第231話
「まぁ、冗談はこれくらいにして、とりあえずは俺は夜になったら、ギドに接触するんで、その間の警戒をよろしく、まぁ、ゼイもいるし、相手はリザードマンだし、大丈夫だと思うけど」
「何で、大丈夫なんだ? 俺はゼイに警戒させる事は心配でしかないんだけど」
カインは闇夜の中で、ギドが捕らわれているであろう建物に使い魔を潜入させようとしているようで、その間の警戒を任せると言うが、ジークに取ってはゼイを警戒に当てるのは心配でしかないようで眉間にしわを寄せる。
「ゴブリンは夜目が利く。リザードマンにはない能力だからね。リザードマンがピリピリしてたから、きっと、警護をしてる奴らは夜はよく眠れてなかっただろうからね……きっと、簡単に魔法にかかってくれるよ」
「……お前、本当に性格が悪いよな」
「あ、あの。ジークさん、カインさんは何をするつもりなんですか?」
カインは建物を警護していたリザードマンの様子から睡眠時間が不足している事を予測していたようで口元を緩ませる。
ジークはカインが何をする気なのか予想が付いたようで大きく肩を落とすが、ノエルはカインが何をするつもりかわからないようで首を傾げている。
「……簡単に言えば、魔法でギドを警備していたリザードマンを眠らせるって事だろ」
「そう言う事だね」
「凄いです。それなら、ギドさんと会うのに誰も傷つきません。それで行きましょう」
ジークはカインがリザードマンを魔法で眠らせると言い、カインはくすりと笑う。
ノエルはカインが最悪、ギドを警護しているリザードマンへと危害を加えると思っていたようで安心したようで、カインの策を押す。
「魔法でね。それも夜にね」
「フィーナさん、どうかしたんですか? とても良い作戦じゃないですか」
フィーナはカインが気に入らないためか眉間にしわを寄せると文句がありそうに言う。ノエルはカインの作戦に全面的に賛成しているようでフィーナの様子に首を傾げた。
「だって、こいつの使い魔って、小鳥でしょ。夜、目が見えないでしょ」
「あー、鳥目か? ……使い魔に関係あるのか?」
「いや、あくまで、鳥の形にしているだけで、俺の魔力の塊だから関係はないよ」
フィーナの言葉にジークは首を傾げるとカインは全く予想外の疑問だったようで眉間にしわを寄せながら、フィーナのくだらない疑問を跳ね返す。
「関係なくて良かったです」
「問題は使い魔が建物に入った時にギドに捕まって食われそうにならないかだね」
作戦に支障がない事で胸をなで下ろすノエル。カインはその様子にまたもくだらない冗談を言う。
「……鳥だからな」
「鳥だもんね」
「トリ、ウマイ」
「あ、あの。流石にそれはないんじゃないでしょうか? ギドさんですし」
ゼイと数日、一緒に行動した事でゴブリンの食事は生肉が多かった事もあり、ジークとフィーナは眉間にしわを寄せるが、ノエルは理知的なギドがそんな行動には出ないと苦笑いを浮かべる。
「いや、食事がどうなってるかわからないけど、腹減ってるとわからないな」
「監禁されてるわけだしね。食事だってまともに与えられてるかもわからないしね」
「まぁ、捕まっても、その時は魔力に戻すだけなんだけどね」
ギドの事だから、いきなり、カインの使い魔に襲い掛かる事はないとは思いながらも、空腹が続いていればわからないとジークは首を横に振り、フィーナはジークの言葉に頷く。
カインは冗談のつもりだったのに、話がおかしな方向に転がっている事に苦笑いを浮かべる。
「とりあえずはその時間になったら、使い魔でギドに接触するから、夕飯を食ったら、少し寝る。魔力を回復させないといけないしね」
「使うか?」
「魔力を回復させる事はできるけど、少し寝たいんだよ。使い魔の多重使用は神経をすり減らすんでね」
カインは夜まで一休みしたいと告げると、ジークは薬瓶を取り出し、カインに向かって放り投げる。
カインはそれをキャッチすると蓋を開けて飲みほすが使い魔を5体も同時に使った事で精神的に疲れているようでため息を吐いた。
「それなら、早めに夕飯にするか?」
「そうですね……ゼイさん、どこに行くんですか!?」
「オレ、カリ、スル」
カインを休ませるために夕飯の準備をすると言った時、ゼイは再び、テントを出て行こうとする。
「ゼイ、狩りをしなくても、飯はあるから」
「ニク、カタイ。ウマクナイ」
「……もう少し、我慢してくれ」
「イヤダ。アノニク、カタイ。ウマクナイ」
ジークは慌ててゼイの腕をつかむが、ゼイは持ってきていた保存食の肉に飽きてきているようで血が滴る生肉を食べたいようであるがジークは狩りをしてゼイがゴブリンやリザードマンに見つかる事は避けたいため、説得を始める。
「……生肉はダメよね?」
「はい。ちょっと、ダメです」
「俺もしっかり焼く派だからね。生肉は遠慮したいかな?」
ゼイは自分をジークが引き止める理由がわからないようで片言ながら、ジークに生肉の素晴らしさを熱く語り始めるが、肉食自体がダメなノエルは顔を青くし、フィーナもカインもあまり生肉は得意じゃないようで苦笑いを浮かべた。
「しかし、ジークがゼイの説得に移るなら、食事の用意はどうしたら良いかな? フィーナに任せるなんて暴挙には出れないし」
「暴挙ってどう言う事よ!?」
ゼイの説得にはかなりの時間を有する事は予想が付いたようで、カインは夕飯の準備をどうするかと首をひねるがその時にフィーナを小バカにするのは忘れるわけもなく、フィーナはその言葉に怒りの声をあげる。
「そのまま、できるようになってるなら、まだしも、できないんだから、文句なんて言うな……まぁ、俺がやるしかないのかな?」
「あの、カインさんはお料理できるんですか?」
「おかしなもの作る気なら止めなさいよ」
カインはフィーナの文句を迷う事なく切り捨てると荷物を物色し始め、カインの行動にノエルは首を傾げ、フィーナはバカにされても反論する事ができなかった事もあり、カインを睨みつけた。
「それは1人暮らしも長いからね。料理くらいはするよ。ノエル、俺はジークほど手際も良くないから、手伝ってくれるかい。フィーナは邪魔にならないように大人しくしててくれ」
「えーと、はい。お手伝いさせていただきます」
ノエルに手伝いを頼むカイン。ノエルはカインがフィーナを続けてバカにしたため、フィーナとカインに挟まれて居心地が悪いようだが、夕飯の準備をしないわけにもいかないため、手伝いを引き受ける。