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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
お家騒動?
190/953

第190話

「結構、奥まできてたんだな」


「そうですね」


「巨大ミミズの事を考えたら、そっちから出た方が良さそうだね」


子供達も一先ず落ち着き、横穴からの脱出を試みようと捕縛した誘拐犯に現在地を確認する。ジーク達の予想していたより、外に近づいているため小屋に戻るより、先に進む事を選ぶ流れになっている。


「あの。良いんですか? ここの外は誘拐犯がいるんじゃないですか?」


「まぁ、そうなんだけど、子供達の体力も心配だしな。あっちには馬車が……」


しかし、ノエルはまだ2人誘拐犯が残っている事を心配しているようで表情は優れない。出口を決めた理由は近いからだけではないため、ノエルをジークが説得しようとした時、何かが引っかかったようでジークは首を傾げた。


「ジーク、どうかしたかい?」


「ノエル、まさか、馬車がイヤだから、引き返そうって言ってるわけじゃないよな?」


「な、何を言ってるんですか? そ、そんな事があるわけないじゃないですか。今日はジークさんの作ってくれる酔い止めがないから、馬車に酔ってしまったらどうしようなんて事は絶対に考えていません!!」


ノエルが馬車に酔う事を思い出すジーク。その言葉にノエルは全力で否定するがその否定の仕方は自爆でしかなく、横穴内は子供達を含めて微妙な空気になる。


「まぁ、距離的にはそこまでの距離じゃないはずだし、馬車のサイズもあるからジークとノエルは歩いて帰っても問題ないよ」


「俺も歩きかよ」


「ノエルが1人でルッケルまで無事に帰って来れると思うなら、好きにしな。ほら、あまり遅くなると暑苦しい筋肉親父が襲ってくるぞ」


そんな微妙な空気にかまっていられないと思ったようでカインは手を2回たたき、注目を集めると子供達を先導して外に向かい歩き出す。


「……歩いて戻るかは外に出てから決めるか? カイン、前は俺が歩く」


「それじゃあ、私は最後尾かな? ノエルはカインと真ん中だね」


「は、はい。わかりました」


ルッケルまでの帰還方法を考えるのを一先ず、後回しにしたジークは前方への警戒もあるため、先頭に立ち、エルトは誘拐犯を縛り付けた植物の根を持ち後方に下がる。


「……いたな」


「いたね」


「だ、だから、戻ろうって言ったんですよ」


しばらく歩いていると視線の先には巨大ミミズの頭がこちらを覗いており、ジークは腰のホルダから魔導銃を引き抜き、カインは子供達の合間を縫ってジークの隣へ並ぶ。


「ノエル、巨大ミミズは、ジークとカインに任せて、子供達を少し下げよう」


「は、はい。わかりました。大丈夫ですから、泣かないでください」


横穴が広いとは言っても、3人が並んで戦える広さではなく、エルトは子供達の警護をするためにノエルに指示を出し、巨大ミミズの登場に泣き出しそうな子供もいるなか、ノエルは子供達を後ろに下げる。


「カイン、言っておくけど、俺の魔導銃だとあれは撃ち抜けないんだ」


「まぁ、そうだろうな……さて、前に出てきたもののどうしたものか?」


「……策はないのかよ」


巨大ミミズの前に立った2人は前に出て見たものの、攻撃の手段はあまりないようで小さくため息を吐いた。


「まぁ、とりあえず、動きでも止めるか?」


「いや、正直、退散してくれるのがありがたいんだよね。あんなのの死体を処理するまで子供達をここに残しておくのもなんだし」


「確かにそうだ」


巨大ミミズは通路に現れた珍入者にどうするか決めかねており、なかなか攻撃を仕掛けてくる事もなく、ジークは魔導銃で冷気を放ち、巨大ミミズの活動を止めるかと聞くが、退路確保のためカインはどうにかして巨大ミミズを追い払えないかと言う。


「でも、威嚇射撃でもして攻撃してこられても困るしな」


「そこだな。ミミズは俺達を餌として判断しないだろうし……」


「な、何ですか!?」


「ノエル、落ち着け」


お互いにどうするか決めかねている時、ドンと響くような音がした後に地面が揺れ始め、子供達だけではなくノエルまでその揺れに驚き、声を上げ始める。


「あー、これは視野に入れたなかったかな?」


「モグラかな? かなり大きいけど」


「……モグラってミミズを食うはずだよな? 戻るか?」


「あれはあまり良い物じゃなかったからね。下手したら子供達のトラウマになる」


その時、横穴の壁が崩れ、巨大な爪が見えた。その爪はモグラのもののように見えるがその大きさは尋常ではなく、ポイズンリザードが巨大ミミズを食べている姿を見た事のある3人の顔は小さく引きつる。


「……取りあえず、退路は確保できたかな?」


「そうですね」


巨大ミミズは捕食者の登場に自分の命の危険を察したようで凄い勢いで撤退を開始し始め、その穴を1匹の巨大モグラが追いかけて行き、地響きがしばらく続いた後、横穴内は静寂が訪れる。

その静寂はミミズがモグラに捕まった事を示しているとは感じながらも何度も同じ目に遭いたくはないため、先を急ごうと歩き始める。


「しかし、ミミズと言い、モグラと言い、ポイズンリザードと言い、何か巨大化し過ぎじゃないか?」


「確かにそうですね」


横穴内を外に向かって歩いて行く途中で、ジークは先日から続いている地震の原因は地下生物の巨大化が影響ではないかと思ったようであり、ノエルはその言葉に苦笑いを浮かべた。


「カイン、普通にミミズとかがあんなに大きくなる事ってあるのか?」


「そっちは専門じゃないから、はっきりとは言えませんが、ポイズンリザードはまた別だとしても、多少の例外はあるとしてもあの種類のミミズやモグラがあそこまで巨大化する事はないと思います」


「そうかい? ……何かあるかも知れないね」


「鉱山の調査員に話をしておきます」


「そうしてくれ」


カインの知識内ではミミズやモグラが人を超えるサイズになる事は信じられないようであり、鉱山の調査員へ報告の必要があると言う。


「だよな。ルッケルの街中にミミズの穴とかモグラ塚ができてないから直接被害が出てないけど、何かの拍子でルッケル陥没とかは笑えない」


「まぁ、ミミズやモグラの穴はかなり丈夫な構造になっているから、そんな事にはならないと思うけど……むしろ、捕まえて、ルッケルの観光資源にするか? ミミズの肉は食えるらしいし、モグラの皮もそれなりに値が付く」


「……食用ミミズ?」


「それはちょっと……かなりイヤです」


カインは巨大ミミズと巨大モグラをルッケルの復興に使えないかと考え始めるが、その計画はジークとノエルには不評のようで2人は眉間にしわを寄せる。


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