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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
お家騒動?
185/953

第185話

「で、おっさん、娘が行く場所に心当たりはないか?」


「いや、私もカルディナもルッケルに来たのは初めてだからな」


「役に立たないわね」


ルッケルを出てしばらくして、ジークはラースにカルディナの居そうな場所を聞くがルッケルに初めて任務で来たラースには心あたりなどなく、フィーナはラースに良い印象もないため、ジト目でラースを睨みつける。


「そんな事は最初からわかってる。性格を考えたらどんな動きをするかとかわからないかって事だ」


「性格? ……カルディナは小さい頃はお父さん、お父さんと言ってくれたのに、あのキツネに出会ったせいで」


「……もう良い」


カルディナの性格から行き先を推測しようとするがラースは昔のカルディナの姿を思い浮かべたようでカインへの敵意に目に炎を灯し始め、ジークは頭を押さえるとアズから貰った地図に視線を移す。


「ジークさん、どうしましょうか?」


「あぁ。誘拐された子供達の居場所は心あたりがあるんだけど、そこにはおっさんの娘がいるかどうかわからないしな」


「何? 子供達がいる場所ってわかるの?」


地図を見ながら、子供達の居場所に心当たりがあると言うジーク。フィーナはその言葉に眉間にしわを寄せた。


「あぁ。誘拐した子供達を比較的に安全に隠して置く所なんて、ルッケルの周りだといくつかしかないからな。でも、カインの事だ。それくらいは理解してると思うから、そっちは任せておいても良いと思うんだよな」


「それでも場所を言いなさいよ。おっさんの娘もだけど、子供達だって心配なんだからね」


「そうだよな……おっさん、それでも良いか? カルディナ様は魔術学園にも通ってるんだ。ある程度、自分で身を守れるだろ」


「……あぁ。わかっている。私だってそれくらいの事は理解している」


優先されるべきは子供の命と判断するとジークはラースにつらい決断を迫り、ラースは騎士として優先する物も理解しているようで唇を噛みしめながらも頷く。


「ジークさん」


「……ノエル、今は悩んでるヒマはないんだ。誘拐犯が捜索隊が編成された事に気が付けばすぐにルッケルから離れる可能性だってあるしな」


「それはそうかも知れませんが」


「……小僧の判断は正しい。行くぞ」


ノエルにはカルディナを見捨てるとも聞こえたようで、ジークの服をつかむがラースは小さく首を振ると先を進もうとする。


「おっさん、落ち着け。場所もわからないのに1人で行こうとするな」


「……締まらないわね」


しかし、ラースはカルディナが心配のためか、どこか上の空であり、ジークは落ち着けとため息を吐いた。


「とりあえずは、ここから近い場所から攻めていくか? そうなるとここだな」


「ここって何ですか?」


「炭造りの小屋。数名常駐しているはずだけど、戦闘技能のない職人だからな。占拠されちまえば後は使いたい放題だ。森を歩くわけだし、俺、フィーナ、ノエル、おっさんの順な。おっさん、後の警戒は任せるぞ」


ジークは地図を指差し、自分達の場所から1番近い小屋を指差すと地図を手に森の中に入って行く。


「……ジーク、どうかしたの?」


「あぁ……何と言うか、当たりかな?」


「当たりって、子供達がこの先にいるって事ですか?」


ジークは手で後のメンバーを静止させると静かにするように言う。


「……わからない。誘拐犯に使い魔を使える人間が居れば、見張りとしている可能性もあるけどな。ただ」


「これは……あれね。アーカスさんのところで罠を見ているせいか、普通の罠がずいぶんとちっぽけに見えるわよね」


「あ、あの。その感覚もどうかと思うんですけど、罠があるんですから、気を抜いてはいけないと思います」


ジークは足もとを指差すとそこには数種類の罠が設置されており、フィーナはこの程度の罠など何でもないと言い切る。しかし、ノエルは気を引き締めるべきだと言う。


「わかってる。取りあえずは罠を解除するから、周りを警戒していてくれるか?」


「あぁ……な、何だ?」


ジークは地図をノエルに預けると足元にある罠の解除を始め出し、ラースは後方を中心に警戒を強めた。その時、ジーク達の右手の森から轟音とともに火柱が上がる。


「あ、あの。ジークさん、あそこにきっとカルディナ様がいますよね?」


「……そうだろうな。どうする? あそこに行くか。おっさんの娘をエサに小屋を目指すか?」


「カルディナ!! 今、助けに行くぞ!!」


「……ですよね」


火柱を見て、顔を引きつらせるノエル。ジークはラースに小屋と火柱が立った場所、どちらを先に行くかと聞くが、既にラースは罠の事も頭から排除されているようで火柱が上がった方向に向かって駆け出す。


「ジークさん、どうしましょうか?」


「とりあえず、おっさんを追いかけるしかないだろ」


「いや、ジーク達は私と一緒に小屋へ向かおう。カイン、レインはラースの援護を」


ジークは解除していた罠をそのままに立ち上がった時、カインとレインを引きつれたエルトが現れ、ジーク達3人に付いてくるように言う。


「エ、エルト様? どうして、ここに?」


「街中で誘拐犯の1人を捕縛した。そいつからの情報から、子供達はこの先の炭造りの小屋に捕まっている。今の火柱と戻ってこないメンバーから定期連絡がないことから、退却に移るだろう。時間がない。急げ」


「了解。そっちも気をつけろよ」


エルト達の登場に驚きの声をあげるノエル。カインは長々と説明しているヒマはないようで簡潔に今の状況を説明するとジークは状況を理解したようで直ぐに頷く。


「わかってる。カルディナ様を回収したら直ぐに合流する。間違っても先を急ぐな。特にフィーナ、ジークとエルト様の足だけは引っ張るなよ」


「わかってるわよ。それくらい」


「フィーナ!!」


直情的なフィーナの行動が1番心配なようでカインは彼女に釘を刺す。しかし、フィーナはカインからの小言など聞く気はないと言いたげであり、彼女の様子にカインは珍しく声を張り上げる。


「フィーナ、お前、カインと一緒に行け」


「ジーク、何を言ってるのよ? 私が行かないと戦力的に不味いでしょ」


「最初に言っただろ。人命優先なんだよ。カインが真面目な話をしている時に、そんな態度を取ってるなら、邪魔だ」


「そうだね。ノエル、行くよ。時間がない」


「は、はい」


フィーナの様子にジークは振り返る事なく、彼女を突き放す。エルトは戦力が落ちてもフィーナを連れて行く事を危険と判断したようでノエルに声をかけ、3人は小屋に向かって歩き出した。


「な、何なのよ?」


「フィーナ、行くぞ。時間がない」


自分がメンバーから外された理由がわからないのかフィーナは呆然とするが、カインはフィーナの腕を引っ張り、レインとともににラースの後を追う。


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