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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
お家騒動?
195/953

第195話

「って、エルト様が言ってたんですよ。カインさんもわたしと同じ考えを持ってくれてるんですよ」


「あいつが? ……人族も魔族も全部、自分の手ゴマとしてこき使おうって腹か?」


本日も武術大会の日程を終えてジルの店に戻るとノエルとフィーナはジークの部屋を訪れる。ノエルはエルトから聞いたカインの話を興奮気味にするがジークは自分もエルトから同様の話は聞いているものの、信じられないと言いたげに眉間にしわを寄せた。


「その言い方は流石に酷いな」


「……お前はどこから湧いてくる?」


「カインさん、どうしたんですか?」


その時、ジークの部屋の窓が開き、部屋に入ってくるカイン。いきなりの登場にジークは眉間にしわを寄せ、ノエルは驚きの声をあげる。


「……いや、とうとう、部屋にまで押し掛けられてね。避難を」


「避難を? って、お前、まさか、この部屋に泊まるつもりじゃないだろうな?」


「アーカスさんはジオスに戻ったんだから良いだろ」


カルディナに部屋まで押し掛けられたようであり、避難してきたようだがジークにとっては迷惑でしかない。


「あれ? アーカスさん、帰ったの?」


「あぁ。これ以上はルッケルに居ても仕方ないって言って転移魔法で帰ったって」


「……その様子が目に浮かびます」


「そうね」


アーカスはジークに渡した胸当ての性能だけを見たかったようで、既にジークが武術大会で負けたために目的は達しており、ノエルとフィーナはアーカスが転移魔法でジオスに帰った姿が目に浮かんだようで苦笑いを浮かべる。


「と言う事で、泊めて貰うよ」


「だからな」


「それなら、俺がフィーナと同室になって、ノエルとジークが同室になっても良いよ」


「……そう言う事じゃない」


「ノエル、部屋に戻るわよ」


「へ? フィ、フィーナさん!? ど、どうしたんですか?」


カインはジークをからかい始め、ジークは大きく肩を落とす。フィーナはカインと同室などまっぴらだと言いたげにノエルの腕を引っ張ってジークの部屋から逃げ出して行く。


「と言うか、転移魔法があるんだ。ジオスに帰って休めよ。そっちの方が楽だろ。流石に馬車を使ってでも夜中には到着しないだろ」


「それは最終手段、門番をぶっ飛ばして、夜中にジオスまで駆けられたら、もっと大変な事になる」


「それは確かにそうだな」


転移魔法を使用するカインにとってはカルディナをまく事くらい簡単だろと言うジーク。しかし、カルディナの性格を考えると余計な仕事が増えるだけのため、カインは転移魔法を使う事はできないと首を横に振った。


「仕事は冒険者が引いたらホールでやらせて貰うから、ジークは寝てても良いぞ」


「……そう思うなら、俺の目の前でそんなものを取り出すな」


カインはどこからか山ほどある書類を取り出すと部屋の備え付けの机に座り、書類へと目を通しだす。ジークはなんだかんだ言いながらもカインが見捨てられないようで数枚の書類を手に取る。


「何だ? もしかして、手伝ってくれるのか?」


「元々、そのつもりでここにきたんだろ。机がないと面倒だからな。ジルさんに言って、ノエルとフィーナへ部屋から机を運んでくる」


「力仕事なら、ジークよりフィーナの領分だぞ」


「……知ってるが、あいつは女だと言うところを強調して絶対にやろうとしない」


わざとらしく言うカインの様子にジークはムッとしながらも、今回のカインの行動で地震被害に遭っているルッケルの多くの民が助けられているかも理解しているため、机を補充しに部屋を出て行く。


「まったく、カインも次から次と仕事を持ってくるね」


「せめて、使える人間を何人か連れてこいって話だけどな」


ジルはカインがジークの部屋を訪れた事を聞いて、苦笑いを浮かべるとジークは巻き込まれる人間の迷惑を考えろと言いたげにため息を吐いた。


「まぁ、あの子は敵が多そうだからね。有能過ぎるのも考えものだよね」


「そんなもんか?」


「そうそう。だから、しっかりと手伝ってあげな。机くらいなら運んだって良いから、どうせ、直すのはジークなんだし」


ジルはカインとジークを天秤にかけた場合はカインの味方であり、ジークにカインの手伝いをするように言う。


「……と言うか、もう少し、俺を気づかってくれ」


「はいはい。どうせ、遅くなるんだから、夜食くらい作ってあげるよ」


先日から、カインに良いようにこき使われているジークは文句タラタラであり、ジルはまだ忙しいようでジークを追い払うように言いながらも2人分の飲み物を用意してくれている。


「それじゃあ、夜食を楽しみにして手伝うか? 何の儲けも出ないけど」


「文句言いながらも結局やるんだから、何も言わずにやりな。そっちの方が良い男に見えるから」


「あー、あんまり、そう言うのは興味無いから、どうでも良い」


「ノエルが……」


「それじゃあ、俺はカインの手伝いでもしてくる」


素直に手伝うのはどこか納得がいかないジークの様子にため息を吐くジル。ジークはこれ以上、文句を言っていると余計に面倒な事になると察知したようで2人分の飲み物を手に部屋に戻って行く。


「危険感知能力は高いね」


「カイン様はここですか!!」


そんなジークの背中にジルは苦笑いを浮かべると、残っている仕事を片付けるためにそそくさと動き始めた時、勢いよく、店のドアが開き1人の少女がホールに飛びこみ。その後を少女の護衛なのか2人の騎士が困り顔で続く。


「この子がカルディナ様かい? あの子も大変だね」


「カイン様はどこですか? 答えなさい!!」


「カインって言うのが誰かはわからないけど、お断りだよ。この店は冒険者の店だからね。お客様の情報を売ってはこの商売をやってく資格はないからね」


ホールに飛び込んできた少女がカインの頭痛の種だと直ぐに理解してため息を吐くジル。カルディナは彼女の様子に気づく事なくジルを一喝するがジルは迷う事なく、彼女の言葉を鼻で笑う。


「私はカルディナ=オズフィムですわ。オズフィムの名に従わぬつもりですか?」


「オズフィム家のお嬢さんだろうと、冒険者の店には冒険者の店のルールってのがあるのさ。それはこの国だけじゃなく、多くの国の共通のルールさ。それを無理やり家名を出して言う事を聞かせようって言うなら、オズフィム家も地に落ちたものだね」


「……くっ、今日のところは引きますわ。帰りますわ」


オズフィムの家名を盾にして言う事を聞かせようとするカルディナ。しかし、毎日、冒険者達荒くれ者を相手にしているジルに敵うはずもなく、カルディナは悔しそうな表情をすると店を出て行き、騎士2人はジルに謝罪をした後にカルディナを追いかけて行く。


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