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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
王都探索
266/953

第266話

「セス先輩、どうして、このような平民を研究室に?」


「それは……エルト様の行動を理解するために、私と同様にエルト様に振り回されているジークに話を聞こうと思ったのです」


ジークに敵意の視線を向けながらもカルディナは図々しく、テーブルのそばにあったイスに腰掛け、セスにジークが研究室にいる理由を聞く。

セスは元々の目的から、ずれている事を思い出し、少しだけ困ったように笑うもカインへと真っ直ぐ過ぎる好意を示しているカルディナに話せる内容ではないと判断したようで、当たり障りのないエルトの話をする。


「そうですか……この平民はどうでも良いですが、セス先輩の貴重な研究時間を失わせるわけにはいきませんわ。平民、セス先輩に協力をしてあのバカ王子の行動パターンを丸裸にしなさい」


「バカ王子ねえ……良いのかよ。由緒正しい貴族の御令嬢様が、第1王位継承者様をバカ扱いして」


カルディナは高圧的にジークにセスに協力するように言うが、ジークはカルディナの態度が気に入らない事もあり、どうでも良さそうである。


「良いのですわ。なぜ、あのようなバカが廃嫡される事無く、王位継承権第1位にいるかがわかりませんわ。この間のルッケルの騒ぎもあのバカがおかしな事をしなければカイン様があんな辺境の地に飛ばされる事だってありませんでしたのに。誰が考えたって、この国の事を思えばライオ王子を正式な王位継承者にするべきですわ。皆もそう言っておりますわ」


「ライオ王子を次の王様にねえ」


カルディナはルッケルでの個人的の恨みもあるのか、学問に明るいライオこそ、次代の王に相応しいと言い、エルトをバカにしている。

しかし、ジークはカインやレインの言葉を受け入れたり、アンリや王都の民の事を気にかけているエルトを見ている事もあり、彼自身に民の上に立つ才能のようなものを感じているようで、王都に住み、オズフィム家と言う名家の後継であり、王族と顔を合わせる機会の多いカルディナの視野の狭さにため息を吐く。


「何ですか? その目は?」


「少なくとも、この間のルッケルの騒ぎに巻き込まれた人間としては、ライオ王子より、エルト王子の方が器としては上だと思うけどな」


ジークのため息にカルディナは視線を鋭くすると、ジークは思っている事を隠す事無く、口にする。


「何を言っているのですか? あのようなバカに国を任せて言い訳がありませんわ!!」


「頭が良いかで、上に立つ資格があるとは思わないけどな。少なくとも、エルト王子は他人の意見を聞くって事を知ってる。それもできない人間にあいつが従うわけがないからな」


「確かにカインの性格を考えれば、ジークの意見も頷けますわ?」


カルディナは声を上げ、感情で反論するが、ジークは自分の目で見た事や幼い頃から知っているカインの他人の事を見る目を信じていると言い切り、セスもジークの意見に同意を示した時、セスはある場所を見て固まった。


「セス先輩まで、何を言っているのですか? あのようなバカに国を任せれば、この国は滅んでしまいますわ!!」


「へぇ、私が父上の後を継ぐと国が滅ぶんだ。それなら、滅ばないように優秀な人間を集めないといけないね」


「へ? ……エ、エルト様、ど、どうして、魔術学園に!?」


セスの変化に気づく事無く、カルディナは勢いよく立ちあがるとテーブルをバンバンと叩く。

その背後から、エルトが楽しそうに声をかけ、彼の声にカルディナは今の自分の状況の悪さに彼女の顔からは血の気が引いて行く。


「いや、セスが城に戻ってこないから、何かあって、魔術学園に呼び出しでも受けたのかなと思ってさ。しかし、驚いたね。ジークとセスが一緒なんて」


「まぁ、ちょっと、いろいろ有って、王都に来ていたら、エルト王子被害者の会で打ち合わせをしようとセスさんに誘われたので」


「あー、なるほどね。それで、何か良い策は見つかったかい?」


「それがまったく、エルト王子が自重してくれるのが1番、楽で簡単な解決方法なんだけど」


「うーん、それは少し難しいかな?」


エルトはイスに腰掛けると、ジークがセスの研究室に呼ばれている理由を聞き、ジークは冗談めかして答えた。

ジークの答えにセスとカルディナの空気は固まるがエルトはまったく気にしている様子もなく、楽しそうに笑っている。


「セスさん、難しいって」


「そ、そうですか? あ、あの、エルト様」


「ん? 別に気にしなくても良いよ。私は優秀な人間を簡単に手放すほど酔狂ではないからね。自分ができない事をできる人間がそこにいるのに、その人間を切って、できない仕事を増やすのはバカらしいからね」


セスにとってはジークとエルトの会話は気が気でないようであり、彼女の様子に気が付いたエルトは気にする必要はないと笑う。


「ただ、ジークが私をここまで高く買ってくれている事に驚いたけどね」


「別に高く買ってるわけじゃない。カインの性格を考えれば、少なくともエルト王子は信頼できると思ってるだけだ。それにライオ王子が国の将来をどう考えてるかわからないし、エルト王子の考えは共感できるものだからな」


エルトは研究室に入ってくる前にジークの言葉も聞こえていたのか、イタズラな笑みを浮かべると、ジークは気恥ずかしいのか、彼から視線を逸らし、頭をかく。


「まぁ、ジークとノエルにとっては私の考えは都合が良いよね。その方が障害が少なくなるし」


「……そうとも言うな」


「へー、その反応は何かあったのかな? ノエルがここにいない事と関係があるのかな?」


エルトが目指している種族間の争いがない世界は、人族であるジークと魔族であるノエルがともに暮らすには望ましい世界であり、ジークは小さく頷くと、今までの口先だけでの否定とは違う反応にエルトはジークの顔を覗き込む。


「べ、別に何もない!?」


「その反応は何かあったと言っているようなものだよ。さあ、白状するんだ。とうとう、ノエルを押し倒したのかい?」


「押し倒した? ……ジーク、詳しい話を教えていただけますか?」


「ちょ、ちょっと待った!? セスさん、その殺気はおかしいですからね。だいたい、押し倒してなんていない!!」


ジークは自分が不味い反応をしたと気が付き、直ぐに否定するが、既にもう遅く、エルトは更なる追及を行い、その言葉にセスの背後には真っ黒な気配が漂い始め、そばに置いてあった杖に手をかける。

ジークは突き刺さるセスの気配に顔を引きつらせると全力で無罪を主張する。


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