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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
お家騒動?
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第186話

「あの、ジークさん、エルト様」


「言いたい事はわかるけど、時間がないから行くよ」


フィーナを突き放した事にまだ戸惑っているノエルは話を聞きたいようだが、今は1分1秒を争う時であり、エルトは先を急ぐように言う。


「……止まれ」


「あれ? もう着いた?」


「……違う。どうやら、さっきの火柱に偵察を出したみたいだ。隠れるぞ」


その時、前を進んでいたジークが声をひそめながら止まるように言う。彼の言葉にエルトは首を傾げるとジークは森の中を指差すと周囲を警戒しながら歩いている2人組が見え、ジークはノエルを引き寄せ、エルトもジークの後に続く。


「ど、どうしましょうか?」


「……取りあえずは身を潜めて、あの2人が行くのを待った方が良いかな?」


「そうだな。俺達の目的は子供を安全に確保する事だしな。それにさっきの火柱を見せられるとあっちの方が戦闘力は高さそうだから任せよう……なぁ、エルト様、誘拐犯を1人確保したんだよな? 残っているとしたら、後何人だ?」


目の前に移るジークの顔をノエルは顔を赤くするものの、変な事を考えている場合ではない事は理解しており、次の行動について聞く。

ジークとエルトは無駄な戦闘は避ける方向であり、息をひそめる。ジークは2人組が過ぎ去る前に少し時間があるため、エルトに誘拐犯の人数を確認する。


「……全部で10人だね」


「10人ですか? そう考えるとまだ7人も残っているんですか?」


「……倍以上かよ。現状で言えば奇襲は難しいな」


誘拐犯との戦力差は大きく、ノエルは不安そうな表情をし、ジークは表情を引き締めた。


「話はまだ終わってないから、小屋に残っているのは、たぶん3人」


「人数が合わないだろ?」


「ルッケルの中で動いていたのが5人。そっちはアズ様の指示ですでに押さえに走っている」


「……あぁ。1度、街中で子供達を捕まえておいて、夜にこっちの小屋まで運んで立って事か? ルッケルは入口以外にも隣接している森を抜ける方法があるからな」


「あぁ。何時間か置きに定期連絡があるみたいなんだけど、それがないとなると逃げ出す準備に移るだろうからね。流石に捕まった仲間を助けに動くほどバカじゃないだろうしね」


誘拐犯はルッケルの外と中で半々に分かれていたようであり、街中の方はすでにアズの指示で捕縛に動いていると言う。


「まぁ、そうだろうな……さてと、行くか?」


「はい」


2人組の姿が見えなくなった事を確認するとジークは再出発を指示し、ノエルは大きく頷いた。


「うーん。ジークとノエルは本当に良い組み合わせだね」


「な、何を突然、言い出すんですか!?」


「ノエル、静かにしてくれ。さっき2人組を偵察に行かせた事を考えると使い魔を持っているような魔術師はいないとは思うけど、それでも変な騒ぎを起こすのは危ないんだからな」


ジークの指示にしっかりとついて行くノエルの様子にエルトは少しだけ彼女をからかいたくなったようであり、エルトの言葉にノエルは顔を真っ赤するが周囲を警戒しながら先頭を歩くジークは2人の相手をしているほど余裕はないようでその反応は冷たい。


「す、すいません」


「怒られちゃったね」


「……フィーナがいないのに緊張感がないのはどうなんだ?」


ジークはフィーナがいないのに周囲への警戒が緩いため、眉間にしわを寄せるものの視線はしっかりと先を見据えている。


「見えましたね」


「……静かだね」


「本来なら、炭を作ってるはずなんだけどな。炉に火も入ってないみたいだな。職人達も無事なら良いけど」


しばらく、進むと3人に視界には小屋が見える。本来なら炭作りを行っているはずだが炭作りは中断されているようであり、その静けさが3人の緊張感を高めて行く。


「……それじゃあ、ちょっと様子を見てくるから、エルト王子とノエルはここに残って居てくれ」


「ジークさん、大丈夫ですか? みんなで行った方がよくないでしょうか?」


「あぁ。3人で行くよりは最初に様子を見てきた方が安全だと思う……」


「……まぁ、ノエルを連れて行くと失敗しそうだしね」


ジークは1人で小屋の中を偵察してくると言う。ノエルはジークの身の安全を心配したようで3人で行く事を主張するが、ジークとエルトの心配は鈍いノエルが変な失敗をする事であり、エルトは苦笑いを浮かべた。


「そ、そんな事はないです……」


「いや、説得力無いから、エルト王子、少しの間、ノエルの事をお願いします」


「あぁ。任せてよ。ノエルと2人っきりと言うのは初めてだから、日頃のジークとのいちゃつき方についてしっかり聞いておくからさ」


自覚はあるようで小さく肩を落とすノエル。ジークは彼女の様子に苦笑いを浮かべるも直ぐに表情を引き締めるが、エルトからは緊張感のない返事が返ってくる。


「……行ってくる」


「ジークさん、気を付けてください」


「あれ? 反応なし?」


エルトの言葉に反応する事なく、小屋に向かって歩き出すジーク。エルトはその様子に小さく肩を落とす。


「……」


ジークは誘拐犯に見つかる事なく小屋まで到着すると中の気配をうかがいながら小屋の窓の下まで移動する。


「……まだ、逃亡準備には入ってないみたいだな。流石に3人じゃ、子供を連れて行けないか? 職人さんもケガはしているみたいだけど、生きてるな」


窓に誘拐犯が近づいていない事を確認しながら、ジークは小屋の中へと視線を移す。小屋と言っても炭作りの職人達の休憩所も兼ねているためそれなりに広く、部屋の隅には縛られた子供8人と職人2人。そして、捕えている子供達と職人がおかしな事をしないように3人の誘拐犯が見張っている。


「ジーク、どんな感じ?」


「……おい」


ジークは中の様子を確認して、1度、ノエルとエルトの待っている場所に戻ろうとした時、彼の頭の上にカインの使い魔の鳥が舞い降り、ジークは眉間にしわを寄せた。


「とりあえず、1度、隠れてるノエルとエルト王子の場所まで戻ろうと思う。作戦を立てないといけないからな」


「そうだね。現状で言えば、突っ込むのは危険みたいだからね」


カインは使い魔の目を通して、小屋の中を確認すると捕まっている子供達と職人の安全を考えて小屋の警戒を優先すると判断したようでノエルとエルトの元に戻る。


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