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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
救出大作戦?
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第216話

「へ?」


「ゴブリン? ちょ、ちょっと待て。こっちに来い。ノエル、フィーナも行くぞ」


3人は声のした方へと視線を向けると木々の間から、ゴブリンが顔を覗かせており、ゴブリンはノエルを見つけた事で急いで3人に向かって駆け寄ってくるが、人族の村であるジオスにゴブリンが現れた事が知れれば大変な事になるため、ジークは慌ててゴブリンの腕をつかむとアーカスの罠地帯の入口まで引っ張って行こうとする。


「ジ、ジークさん、待ってください!?」


「待ってる時間なんてないだろ」


「ち、違うのよ。ジーク、背中、斬られてるの。先に治療」


先に進もうとするジークだが、ゴブリンの背中はバッサリと斬られている。血は乾いてきているようだが、キズの深さはかなりのものであり、ノエルとフィーナは慌ててジークを止める。


「……わかった。俺は周囲を警戒するから、ノエル、任せたぞ」


「オレ、ダイジョウブ。ジーク、タダシイ」


キズの深さを見てジークは頷き、村の方へと警戒を強めるとゴブリンはジークが安全だと思っている場所まで案内するように言う。


「わかった。悪いな。少しの間、我慢してくれ。フィーナ、ノエル、任せるぞ。俺は後を警戒して行くから」


「わかったわ。ノエル、そっちのも行くよ」


ゴブリンの様子にジークは1度、頷くと周囲への警戒をしないといけないため、3人に先に進むように言い、フィーナはノエルとゴブリンの腕を引っ張り先に進んで行く。


「ジークさん、わたしが魔法で治療しましょうか?」


「いや、キズを受けてから、かなり、時間が経ってるだろ。中で細菌が繁殖してると不味いからな。治癒魔法じゃ、細菌類の治療はできないだろ……沁みるけど我慢してくれよ」


ジークはゴブリンの背中の傷の様子を確認したいようで、彼がいつも持ち歩いている簡単な治療薬のセットから純水を取り出すとゴブリンの背中にかけた。純水が沁みたようでゴブリンの眉間にはしわが寄るものの治療の一環である事は理解しており、何も言わずに我慢をしている。


「そうだ。ゴブリンの種族で使っちゃいけない薬草ってあるか? わかれば教えて欲しいんだけど」


「……ゴブリン、ドク、ツヨイ。ニンゲントチガウ」


ジークはノエルが馬車に酔った時に種族によっては使えない薬草がある可能性を知ったため、ゴブリンに話を聞くがゴブリンは人族に比べると毒物への耐性があるようで問題ないと返事がある。


「大丈夫って事か?」


「みたいですね」


「沁みるかも知れないから、我慢しろよ」


ジークはゴブリンの返答を聞き、応急手当てを行って行く。


「おし、これで良いな」


「スマナイ」


「あの。それでどうかしたんですか?」


ゴブリンの治療を終えるとノエルは彼が自分を訪ねてきた理由が知りたいようで話を聞こうとする。


「ノエル、待ちなさい。ねぇ、今更だけど、この間、ギドと一緒だったゴブリンよね?」


「……アァ」


フィーナはこのゴブリンには見覚えがあるものの、人族の目から見るとゴブリンの識別をするのは難しく、彼が自分達と面識がある事を確認し、ゴブリンは直ぐに頷いた。


「フィーナさん、それは少し失礼じゃないかと」


「……ノエル、悪い。俺もフィーナの言いたい事がわかる」


「……申し訳ないんだけど、見分けが付かないのよ」


ノエルはフィーナの様子に少し腹を立てているようで頬を膨らませるがジークもフィーナと同意見であり、ノエルから視線を逸らす。


「ジークさんもですか!?」


「キニスルナ。オレ、ワカラナイ」


「……」


ジークもわからないと聞き、驚きの声をあげるノエル。しかし、ゴブリンの目から見ると人族であるジークやフィーナの識別も難しいようであり、ノエルは納得がいかなさそうな表情をする。


「と言うか、この間は人間の言葉を話せなかっただろ? どうしたんだ?」


「コトバ、ギドサマニナラッタ。ジーク、フィーナ、ハナス」


ゴブリンはジークとフィーナと話してみたいと思ったようでギドに人族の言葉を習ったようであり、片言ではあるもののジークとフィーナにも理解できるように話している。


「……ジーク、今、失礼な事を考えてない?」


「気のせいだろ。そうだ。お前……悪い。名前を教えてくれ。このままだと話しにくいしな」


ゴブリンは知識を求めようとはあまりせず、ギドのようなゴブリンでありながらも人族の言葉を覚え、魔法を使役する者は珍しく、勤勉なゴブリンがいた事にジークはフィーナの頭は完全にこのゴブリンに負けていると思いつつも口には出さずにゴブリンに名前を教えて欲しいと言う。


「……ゼイ」


「ゼイだな。それで、人族の村まで1人できて何があったんだ? 助けてくれって言ってたけど」


「ギドサマヲタスケテホシイ。トカゲ、ギドサマ、コロス」


ゴブリンは『ゼイ』と名乗るとギドを助けて欲しいとノエルに向かって頭を下げる。


「トカゲ? ……リザードマンの事か?」


「ギドさんの命が危ないって事ですか!? ジ、ジークさん、フィーナさん、どうしましょう!?」


「ノエル、とりあえず、落ち着きなさい。ジーク、私は今、全然、状況を理解できてないんだけど、リザードマンがどうかしたの? この辺にはいないでしょ」


シルドから周辺でゴブリンとリザードマンの話を聞いていたせいか、ジークはゼイが言うトカゲがリザードマンだと直ぐに気づく。

ノエルはギドの命が危ないと聞いた事ですでに慌て出しており、フィーナに落ち着くように言われる始末である。


「さっき、俺とノエルもシルドさんに聞いたんだけど、この辺に出てきてるって話だ。と言うか、ゼイを追ってきたんじゃないか? 目撃されてるのはゴブリンとリザードマンって話だし」


「そうなの?」


「……今更だけど、フィーナ、お前は冒険者ほんしょくなんだから、普通は俺達より先に情報をつかんでないといけないんじゃないのか?」


シルドから聞いた話をフィーナに簡単に説明するジーク。フィーナはまったく聞いた事もなかったようで首を傾げ、彼女の様子にジークは大きく肩を落とした。


「う、うるさいわよ。今日はまだ、シルドさんの店に顔を出してなかっただけでしょ」


「……今日『は』って、毎日、顔を出してるかも怪しいけどな」


フィーナは慌てて、たまたまだと答えるがジークはすでにバカにするを通り越してあきれているようにも見える。


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