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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
王都探索
246/953

第246話

「まあ、実際は私にできる事なんて、無いと思うんだけどね」


「そんな事は無いと思います。ライオ様の考えは立派だと思います。わたしに何か手伝える事があったら、おっしゃってください」


「そうかな? ……ありがとう。ノエルさん」


ライオは自分が無力だと言う事を理解していると苦笑いを浮かべるが、その考えにノエルは感動したようでライオに協力すると言う。

ノエルの言葉にライオは小さく表情を緩ませるが、気恥しくなったようで直ぐに視線を逸らす。


「で、でも、ジークさんの薬で、回復の兆しが見えたって言うのはどうしてなんでしょうね?」


「うん。そこがわからないんだよ。兄上が持ってきたジークの薬は話を聞く限りは一般的に市販されているものと変わらないらしい。でも、ジークの薬はアンリに効果があった。それを調べたかったんだよ」


「……まぁ、実際は、患者を調べないと体質もあるから、本当に効果があるかなんてわからないけどな」


ノエルとライオが首をかしげた時、ジークは集中して読んでいたページを読み終えたようで、専門書を閉じる。


「ジーク、どう言う事だい?」


「薬の効果の有無は個人によって違う。それに材料に使った薬草だって、土壌によっては若干、成分が違うんだ。同じ薬でも同じ効能が求められるとは限らない。後は配合とかも調合した人間によっても微妙に違うからな」


「あの、それって前にわたしに酔い止めを作ってくれた時に使えない薬草があるって言っていた事に関係がありますか?」


「あぁ、実際、うちの店にだって、個人向けの薬だって取り扱ってるだろ?」


「は、はい。あれって、そう言う事だったんですか」


ジークの言葉にノエルは質問をすると、ジークは村の人間にも効果がある人間とない人間によって薬を変えていると答える。


「それじゃあ、ジークの薬がアンリに効いたのはたまたまって事かな?」


「たぶんな。俺の作った薬とたまたま相性が良かっただけだろ……もしくは、何も変化がない事を不味いと思った医者達が口から出まかせを言ったかだな」


「口から出まかせって、そんな事をお医者様がするんですか?」


ジークはどこか現実主義のところがあり、希望的な推測はあまりせず、自分の薬より、医者の点数稼ぎに使われたのではないかと答えるが、ノエルは信じられないようでジークに聞き返す。


「あぁ。少しでも回復したって、話になれば信頼を得られる可能性があるからな。まぁ、王室のお抱えの医者ならそんな事をする必要はないかな?」


「いや、わからないね。王室の医者と言っても、1人や2人ではないからね。立場を優位に立たせるために嘘を吐く事は否定できないね」


「お抱え医師ってのは、患者を独占しているわけだから、嘘なんか吐き放題だ……なぁ、今更だけど、その医者ってのは本当に大丈夫なんだろうな?」


「正直、わからない。王都で普通に診療所をしている医者は誰が腕利きだと言う噂はあると思うけど、王室でしか、それこそ、アンリの診察だけしかしていないなら、どれだけの能力を持っているかもわからない」


ジークはアンリを担当している医師達の能力が疑わしいと思ったようでライオに聞く。実の妹の事ではあるが、ライオ自身は医学の心得もない事もあり、医師達の能力を測る事はできないと首を振る。


「だろうな……医学も薬術の日進月歩の時代なのにお抱えとか意味がわからない」


「あの。アンリ様をジークさんが診察するわけにはいかないんですよね? ジークさんは薬剤師ですけど、医学の心得はあるわけですし、ライオ様の口添えがあれば、面会くらいはできませんか?」


「ノエル、わけのわからない事を言わないでくれ」


すでにどこかで医師達の能力を疑っているジークはため息を吐く。ノエルは少し考えると遠慮がちにライオに1つの提案を行うが、その提案は明らかにバカげた提案であり、ジークの眉間にはくっきりとしたしわが寄る。


「で、でも、お医者さんの能力を疑っているなら、ジークさんの目で見るべきじゃないですか?」


「あのな。確かに俺は薬の知識はある。村に医者もいないから、村の人間の健康状態も気にはしてるけどな。だからと言って、それとこれとは違うだろ。それこそ、専門職の……待てよ」


「ジーク、カインと同じ笑い方をしてるよ」


ジークはアンリの診察など無理だと首を振るが、その途中で何かを思いついたようで、口元を緩ませる。その表情はカインにそっくりであり、ライオは苦笑いを浮かべた。


「な、何を言ってるんだ?」


「なら、慌てないで欲しいな。それで、どんな悪だくみを思いついたんだい?」


「悪だくみってほどじゃないけどな。それに仮にこれをやるなら、協力者が足りない」


ライオはため息を吐くも、ジークの考えを聞きたいようである。ジークは1度、自分の考えを整理したいようで、大きく深呼吸をすると現状で、ジーク、ノエル、ライオの3人では手に余る事だと言う。


「協力者ですか? フィーナさんはダメですか?」


「無理、何をするかも覚えられないだろうから、却下」


「ず、ずいぶんとバッサリと行くね」


「使えない人間に協力を仰ぐなんて愚策以外の何物でもないだろ」


ノエルは協力者と聞いて、フィーナの名前を挙げるが、フィーナに協力させるメリットは一切ないようでジークは即答し、ライオは苦笑いを浮かべる。


「それなら、ジークが考える協力者って誰だい?」


「少なくとも、リックさん、アズさんには協力して貰わないといけないな。後は王室内だとライオ王子とエルト王子にも協力してもらいたいんだけど」


「兄上なら、間違いなく協力してくれると思うよ。リック先生にアンリを診察して貰うのかい? 確かに、リック先生の腕は確かだと思うけど」


ジークはアンリをリックに診察させるつもりのようであり、自分とノエル以外に協力を仰ぎたい人間の名前をあげる。

ライオはルッケルの武術大会で出たケガ人の治療の様子を聞いているようでリックの能力の高さは買っているようだが、何か引っかかるようで眉間にしわを寄せた。


「現状で言えば、俺達に協力してくれそうな医者はリックさんしかいないんだよ。ライオ王子やエルト王子に王室お抱えの医者以外で懇意にしている医者が居れば別だけど、そんな人間に診察させれば直ぐに知れわたっちまうだろ?」


「確かにそうだけど、ルッケルからリック先生を呼び寄せるにしては時間がかかるだろ。私は残念ながら転移魔法は使えないし……あれ? そう言えば、2人はどうやって、王都まできたんだい?」


ルッケルと王都はかなりの距離があり、ライオはその距離をどう埋めようかと考え始めるが、ジークとノエルが王都にいる事にそこで初めて疑問を持つ。


「今更かよ」


「そ、そう言えば、お話していませんでしたね」


「これを使ったんだよ」


ライオの疑問に2人は苦笑いを浮かべるとジークはライオの前に緑色に輝く転移の魔導機器を置く。


「これは何だい?」


「転移の魔法が込められている魔導機器。カインが餞別だって置いて行った」


「あぁ、聞いた事があるよ。学園の研究者達が必死に研究している物だって、これがあれば重要都市との連絡が密になるからって、転移魔法は便利だけど、術者自身がその地に赴かないといけないから、なかなか、術者が育たないし、王宮で抱える魔術師では使い手も少ないからね」


ライオも魔術学園に席を置くものとして、話は聞いていたようだが、試作品を見るおも初めてなようで手に取ると興味深そうに魔導機器を覗き込む。


「転移魔法って、術者が少ないのか?」


「使えるのは、冒険者も兼任している魔術師がほとんどだね。言いたくないけど、魔術師の多くは研究者気質だから、王都の外に出る人間は稀だよ。カインもルッケルで苦労してただろ?」


「そう言えば、朝から、王都とルッケルを何往復もしたような事を言ってたな」


「そうですね」


ジークはアーカス、カイン、セスと転移魔法の使い手が3人もいる事で、それなりに需要のある魔法だと思っていたようだが、転移魔法の術者は希少のようであり、驚いたような表情をすると隣でノエルも同じ事を思っていたようで2人は顔を見合わせると苦笑いを浮かべる。


「たぶん、今、王宮で抱えている魔術師で、1番の使い手はカインだよ。彼自身、魔術師と言いながらも、武術をかなり修めているから、1人でも動き回れる事もあるし、兄上の指示で多くの場所に行って情報を集めていたとも聞いているからね。今回、手に入れた領地にも足を運んでいたみたいだし。しかし、どうして、カインは魔術師なんだろうね? 騎士達と手合わせをしているところも見た事があるんだけど、遜色はなかったよ」


「それに関しては同感だ」


カインの魔術師らしからぬ行動力にライオは眉間にしわを寄せるとジークはカインが手に入れた領地までの移動にかなり時間を有すると思っていた事もあり、眉間にしわを寄せた。


「とりあえず、俺とノエルがどうやって王都に来たかは、理解してくれたな?」


「あぁ。リック先生を王都に呼び寄せて、アンリを診察して貰うって事だね……」


「リック先生なら、信頼もおけますし、良い考えです」


転移の魔導機器でリックを呼ぶと思ったようでライオはリックをどうやってアンリに引き合わせるか考え始めるなか、ノエルはリックにかなり信頼を置いているようで大きく頷く。


「いや、逆だ」


「逆? それって」


「アンリ王女をルッケルに連れて行く」


「それは無茶だよ」


しかし、ジークはアンリをルッケルに連れて行こうとしており、ライオはジークの提案は無理だと思ったようで首を横に振る。


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