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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
救出大作戦?
226/953

第226話

「……なるほどね」


「カイン、何がわかるんだ? 俺はまったく理解できないんだけど」


「ホントよ。わかってるふりしてるわけじゃないでしょうね?」


ノエルの体調が回復したようで3人がジークとカインの部屋に顔を出すと、ゼイから集落の周りにある建物などの情報を聞き、カインは情報をまとめようと考えこみ始める。

ジークはゼイの片言の言葉では理解できないようで首をかしげ、フィーナにいたってはカインがわかったふりをしているだけだと疑っている。


「……カインさん?」


「こうなると長いか?」


フィーナからの疑いの視線など気にする事もなく、カインは情報を頭の中でまとめており、ジークはカインの様子に苦笑いを浮かべた。


「あの。カインさんもアーカスさんみたいに考え込むんですね?」


「あぁ。カインもアーカスさんも魔術師だけど、どっちかと言うと学者肌と言うか研究者みたいでな。情報をまとめる時や考え事をする時は雑音をシャットアウトするんだよ。情報がまとまるまでこのままじゃないか?」


「凄いんですね……でも、その間、わたし達は何をしていたら良いんでしょう?」


このメンバーでは戦術面や情報処理の能力はカインがずば抜けているため、彼が何も言わなくなってしまっては他のメンバーはやる事もなく、ノエルは何かする事はないかと首を傾げる。


「とりあえず、魔法の勉強でもしてたら良いんじゃないか? アーカスさんから魔法書も借りたわけだし」


「そうですね……カインさんがいなかったら、いつ、出発できたかわかりませんし」


「ノエル、落ち込まないの」


ノエルはアーカスから借り受けた魔法書でゼイの姿を変えようと昨晩、練習をしたのだがなかなか上手くはいかず、成功率は5割と言ったところであったため、申し訳なさそうに肩を落とした。


「いだ!? ゼイ、何するんだよ!?」


「ジーク、ノエルサマ、イジメタ。オレ、ユルサナイ」


「ちょっと待て。そんなつもりはまったくない!? と言うか、斧を構えるな!?」


ノエルが落ち込む様子にゼイはジークが原因と判断したようで彼の頭を叩き、ジークはゼイに落ち着くように言う。

しかし、ゼイは斧を握り、ジークに向かって振り下ろそうとまでしている。


「ゼイさん、落ち着いてください。ジークさんは悪くありませんから」


「ホントウカ?」


「はい」


「……助かった」


ノエルはゼイが武器を構えた事に慌ててゼイに抱きつき彼女を止め、ジークは命の危険が去った事に胸をなで下ろす。


「ねえ、ジーク、今のうちにアーカスさんから頼まれたものを買ってこない?」


「それもそうだけど、荷物になるよな? これから、ゴブリンの集落まで徒歩で丸2日だろ。それを持って歩くのは俺なんだから荷物は軽い方が良い」


「でも、帰りって、集落から転移魔法でしょ。ここで買わないと買うヒマないんじゃない?」


「それもそうなんだけどな……」


フィーナはここで待っていても仕方ないため、アーカスのお使いを終わらせてしまおうと言うがジークは移動距離の関係からか荷物は増やしたくないようで眉間にしわを寄せる。


「あの。カインさんに頼んで、帰りに転移魔法でここに寄って貰えば良いんじゃないでしょうか? カインさんはアーカスさんからお使いがあるって事は知ってますし」


「ノエル、フィーナ、お前達は勘違いをしているぞ。転移魔法で確かに帰る事はできる……カインはな」


「……確かにそれはあり得るわね」


ノエルは2人の反応に苦笑いを浮かべながら、カインならアーカスのお使いの事も考えてくれていると言うが、ジークの持ってくる答えはカイン1人が転移魔法で帰ると言う最も酷い物であり、フィーナはその答えはあり得ると思ったようで眉間にしわを寄せた。


「お望みなら、そうしてやろうか?」


「カ、カインさん!?」


「オ、オレ、ナニモイッテナイ」


その時、カインは情報をまとめ終わったようで笑顔でジークの肩をつかみ、カインの笑顔の奥にある怒りにノエルとゼイは部屋の隅まで逃げて小さくなる。


「……その反応もへこむんだけどね」


「……それはあんたの日頃の行いのせいでしょ」


ノエルとゼイの反応がカインは少しショックだったようで小さく肩を落とし、フィーナは2人の反応は当然だと言う。


「それで、考えはまとまったのか?」


「ジーク、あからさまに話を変えようとしてるけど、それはそれ、これはこれだからな」


「……」


カインの手を避けるとジークは話を戻そうとするが、そんな事をカインが許すわけもなく、彼の拳はジークのみぞおちに深々と突き刺さり、ジークは腹を押さえると膝から床に崩れ落ちて行く。


「と言う事で、話を戻そうか?」


「お、お願いします」


ジークを沈めた後、カインは笑顔でフィーナの頬を何度も叩き、カインの気が晴れた時には床の上には屍が2体転がっており、ノエルは顔を引きつらせてカインに説明を頼む。


「まぁ、作戦って言っても、他のゴブリンと連携が取れるかが問題だから、何とも言えないんだけどね」


「あの。それって、結局、無策って事じゃないんですか?」


考え込んでいた割にはカインは策を思い浮かんでいないようであり、ノエルは予想していなかった言葉に眉間にしわを寄せた。


「今のところはリザードマンの人数や戦力も把握できてないからね。使い魔を飛ばして、捕まっているギドってリーダーとも話をしてみたいし、ギドは魔法を使うって話だから、タイミングを合わせれば奇襲も上手く行くだろうしね。他にも手に入れるべき情報はたくさんあるんだよ」


「そうなんですか?」


「そう言う事、だから、ここから丸2日歩くとしてもゴブリンの集落には直ぐに入らない。その近くでゴブリンやリザードマンを警戒しながら2~3泊野宿をする形になるかもね。ゴブリンの事を疑う形になるのはゼイに悪いけど、俺達がゴブリンと接触する事で新たな騒ぎになる可能性もあるしね。その場所を考えてたんだよ」


カインは持ってきていた地図を広げると野宿の候補地を書き込んで行く。


「こんなに野宿をするんですか?」


「まぁ、ギドが丁重に扱われたら、集められるだけ情報を集める。最悪、この情報をワームに持って帰ってリザードマンの討伐隊も考えないとからね」


「あ、あの」


「ノエル、そうならないように情報を集める事も大切だから」


「そうですね。そうならないように頑張ります」


カインは人族とリザードマンの戦争も視野に入れているため情報収集にかなりの時間をかけるつもりのようだが、ノエルは戦争など考えたくないようで不安そうな表情をする。

カインはそんな彼女の不安を脱ぎ払うかのように笑顔を見せるとノエルは気合いを入れるように両拳を握り締めた。


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