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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
お家騒動?
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第176話

「小僧、騎士を愚弄する気か!!」


「騎士全てをバカにするわけないだろ。俺がバカにしてるのはおっさん、あんただけだよ」


攻撃を交わすたびにジークが銃口を向けている事に激昂するラース。ジークはその怒りをさらにあおるように笑う。


「小僧!! 真剣勝負で笑うとは何事だ!!」


その笑みが何とかとどめていたはずのラースの最後の糸を切る事になる。いや、ずいぶんと前から限界は来ていたのであろう顔を真っ赤にして大ぶりで彼の頭に向けて剣を振り下ろそうとする。

その一振りは多少大振りではあるが、剣速に関しては今まで以上の速さを誇っており、会場の多くの観客がラースの勝利を確信した。


「……悪いな」


しかし、ジークはその一振りを待っていたようですでにラースの懐奥深くまで入り込んでおり、その表情には先ほどまで口元に浮かべていた笑みはすでになく、真剣な表情をしている。


「おっさん、騎士だって言うなら、もう少し冷静になったらどうだ? 騎士としての領分を果たすなら、1対1で熱くなりすぎだろ。あんた若い騎士達の命を預かる身なんじゃないのかよ? 少なくともこんな安っぽい挑発にならないでくれないか?」


「小僧、何をした?」


ラースの目にジークの顔が映った瞬間、彼の身体は宙を舞い、握っていたはずの騎士剣は舞台の上に転がっており、投げ飛ばされたラースだけではなく、観客も何が起きたかわからずに会場は静まり返った。


「いや、その前に降参の一言くらいあっても良くないか? おっさんは無防備な上にここからなら、例え、攻撃力が低い俺でも何でもできるんだけど」


「ぐっ」


「勝者、ジーク=フィリス!!」


ラースの声から、投げられた事で頭に上っていた血が下がったと判断したようでジークは苦笑いを浮かべながら舞台に転がっているラースに手を伸ばす。

ラースはその表情に悔しそうに歯がみをした時、審判は決着がついたと判断したようでジークの勝ち名乗りをあげた。

その勝ち名乗りを聞き、訪れていた静寂は圧倒的有利に見えていたはずのラースが負けた事に興奮したようで会場からはジークの名前が上がり始める。


「……なんか、居ずらいな」


「そうか……」


「ちょ、おっさん、何をするんだよ!?」


会場から聞こえる自分の名前にあまり目立ちたくないためか表情をしかめるジーク。ラースはジークの腕を握り、立ち上がると先ほどまで自分を手玉に取っていたはずの少年の表情の変化に何か思いついたのか小さく口元を緩ませるとジークの右上を空高く掲げた。


「お、おっさん、仕返しのつもりか?」


「勝者は観客に答えるのは義務だ」


ラースの突然の行動に驚くジーク。しかし、ラースは慌てるジークの姿にご満悦のようでニヤニヤと笑っている。


「……ちくしょう。やっぱり、武術大会こんなものに出るんじゃなかった」


「なんだ? 気に入らないなら、肩に担いでやっても良いのだぞ?」


「良い。そんな事は必要ない!!」


巻き込まれた形とは言え、不本意に武術大会に参加してしまった事を後悔するジーク。その様子にラースは少し楽しくなってきたようでジークへの追撃を仕掛け、ジークは大きく首を横に振った。


「何か、まとまったみたいだね」


「……意味がわからないわ」

舞台上でラースにからかわれるジークの様子に観客席から見ていたエルトは苦笑いを浮かべる。

しかし、フィーナは一方的にジークへと難癖を付けていたはずのラースがジークの勝利を称えている意味がわからないようで眉間にしわを寄せた。


「えーと、無事にジークさんが勝ちましたし、問題も解決したみたいだし、良いんじゃないでしょうか?」


「まぁ、脳筋だし、さてと、仕事に戻りますか? レイン」


「わかってます」


ノエルは苦笑いを浮かべて、問題は解決したと話をまとめるとカインはいつまでも遊んでいられないようで席から立ち、レインはカインに同調するように頷くと2人でエルトを両脇からしっかりと抑えつける。


「2人ともどうしたんだい?」


「……エルト様、知ってますか? いろいろと仕事を処理するのにエルト様の判がいる書類もあるんですよ」


「とりあえずは、これでエルト様ご自身の第1試合までは試合を見る必要はありませんね?」


エルトは両脇をがっちりと固められるも逃げるスキを狙っているようだが、流石にカインとレインはエルトが選んだ実力者でもあり、簡単にスキなど見せるわけがない。


「ノエル、フィーナ!!」


「は、はい。何ですか!?」


「ノエル、返事はしなくて良い。それにそんな事をしても逃がしません」


「そうです。あまり1人で動かれては危険だと言ってますよね」


「早いとこ、連れて行ってよ。これ以上、おかしな事に巻き込まれるのはごめんよ」


少しでもスキを作ろうとノエルとフィーナの名前を呼ぶエルト。ノエルは何があったかわからずに返事をするもののカインとレインがエルトを逃がすわけもなく、フィーナはエルトを連れて行けと大きく肩を落とす。


「それじゃあ、1度、戻るから、ノエルとフィーナは引き続き、子供達の世話を任せるよ。後はノエルはジークを労ってやってくれ」


「は、はい。わかりました」


「……俺、汚れてるのかな?」


「何を今さら」


エルトが逃げ出さないようにカインは拘束魔法までかけるとレインはエルトを引きずって行く。その様子にため息を1度、吐いた後、ノエルをからかうがノエルはその言葉を天然でスルーし、カインはノエルの純心さに眉間にしわを寄せた。


「まぁ、良いや。それじゃあ、任せ……」


「カイン、ライオ様を見なかったか!? 少し目を放したスキに特別席から姿を消しちまったんだ」


自分の仕事に戻ろうとカインが2人に背を向けた時、迷子探しを手伝っていた魔術師らしき男性が息を切らせてカインを呼ぶ。その口から出た言葉は更なる問題である。


「……エルト様が片付いたと思ったら、今度はライオ様か?」


「あ、あの。カインさん、大丈夫ですか?」


カインはげんなりとした様子で肩を落とし、彼の疲れた様子にノエルは心配そうに声をかけた。


「ノエル、フィーナ、悪い。ライオ様を探してくれ。と言うか、2人になら接触してくる可能性もあるから」


「はい。わかりました」


「また、面倒な事になったわね」


ライオの性格も考えて顔見知りになったノエルやフィーナへの接触も考えられるため、カインは2人に指示を出すと対策をたてるのか男性を一緒にこの場を駆け出して行く。


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