ち止まってしまう。


「ジーク=フィリス」


「わ、わかってますよ。今、開けますよ!?」


「何やってるんだ? さっさと入ってこい……エルト様にコーラッドさん?」


セスに睨まれ、1度、大きく息を吸い込み、ドアノブにを手をかけようとした時、ドアが勢い良く開き、中から眉間にしわを寄せたカインが出てくる。

指先にドアが直撃し、地面をのた打ち回るジーク。

カインはジークの事より、エルトとセスがいる事に首を傾げた。


「ジ、ジークさん、大丈夫ですか!?」


「だ、大丈夫。カイン、いきなり、ドアを開けるんじゃ!?」


「うるさい」


ノエルはカインの後ろから、店先に何があったか気が付いたようで、慌てて、ジークに声をかけるが、そのジークはカインに喰ってかかろうとして、地面に叩きつけられ、受け身が取れなかったジークは地面の上で再度、のた打ち回っている。


「カイン、相変わらずだね」


「カ、カイン=クローク、なぜ、あなたがジオスにいるのですか!?」


ジークとカインの様子に苦笑いを浮かべるエルト。

セスは研究室でカインとの事をジークに勘ぐられていたせいか、予想していなかったカインの登場に動揺しているのか驚きの声を上げた。


「なぜと言われると里帰り?」


「そ、そうですわね。里帰りくらいしますわよね」


「動揺してるねえ」


カインはジークとノエルに巻き込まれた事ですでに予定時間を大幅に超えている事もあり、大きく肩を落とすとセスは自分を落ち着かせるために何度か深呼吸をする。

そんな彼女の様子にエルトはジークとノエルだけではなくセスもからかう事ができると思ったのか口元を緩ませた。


「それで、エルト様とコーラッドさんはどうして、ジオスに? 何か問題でもありましたか?」


「きっと、カインが直ぐに帰らなかった理由と一緒だよ」


「……それはご迷惑をおかけしました。コーラッドさんも」


首を傾げるカインの様子にエルトははたから見ればいちゃついているようにしか見えない2人を指差し、カインは全てを悟ったようで2人に頭を下げる。


「いや、良いよ。それより、カイン、領地運営はうまく行ってるかい?」


「前任者のやり方があまりにも酷かったため、現状では前任者より、マシだと思ってくれているみたいで、落ち着いてはいます。表面上は協力的な人間もいますし、現在はお互いの腹の探り合いと言った感じです」


エルトはカインの領地運営の様子を聞くが、カインは現状で言えば報告できるような事はないと首を振る。


「そうかい。それなら、問題ないね。いきなり、カインが到着して、屋敷が襲撃されてるとかだと……民の命が心配だからね」


「流石に、いきなり、力で抑えつけるような事はしません」


「説得力がありませんわ」


エルトは少し考えるような素振りをするものの、カインを信頼しているため、彼の自由にさせようと思っているのだが、セスは地面でのた打ち回っているジークを見るとカインの領地運営に不安を覚えたようで眉間にしわを寄せた。


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