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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
お家騒動?
197/953

第197話

「そうか?」


「そう。ジークは嫌がるかも知れないけど、勇者には資格や才能がいるんだよ。その背で多くの人の想いを紡げる人間。俺にはそんな重たい物は背負えない。俺ができるのはせいぜい、手の届く範囲の人間の荷物を目的の場所まで運ぶくらいだ」


珍しく真面目な表情をしてジークを真っ直ぐと見詰めるカイン。ジークはその視線から目を逸らす事ができずに息を飲む。


「受け止めて紡いでやれよ。お前にはその才能があるよ。別に多くの人間の想いを紡がなくても、たった1つの想いでもそれが大切な想いなら、それはきっと多くの人の心を動かす事だってある」


「何を言い出すんだ?」


「良いのか? ドストレートに言って」


カインの言いたい事から目を逸らそうとするジーク。その姿にカインは先ほどまでの真面目な表情はどこに行ったのか、直ぐにジークをからかいに移り始める。


「……言わなくて良い」


「ただ……何を背負ってるかだけは忘れるな。それを忘れなければ、きっと、おじさんとおばさんが見ている場所より、もっと先を見れる」


ノエルを引き合いに出される事を察したようで首を横に振るジーク。カインは彼の様子にくすりと笑う。


「背負ってるものを忘れるなって……それ、俺、完全に忘れられてるじゃないかよ」


「まぁ、そうとも言うけどな」


「まぁ、実際、忘れられてるんだろうけどな」


カインの言葉はジークの両親が彼の事を気にかけていないとも言っており、2人の間には妙な空気が漂う。カインは口を滑らせた事に苦笑いを浮かべるとジークは既に両親の事など諦めている節もあるためか、小さくため息を吐いた。


「後は目的のために選ぶ手段の違い。それを間違えないようにしろよ」


「間違えないようにねえ……」


「どうした?」


目的を達するには最良の策を選ばないといけないと言うカイン。しかし、ジークは何かあるのか疑うような視線を向ける。


「フィーナの育て方を間違ったお前に言われてもな」


「あれはフィーナを甘やかした村の人間の責任だから、田舎で子供が少ないって言っても甘やかせすぎ」


「俺はあいつのせいで怒られてた記憶しかないんだけど」


「それに関しては同感だ」


ジークが納得がいかないのはわがまま放題に育ったフィーナの事である。カインはジークの言いたい事がわかるようで小さくため息を吐く。


「と言うか、あのおっさんと言い、その娘と言い、フィーナと言い、お前がわがままな人間を引き寄せてるんじゃないのか?」


「そんな事はない……と思いたい」


カインの周りにいる人間の多くがわがままな所が多く、ジークは1つの疑問を持つ。その言葉にカインは直ぐに否定しようとするが、否定しきれないようでジークから視線を逸らした。


「おっさんはもう手遅れとしてカルディナ様とフィーナはまだ成長の余地はあると希望を持つとして」


「……もの凄く絶望的な気がするな」


「……そうだな」


フィーナとカルディナの成長を期待する物の、ジークもカインも精神的にあの2人が成長した姿は思い浮かばないようで眉間にしわを寄せる。


「あの。ジークさん、カインさん、今って大丈夫ですか?」


「……」


その時、部屋のドアをこんこんとノックする音が聞こえる。ジークとカインがドアへと視線を移すとドアが少し開き、ノエルが顔を覗かせ、彼女の後ろには不機嫌そうな表情のフィーナの姿が見える。


「どうかしたか? また、フィーナがおかしな事でもしたか?」


「してないわよ!! って言うか、最初の一言がそれってどう言う事よ!!」


「フィーナさん、もう時間も遅いですし、静かにしないと怒られちゃいますよ」


「とりあえず、廊下だと周りの部屋に迷惑だから、部屋に入ったら」


2人が部屋を訪れた理由をフィーナがおかしな事をしたと決めつけるジーク。フィーナは彼の言葉が納得がいかないようで声をあげるとノエルはフィーナをなだめようと声をかけた。カインは2人の様子に苦笑いを浮かべると他のお客さんの事も考え、部屋に入ってくるように言う。


「それで、どうしたんだ?」


「さっき机を運ぶって言ってた時に、ジークさんがカインさんのお手伝いをするって言ってましたから、わたしとフィーナさんでも手伝える事はないかな? と思ったんです。少しでもお仕事を手伝えれば、カインさんも休む時間が取れますし」


「……」


ノエルはカインが忙しく動いている姿にカインの体調を心配したようで協力を買って出たようだが、フィーナはカインの事など知らないと言いたげな表情をしている。


「ノエルはフィーナと違って良い子だね。やっぱり、嫁にするなら、こう言う子が良いよね。ジーク」


「……俺に振るな」


「と言うか、ジーク以外に振れないだろ」


ノエルが改めて気づかいができる事にカインはうんうんと頷くとジークを見て楽しそうに笑う。


「あ、あの。それでお手伝いできるような事ってありますか?」


「あぁ。そうだね。助かるよ。ただ……」


ノエルの提案にカインはお礼を言うが、何かあるのか視線をフィーナに移す。


「何よ?」


「ノエルはジークのやってる書類でもできると思うけど……フィーナは脳みそがないから、計算なんかできないだろうしどうするかな?」


その視線に不機嫌そうな表情のまま、カインを睨み返すフィーナ。カインはその視線に戸惑う事なくフィーナは書類整理に使えないと言い切った。


「……容赦ないな。けど、確かにカインの意見に納得する部分が多くて何も言えないな」


「あの。ジークさん、それは言い過ぎじゃないかと思いますよ」


ジークもフィーナには期待できないと思っているようであり、ノエルは苦笑いを浮かべた。


「何ですって!! せっかく、人が手伝ってあげるって言ってるのに、その態度は何よ!!」


「とりあえず、ノエルはジークのところにあるのを手伝って貰うかな? と言うか、ここじゃ、狭いから、ホールに降りるか?」


「そうだな」


ジークとカインの言葉に顔を真っ赤にして怒鳴り散らすフィーナ。しかし、2人とも気にする事はなく、4人で部屋で仕事をするには手狭になってしまった事もあり、しまだ、未処理の書類をまとめ、ホールに降りようとする。


「ノエルは無理しなくて良いからな。あんまり多く持って階段から落ちてケガしても困るから、無理はするなよ」


「フィーナ、力仕事しかできないんだから、書類をホールまで運べ」


部屋を出る際にジークはノエルを気づかい、カインはフィーナに力仕事を押し付けると一足先にホールへ降りて行く。


「……ムカつくわ」


「あ、あの。フィーナさんも落ち着きましょう……重たいです」


「……ノエル、無理しなくて良いから」


2人の言葉に舌打ちをするフィーナの様子にノエルはジークとカインを追いかけようと書類を手に持とうとするが量が多かったようで持ち上がらない。フィーナはノエルの様子に毒気が抜かれたようで小さくため息を吐くと書類を持ち上げる。


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