第248話
「……で、これは一体どう言う状況だ?」
「……申し訳ありません」
ジークとノエルが王都から帰った2日後、エルトとライオがセスを拉致したようで、ジークの店に3人が現れた。
ジークはこの状況に意味がわからずに眉間にしわを寄せるが、セスはエルトとライオから話をまったく聞かされていないのか、ジークとノエルに迷惑をかけていると思ったようで深々と頭を下げる。
「セスが気にする必要はないよ。元々、ジークが黒幕だから」
「黒幕?」
「おかしな事を言わないでくれ。取りあえず、せっかく、来てくれたんだし、話し合いでも始めるか?」
セスの様子にエルトは楽しそうに笑い、ジークに原因があると言いだし、その言葉にセスの視線は鋭くなって行く。
ジークは無実だと言いたげにため息を吐くと、店の王子が2人も店に来ている事を村民や村を訪れている冒険者達に知られるわけにもいかないため、店のドアにかけてあるプレートを『準備中』に変え、ドアにカギをかける。
「とりあえず、店で話し合いをしていてフィーナに見つかるとうるさいから、奥に入ってくれ」
「フィーナは不参加かい?」
「役に立たないからな」
ジークは3人に奥に移動してくれと言うが、エルトはいつもいるはずのフィーナがいない事に首を傾げた。
その疑問にジークは直ぐに答えるとノエルとライオは先日も同じ事を云った彼の様子に苦笑いを浮かべる。
「今、お茶を用意しますね」
「あぁ。頼む……なんだよ」
ノエルは人数分のお茶を淹れにキッチンに向かって行った時、ジークは自分に向けられている視線に気づく。その視線は明らかにジークとノエルの事を冷やかすつもりであり、主であるエルトへ不機嫌そうな表情で聞く。
「いや、相変わらず、夫婦仲がよろしいようで」
「……だから、どうして、そっち方面に持って行きたがるんだ?」
「ジーク、何か言おうとするほど、きっと、墓穴を掘るよ」
ジークが不機嫌にしている事など、エルトに取っては彼をからかうのを止める要因になるわけがなく、ライオは変に反論しない方が良いとジークを止める。
「ライオ、どうして、そこで止めるかな?」
「セスの機嫌が悪くなると、この後の話に影響が出ますから」
「なぜ、あのような男にノエルのような美少女が……」
エルトはライオが邪魔をした事につまらなさそうにため息を吐くと、ライオはそばにいたセスを指差す。
セスの性癖は相変わらずのようで、ジークに向けて、嫉妬のこもった視線を向け、ぶつぶつと呪詛に満ちた言葉をつぶやいている。
「セスさん、あの。止めてくれませんか?」
「ここはジークがはっきりした方が良いと思うんだよね。ジークがノエルとフィーナの間でふらふらとしているのが原因なわけだし」
「いや、ふらふらしてないから、それより、エルト王子、俺にどうこう言う前に自分の事を考えろ。あんたは王位継承者だろ。カインもそこら辺をどうにかして欲しいって言ってたぞ」
「そうだね。王位継承者としては妃になる女性は熟考する必要があると思うんだ。下手な事をしてしまうと国自体が滅びてしまう可能性があるからね」
セスの様子にジークは居心地が悪くなったようであり、顔を引きつらせるとエルトはこれ幸いと思ったようで追撃をかける。
ジークはその追撃に反撃をしようと試みるが、エルトはこの反撃にはなれているのかさらりと返す。
「……」
「残念だったね。この手の返しは答えなれているんだよ」
そつなく返された事に苦虫をかみつぶしたような表情をするジーク。エルトはそんなジークの姿に満足そうな笑みを浮かべた。
「まぁ、私としては、自分の事より、優秀な臣下に良縁をと考えているんだけどね。素直になってくれないのが、困るよ。少しはカインに付いて行くと言ってくれる事を期待したんだけど」
「おい。ライオ王子がいるなかで、そう言う事を言うのは不味いんじゃないのか?」
エルトは未だに呪詛に満ちた言葉をつぶやいているセスの様子に小さく肩を落とす。その様子に、あまり他人の恋愛話を広めて回るのを良しと思っていないジークはライオもいるため、エルトに黙るように言う。
「カインとセスについては私も知っているよ。学園でも有名だったからね。2人を生温かい目で見守る会と言う謎の会があると言う噂も聞いているよ」
「……学園、大丈夫か? 国の未来を担うエリート達がそんな事をしてると考えるといろいろと不安になるぞ」
カインとセスの事はライオだけではなく、魔術学園の多くの生徒が知っている事のようであり、ジークは魔術学園のあり方に不安を持ったようで眉間にしわを寄せる。
「少し言葉は悪いけど、貴族達は他の貴族との婚姻も考えて後継者を入学させている面もあるからね。仕方ないと思うよ」
「よくわからないな」
「それなりに背負っているものをあるからね。ラースのところみたいに恋愛結婚ばかりではないわけだよ」
「そう言えば、おっさんは勘違いな大恋愛って話だったな……絶対に聞きたくないけど」
エルトは貴族達の思惑を理解しているようで苦笑いを浮かべると、カルディナ家の大恋愛を例にあげ、ジークは関わり合いたくないのか首を大きく横に振った。
「そうだね。止めておこう。暑苦しいし」
「だよな……それより、エルト王子、そろそろ、セスさんを止めてくれないか? この殺気に背中に冷たい物が伝い始めたんだけど」
セスから放たれる殺気は尋常ではなく、ジークは耐えきれなくなったようでエルトに助けを求める。
「そう言う時は、こう言えば良いんじゃないかな? 『他人の恋愛に口を出す前に、自分とカインの事を考えたらどうかな?』って」
「な、何を言ってるんですか!? 私はあのような性悪など何とも思っていませんわ!!」
エルトはセスに恋愛話を振るとカインの名前にセスの顔は一気に真っ赤に染まり、先ほどまで放っていた殺気は完全に霧散してしまう。
「良い反撃方法だな。覚えておこう」
「セスから逃げるには、1番簡単な方法だよ」
「わかったけど、エルト王子、あんたは城から逃げるな。あんまり逃げ出してると、ライオ王子に、王位継承権で抜かれるぞ」
ライオはセスが自分に付くようになってから、彼女の目から逃げる時に良く使う手段のようである。それを聞き、ジークはエルトが本当に王位を継ぐ事ができるか不安になったようで大きく肩を落とす。
「お茶をお持ちしました……あの、セスさんはどうしたんですか?」
「な、何でもありませんわ。ノエルさんもそろいましたし、ジオスまできた理由をお教えください」
その時、人数分のお茶を運んできたノエルは慌てているセスの様子に首を傾げた。セスはノエルの疑問に何もないと全力で否定する。