第2話
「だ、大丈夫ですか?」
「は、はい。大丈夫です。ありがとうございます」
ジークはフィーナが尻もちをついたのは自業自得と判断したため、彼女とぶつかった少女に手を伸ばすと少女はジークの行動に少し驚いたような表情をした後、彼の手を握って立ち上がり、
「すいません。急いでいたものでケガは無いですか?」
「わたしは大丈夫です。あの、あなたもケガはないですか? わたし、治癒魔法は少しは使えますのでケガをしていたら言ってください」
「私は大丈夫です。これでも鍛えていますから」
「そうなんですか? それは良かったです」
フィーナは自分を優先してくれないジークに不満げな視線を向けるが、明らかに自分が悪い事は理解しているようで少女に頭を下げると少女は自分は明らかな被害者のはずなのだが彼女の身体を心配して聞き返すとフィーナは魔族を倒して一攫千金を狙っているため、身体は鍛えていると腕まくりをして見せて少女はフィーナの様子に柔和な笑みを浮かべている。
(まぁ。とりあえず、ケガはないみたいだな。良かった。しかし、村では見ない顔だな? 遺跡の探検にきた冒険者かな? そうなると客だな……あれ?)
ジークは2人にケガがない事に一先ずは安心したようで小さく息を漏らすと少女の顔を見て、小さな村のため彼女がこの村の人間ではないと理解すると店にきたお客様だと思い接客に移ろうとするが彼女の綺麗な赤色の髪の間からは人族にはあり得ない2本の小さな角が頭を覗かせており、
(……赤い髪に角が2つ? えーと、目は金色? ……えーと、落ち着け、俺、ドレイクがこんな小さな村にくるわけがないじゃないか。獣人の類の人だよな。そうだよな)
ジークは少女の『赤い髪』、『2つの角』、『金色の瞳』と言った特徴が人族に敵対する竜の血を引いていて魔族でも上位の力を秘めており、人族を喰らい、残忍で暴力や殺戮の限りを尽くすと言う『ドレイク』に酷似していると思いながらもフィーナと話す少女の様子にそんなわけないと思いたいようで大きく首を振ると、
「……どうかしましたか?」
「な、何でもないです」
「ジーク、どうしたのよ? 女の子をそんな風に見たら失礼よ」
少女はジークの行動に小さく首を傾げるとジークは声を裏返して何もないと言うが頭が今の状況について行けていないようで声を裏返すとフィーナはジークの様子に怪訝そうな表情をするが、
「す、すいません。少しの間、お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
「はい。わたしはかまいませんけど」
「ちょっと、ジーク、何なのよ? お客様に失礼でしょ」
ジークは少女に断りを入れるとフィーナを店のなかに引っ張り込み、少女の頭を指差し、
「……フィーナ、失礼って、お前、彼女をもう1度、しっかりと見てみろよ」
「何? 女の子をそんな風に見るのは失礼よ。まったく、それともあの娘が可愛いから照れてるの? ……あんた、最低ね」
「良いから見ろ」
「見たってまさに美少女って感じよね。『キレイな赤い髪』に『金色の瞳』に赤い髪に映える『2つの小さな角』? あれ? 角? ……えーと、ちょっと待ってね。状況を理解するから……あれよね? きっと獣人の類よね?」
「そうだよな? そうだと良いな……あんな凶悪な存在が大きな国ならまだしもこんな小さな村になんか立ち寄るわけがないよな?」
ジークはフィーナに少女がドレイクかと確認して貰いたいようで少女を見て欲しいと言うがフィーナはその言葉にジークが少女に一目ぼれでもしたと思ったようで不機嫌そうな表情をするとジークはかなり切羽詰まっているようでくだらないやり取りをしている暇はないと言いたげに口調を強くして言い、フィーナはため息を吐いた後に少女に視線を向けるとジークと同じ疑問を持ったようで眉間にしわを寄せて自分が出した答えを否定したいようで希望的な答えでジークに同意を求めるとジークは最悪の答えを否定したいようで大きく頷いた時、
「あの。どうかしましたか?」
「ひゃう!?」
「あ、あのですね。1つ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「はい。わたしに応えられる事でしたら」
「……」
少女は2人の様子に何か感じたようで店のドアを開けて首を傾げてジークとフィーナに声をかけるとフィーナは声を裏返し、ジークは少女が仮に自分とフィーナの考えた通りにドレイクだった場合は絶対に逃げきれないためか、確認だけはしようと決意したようで少女に聞くと少女は笑顔で頷き、そんな少女の表情にジークは恐怖より恥ずかしさが勝ったようで彼女から1度、視線を逸らす。
「……ジーク、聞いちゃうの?」
「き、聞かないとどうしようもないだろ」
「だ、だとしてもよ。答えが最悪だったら、どうするのよ?」
「で、でも、逃げられる状況じゃないだろ……出口は塞がれている上にドレイクって言ったら人間を一瞬で消し炭にできるような魔法を無詠唱で使ったりするんだぞ。死ぬなら死ぬで真実くらいは知りたいだろ?」
フィーナはジークの様子に彼が決意を決めた事は理解したようだが彼女自身がまだ覚悟はできていないようであり、ジークの腕を肘で突くとジークはすでに生きることすら諦めているようで真実だけでも聞いておきたいと言うと、
「……あのさ。君って、ひょっとして、ドレイクだったりする?」
「はい。生まれて16年、ドレイクをやらせていただいています」
ジークは自分を落ち着かせるように大きく深呼吸をすると少女に向かい真実を確かめると少女はジークの質問の意味がわからないようで小さく首を傾げて、自分はドレイクだと言い、
「……そ、そうですか。ドレイクですか」
「やっぱり、そうなんだ」
「はい。そうですけど、どうかしましたか?」
ジークとフィーナは少女の口から聞こえた自分達が考えた事の最悪の答えに血の気が引いて行くのを感じるが少女自体は2人がどうして自分の種族を気にしているのか理解できないようであり首を傾げたままである。