第210話
「ジーク、あまりぎゃあぎゃあ騒ぐと……お前がおじさんとおばさんの息子だってばらすぞ」
「……」
ジークの肩にカインの使い魔が乗り、さらりと彼を脅迫する。その脅迫にジークは苦虫をかみつぶしたような表情をするが逆らう事などできるわけもなく、不機嫌そうな表情で魔導人形の前に立つ。
「……ジーク、せっかく、ライオ様が良い物を呼び出してくれたんだ。使わない手はないだろ?」
「……今度は何を考えているんだ?」
カインの使い魔は飛び立つ事なくジークの肩に乗ったまま、カインの言葉をジークに伝える。その様子にジークはこれもカインの策の1つだと理解したようで次に自分が何をするべきかと聞く。
「……さっき、レインと連絡を取ったんだけど、罠を張った場所で襲撃者を捕縛した」
「……そうか? それなら、さっさと片付けて終ろうぜ。結局は魔法なんだから、操ってるライオ王子を戦闘不能にすれば良いわけだろ」
カインの罠に襲撃者はしっかりとはまっており、ジークは魔導銃で冷気を放ち、ライオを止められると判断すると魔導人形の攻撃を交わしながらライオを狙う。
「それが1人、襲撃者が捕まってないんだよね。捕まえた襲撃者から、小者に雇われたのは5人で競い合わせる形で雇ったみたいでね。成功者にかなりの金額を出すって話なんだけど」
「……1人捕まってない?」
「あぁ。罠だって気付いたか、前金を持ってとんずらしたか、最悪は……」
「お前の罠にはまってないのかよ。それなら、まだ、この会場から狙ってるって事かよ」
シュミットに雇われた襲撃者に1人行方の分からない者がいるようで、まだ、エルトとライオ襲撃の危機は回避されてなく、ジークは舌打ちをする。
「そう言う事だ……今、魔術学園の生徒が使い魔を使って探している。俺もそっちに移るから、ここは任せるぞ」
「……あの魔導人形を盾代わりに残しておけって事かよ?」
カインがわざわざ手の込んだ事をしている事に気が付き、ジークは不機嫌そうな表情をしたままではあるが直ぐにカインの思惑を読み取った。
「ジークは理解が速くて助かるよ。後は勘でも何でも良いから、どこから狙ってくるかを予想しろ。俺はお前の射撃の腕を信頼している。どこから狙えば、1撃で仕留められるかを考えて先を読め」
「そんな事が都合良くできるわけないだろ。他人に丸投げする前にさっさと襲撃者でも見つけてこいよ」
「まぁ、その通りなんだけどね。ただ、俺はできもしない人間にやれなんて言わない」
「へいへい。やれるだけの事はやりますよ」
カインの使い魔は会場にいる襲撃者を探しに行くつもりのようでジークの肩から飛び立つ。カインの使い魔が残した言葉にジークは悪態を吐くもそれでもやる事ははっきりしたため、表情を引き締める。
「……ジーク、やる気になったのかな?」
「まぁ、面倒な事に巻き込まれてるからな」
「そう……」
ジークの変化に魔導人形を使役していたライオは気が付いたようで真剣な表情で返すが彼も何かあるとは気が付いているようでジークから何かを感じ取ろうとしているようである。
「ジーク、今、何が起きているか教えてくれるかい? 私も舞台の上でただ踊って居たくないんでね」
「面倒だからパス。そう言うのは終わった後にカインか。それこそ、エルト王子に聞けよ」
「兄上か、カインに? ……あまり、説明には向かないよね」
「……エルト王子はガーっと言って終わりそうだし、カインは気が付いたら、他の話にすり替えられてそうな気がするな」
「そう言う事だね」
自分がどこか蚊帳の外にいる事は理解できているようでライオはジークに説明を求める。ジークはなんだかんだ言いながらも、カインやエルトから全てを聞かされているわけでもないため、説明は2人に押し付ける気であるが、別の意味で2人からの説明は期待できない。
「と言う事で、これに決着が付いたら、きっちりと説明して貰うよ。良いね」
「だから、俺に説明を求めるな。だいたい、ライオ王子の目的はエルト王子じゃなかったのかよ。普通はそっちを狙うだろ」
「兄上と決着をつける事に実際はそこまで執着はしていないよ」
「それなら、何でこんなイベントで見世物になってるんだよ……」
ライオの様子から、ジークがカインやエルトから聞いていたほどライオがエルトに対して腹を立てていない事に気付いたようで眉間にしわを寄せた。
「確かに、その可能性はあるね。私も兄上だけだったら、何度、爆発したかわからないけどね。兄上の隣にカインが立つようになってからは、そこまで、腹を立てなくなったよ」
「……俺はまたカインとエルト王子にはめられたのか?」
ライオの口調から、ジークはどこか納得がいかないようだが、未だに襲撃者の脅威を回避したわけでもないため、周囲を警戒している。
「そうかもね。ただ、ルッケルでジークと出会って、少し兄上の考えもわかる気がしたよ」
「……言っておく。俺は拳で語り合う気はない。仮に語り合えるとしても、魔導銃と魔導人形じゃ、おかしいだろ。1撃喰らったら、俺は死ぬ自信があるぞ。だいたい、拳で語り合いたいなら、それこそ、相手は俺じゃなくてエルト王子が相手だろ」
ジークの納得がいかなさそうな表情を見て口元を緩ませるライオ。ジークは彼の言葉は迷惑だと言いたいようで大きく肩を落とした。
「実際、兄上とカインは良いコンビだと思うよ。カインがいる事で貴族からは反感があっても、それを表立って言えるほどカインはへまをしないしね。魔術師として、政治を学ぶものとして彼から学ぶ事はたくさんあるよ」
「確かにあいつはへまはしないだろうな……」
「ジーク、どうかしたかい?」
「いや、何か引っかかるんだよ。胸のあたりに何かつっかえているような。もやもやが……考えたくはないけどこう言う時の勘って言うのは良く当たるんだよな」
ライオはカインを尊敬している節もあるようで、小さく表情をほころばせるとジークは小さくため息を吐くが何か引っかかっているようである。
「悪い予感?」
「あぁ……ノエル、支援魔法だ。カインに防御特化の!!」
「へ? いきなり何ですか!?」
ジークの胸騒ぎは1つの答えを導き出したようで、直ぐにノエルに指示を出すとカインに向かって駆け出す。彼女はジークの言いたい事を理解する事ができずに驚きの声をあげている。
「カイン、襲撃者の狙いは2人じゃない!?」
「……」
ジークの頭は襲撃者のターゲットをカインだと導き出し、カインに警告を出そうとした瞬間、カインの胸を1発の銃弾が撃ち抜き、カインは前のめりに舞台へと倒れ込み、その場所を鮮血で染めていく。