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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
救出大作戦?
238/953

第238話

「……で、これはどう言う状況だい?」


「ノエル、大人気ね」


「……と言うか、何かこの間もこんなのを見た気がするな」


ゴブリンの集落で2つの種族の和平交渉が始まるが、ジーク達は出席する事はできず、建物をあてがわれ、交渉がまとまるのを待っている。

そんななか、ドレイクと言う上位魔族が珍しいのか、ゴブリンの子供達が建物を訪れ、ノエルは完全に囲まれている。


「ジ、ジークさん、フィーナさん、助けてください!?」


「助けてくれって、懐かれてるんだから良いだろ」


「仕方ないわね。私はちょっと手伝ってくるわ」


ノエルは子供達の相手に手が回らないようでジークとフィーナに助けを求めるも、ジークは彼女を見捨て、その様子にフィーナは大きく肩を落とし後にノエルの手伝いに向かう。


「カイン、それで、和平交渉の方はどうなってるんだ? 上手く行ってるんだろうな」


「リザードマンの言葉はわからないけど、ギドの様子を見ている限りは悪くないよ。無事に終わりそう」


「そうか? これで一段落ってところだな」


ジークは和平交渉の席に使い魔を潜り込ませているカインに交渉がどのように進んでいるか確認する。カインは推測ではあるが問題ないと答え、その答えにジークは胸をなで下ろす。


「まぁ、忙しいのはこれからだけどね」


「これから? ……さっき、候補地がどうこう言ってたけど、何か関係あるのか?」


安心しきっているジークと反対にカインは心配事があるのか眉間にしわを寄せた。ジークはカインの様子に首を傾げる。


「候補地については問題ないよ。ただ……魔族が集まる事に問題はあるかも知れない。魔族が増えるって事は人族の目に映る機会も多くなる。そうなるといろいろ、厄介な事も増えてくるからな」


「確かにな」


「まぁ、わざわざ、戦争を仕掛けようとする事はないと思うけど……今、ワームを治めているのは小者だからね」


「……凄く不安になる事を言うな」


カインが不安に思っているのは魔族と人族の住み分けであり、ジークは考え足らずでおかしな騒ぎを起こしたシュミットの事を思い出したようで大きくため息を吐いた。


「実際、ゴブリンとリザードマンの目撃情報が出て、人気取りのために冒険者を集める小者だからね」


「そうだよな……なぁ、そう言えば、ゼイを襲ったリザードマン2人は無事なのか?」


「さあね。現状で言えば、それは聞けていないし、無事なら無事で良いけどね。殺されてでもいたら、火種になるだろうね。人族の領域に足を踏み入れたのはリザードマンかも知れないから、仕方ないと言えなくもないけど、くすぶっている火種はいつ大火事になるかわからないから」


「……何事もなければ良いな」


リザードマン討伐の依頼が冒険者に出ていた事もあり、ゼイを追いかけていたリザードマンの安否が心配される。

2人の生死により、人族と魔族の争いの火種になる可能性は否定できず、2人の眉間にはくっきりとしたしわが寄った。


「まぁ、その時はジークに任せるよ。俺は協力できそうにないから」


「任せられても、正直、手に余るんだよ。俺はお前みたいに狡賢い頭を持ってるわけでもないんだし」


「別にジークに俺と同じ事をやれなんて言わないよ。結局、過程なんてどうだって良いんだ。重要なのは結果。何を守りたいか? 誰を守りたいか? 違うか?」


「……まぁ、それはわかるんだけど」


カインは数日後には宛がわれた領地の政務に就かなければいけないため、ジオス周辺の問題には足を突っ込む余裕はない。

その時の事をジークに託すが、彼と自分との違いを身に染みているジークには自信がないようで乱暴に頭をかく。


「お前はお前のやれる事だけをやれば良い。その姿を見て、多くの人間が力を貸してくれる」


「力を貸してくれる人間ね? ……俺、そんなに知り合いいないぞ」


「そう思ってるのはジークだけだよ。少なくともジークはノエルと出会った事で多くの人と知り合った人族、魔族、種族なんて関係なくね」


ジークは自分はカインが言う自分に力を貸してくれると言う人間が想像できないようでため息を吐く。カインはそんなジークの様子に苦笑いを浮かべた後、彼の表情は真剣なものになって行く。


「な、何だよ?」


「ジーク、勇者になりたいって思った事はあるかい?」


「……」


その問いは勇者と呼ばれる両親への嫌悪感を持っているジークの表情は険しくなる。


「魔族や魔物と言った人間に恐怖や絶望を与える者達と戦い弱き者を守る者。それが勇者と言われている。だけど……俺はそんなものを勇者とは認めない。真実を見る事なく、ただ命を狩るような人間を勇者と認めるわけにはいかない。俺達は言葉を話し、相手の言葉に耳を傾ける事ができる。それを力で暴力で無理やり抑えつけようとするのは言葉を持たない獣と変わらない」


「それはわかる……」


カインの言葉にジークは耳を傾けると、ゴブリンの子供達に囲まれているノエルへと視線を向けた。


「時が経てば、お前を勇者と言う人間が出てくるかも知れない。だけど、その言葉に惑わされるな。お前は彼女とともに自分の進むべき道を選べば良い。そして、その先でお前の中にある答えが勇者だと言うなら、それは今までの勇者とは異なる意味をなすものだから」


「……俺は村の薬屋で良いんだよ。勇者なんか、まっぴらごめんだ」


「それがジークの出す答えなら、俺は何も言わないって」


ジークはカインの口から出た言葉に驚いたような表情をするものの、直ぐに表情を戻すと勇者になど興味がないと言い、そんなジークの様子にカインは苦笑いを浮かべる。


「さてと、話はここまでかな? 和平交渉も終わったみたいだし」


「上手く行ったんだよな?」


カインに使い魔から和平交渉が終わった事が知らされ、ジークは結果が気になるように直ぐに結果を聞く。


「まぁ、直ぐにわかるよ」


「ノエルサマ、ウマクイッタ」


「本当ですか!? ジークさん、カインさん、これでゴブリンさん達とリザードマンさん達が戦わなくて済みます」


「聞こえてるって」


カインは結果が満足のいくようなものだったようで表情を緩ませた時、ゼイが勢いよくドアを開け、和平交渉が上手く行った事を報告する。

ノエルはその結果に嬉しそうに笑い、ジークとカインに向かって手を振り、ジークはそんな彼女の様子に表情をほころばせた。


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