第18話
「……ここが新しい遺跡ね。何があるのかしら?」
「……フィーナ、1人で行くな。だいたい、灯りもないのに覗いたって何もわからないだろ」
「わかってるわよ。それでも雰囲気ってのがあるでしょ」
元々、平和な村で周辺に出現する魔物達も大人しいため、特に何事もなく新しい遺跡の入口まで到着するとフィーナは遺跡の入口に立ち、表情を険しくするがジークは彼女の行動にため息を吐くとフィーナは頬を膨らませて反論する。
「一応、少し入った冒険者達が言うには魔物達はあまり変わらないけど、中に特殊な能力を持っている亜種がいるような事も言ってたから、2人とも気をつけろよ」
「は、はい」
ジークはシルドの店で少しは遺跡の情報を聞いていたようでノエルとフィーナに注意するように言うとノエルは大きく返事をするが、
「わかってるわよ。だけど、たかだか、この辺の魔物でしょ。私とジークが居れば問題ないわよ」
「……フィーナ、お前と組んだ冒険者が次は誘いたくないって言う理由がわかるぞ」
フィーナは何も心配ないと言い、ジークはフィーナの冒険者としての噂も聞いているようでため息を吐くと、
「何よ?」
「……いや、ある程度、冒険者を始めればパーティーって出来上がってくるものなのに未だにフリーなお前の評価だよ。考え足らずで突っ込んでパーティーを危険に導くってな。冒険者で生計をたてたいなら、人の話を聞く事を覚えろよ」
「私が悪いんじゃないわよ。危険かも知れなくても飛びこまないと何もわからない事だってあるでしょ」
フィーナはジークのため息に不機嫌そうな表情をし、ジークはフィーナの自分勝手な性格は冒険者として致命的だと言うがフィーナは自分には自分の考えがあり、今までの仲間達はそれが理解できなかっただけだと言い切り、遺跡の奥に歩いて行こうとする。
「……それをやるのは不器用でガサツなお前じゃない」
「何よ!? 放しなさいよ!!」
ジークは灯りを持たずに1人で遺跡の奥に進んで行こうとするフィーナの首をつかむとフィーナは当然、感情でジークを怒鳴りつけるが、
「遺跡の中にはトラップがあるんだ。お前に突っ切られてたまるか」
「何よ? 入口あたりは他の冒険者が入ったんでしょ。それなら、安全じゃない」
「……お前も冒険者なら頭に止めておけよ。トラップには魔法的なものがあって解除されても自動で戻るものがあるって、ここはそれだ」
ジークは彼女の迂闊な行動にため息を吐くと今からトラップを解除すると言って辺りを調べると、
「……これだな。本当なら魔法で根本から解除できれば良いんだけど、そんな魔法は使えないからな」
「これがトラップですか? ジークさん、これを解除できるんですか?」
岩肌の壁の足元には小さなくぼみがあり、ジークはその近くにランタンを置くと荷物から小さなナイフと言った小道具を取り出してトラップの解除に入るとノエルはトラップ解除など見た事がないようでジークの後ろから興味深そうに彼の作業を覗き込み、
「ノエル、ちょっと、ランタンを持って手元を照らしてくれるか? フィーナ、一応、警戒していてくれ。魔物が襲ってこないとは限らないからな」
「は、はい。わかりました」
「わかってるわよ。それくらい」
ジークはノエルとフィーナに指示を出すがフィーナは機嫌が悪そうに返事をしながらも周囲の警戒を始め出す。