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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
お家騒動?
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第171話

「ジークはカインを疑っているようだね」


「まぁ、それだけのものを重ねてきたからな」


ジークの様子に苦笑いを浮かべるエルト。ジークは先ほどのエルトの表情の変化に気が付いていないようでため息を吐くだけである。


「カインの行動は行きすぎたところもあるからね。それでも、真実から目を逸らすのは商人として、どうかと思うよ。ジーク、君は気が付いていながら、気が付かないふりをしているだけじゃないのかい?」


「……」


真っ直ぐとジークを見据えて言うエルト。ジークは彼の真っ直ぐな視線に息を飲んだ。


「私はジークもカインと同じように評価している。できれば、2人にも表舞台に出てきて欲しい」


「そんな過大評価は要らない。俺は小さな村の薬屋で良いんだよ」


エルトはジークを自分が王位を継いだ時にジークにも責任のある場所に立って欲しいようだが、ジークは自分への評価に多少戸惑いながらも首を横に振る。


「まぁ、その答えはわかってたんだけどね。実際、カインもそれを望んではいないし」


「……」


「ジーク、君はおかしいと思った事はないのかい? いくら、この国が今は平和だと言っても、国境では国同士の小競り合いがあり、魔族との争いもある。国内であっても魔物や野盗の脅威に怯えている国民は多い。それなのにどうして君の名前が表に出てこないのは何故だ? 両親が勇者と称えられ、国内外まで名前を轟かせている2人の息子。仮に実力などなくても、引っ張りだしたいと主張する人間は絶対にいるはずなのに、君はどうして、2人の出身地であるジオスの中にいても、その生活を続けられるんだ? 他人の目に触れる事なく、薬屋を続けられるんだ?」


「そ、それは」


ジークも自分の処遇には疑問を抱いていた事もあったようであり、エルトの問いかけに言葉を詰まらせた。


「優秀な君の事だ。本当はずいぶんと昔から答えは出ているんだろう。だから、文句を言いながらも、カインへ手を貸すんだ」


「……何を根拠に言っているんだ?」


「それは簡単だよ。私とカインは同じだから、やっぱり、弟は可愛いんだよ。出来が良かろうと悪かろうとね」


自分の中にある答えを認めたくない部分も多いようでエルトを睨みつけるジーク。エルトはその様子にくすくすと笑うと武術大会が行われている舞台へと視線を移す。


「少なくとも他人に迷惑をかけるかは置いておいて、ライオ様は優秀なんじゃないのか?」


「そうだね。ライオは優秀だ。魔法や政治に関しては、はっきり言うけど、勝てる気はしない」


「それを王位継承権1位の人間が認めるのはどうなんだよ?」


ジークは出来の悪い弟と言う言葉に何か引っかかったようで首を傾げるとエルトの視線は1度、特別席に向けられる。ジークはエルトがライオを見ていると思ったようで少しだけ呆れたようなため息を吐いた。


「必要な事だとは思うよ。自分が他者より劣る部分を認める事が出来ればその部分を誰かが補って貰える。まずはそれに気が付く事が重要なんだ」


「それができれば世の中は平和だろうな」


「確かにそうだね。多くの人間は他者の足を引っ張る事に固執するから」


「まぁ、個人的にはその感覚は良くわからないんだけどな」


エルトは人々の中にある暗い闇の部分に嫌気がさしているようでため息を吐く。しかし、小さな村の中で人の優しさに触れて生きているジークには頭では理解できても実感がないようで首を傾げている。


「ジークはそれで良いと思うよ。きっと、カインもそれを望んでいるから」


「あいつが望んでいる事ね……世界征服とかしそうだよな」


「ジークはどうしてもカインを悪者にしたいみたいだね」


「いや、それはあいつの日頃の行いのせいだから」


エルトとカインの中にある物はジークにはいまいち理解できないようであり。ジークは眉間にしわを寄せるとエルトは苦笑いを浮かべる。


「確かにカインは自分の目的を達するためなら、手段を選ばないところもあるからね。でも、それでは良くない。彼は優秀な人材だ。手放すのは国に取って不利益でしかないから」


「まぁ、優秀なのは認めるけど、そこまで評価できるかがわからないんだけど」


「充分に優秀だよ。言っただろ。手段を選ばないと言う事は切り捨てる事ができると言う事だ。人、物。そして、きっと……自分自身ですら簡単に」


「……自分自身ね」


カインの危うさをエルトは感じ取っており、ジークは彼の言葉をかみしめるようにつぶやくと乱暴に頭をかいた。


「人の必要不必要を決めるのは自分自身ではないんだけどね」


「確かにそうかも知れませんね……そう思うなら、勝手に動き回らないでください。武術大会への参加については何ももう言えませんが、エルト様は特別席にいて貰わないと多くの人間が困るんです」


「……確かにそうだよな」


エルトが苦笑いを浮かべた時、ジークとエルトの背後から息を切らせたレインの声が聞こえ、ジークは彼の声室からレインが怒っている事を理解し、小さく肩を落とした。


「1人でどこかに行かないで下さいと言いましたよね?」


「言ったね。だから、ほら、ここにジークがいるわけだよ」


「そうじゃありません。ジークさんの実力はカインさんからも聞いていますが、何かあった時に一般人のジークさんに責任を取らせるつもりですか!! ジークさんも無茶な事は断ってください!!」


「……正直、そんな重たすぎる責任は取れないな。と言うか、俺は最初から断ってるんだ」


レインはジークの立場を考えてくれと声を上げ、ジークは巻き込まれただけだと無実を訴える。


「エルトさ……」


「とりあえず、少し落ち着いてくれ。流石に大声で名前を言うのは不味いから」


「……確かにそうですね。すいません」


レインはエルトに振り回されるのも限界がきたようで彼の名前を叫ぼうとするが、ジークは会場にエルトがいる事が気付かれては厄介な事になると思ったようでレインの口を塞ぐ。


「エルト様、特別席に戻っていただけますね?」


「そうだね。取りあえずの目的は達したし、レインの言葉に従おう」


「……」


エルトの目的は民衆の事を見て回るより、ジークとの話をする事だったようで、エルトはジークの顔を見てくすりと笑う。その様子にジークは居心地の悪さを感じたのか視線を逸らし、鼻先を指でかく。


「ジーク、私は戻るよ。ジークはもう少しで試合だろう。頑張ってくれ」


「良いのかよ。相手はラースのおっさんだぞ」


「あぁ。かまわないよ。カインには決勝でジークと当たるようにして貰ったから、楽しみにしているよ」


エルトはジークとの対戦を楽しみにしていると言い、レインを連れて行く。


「……エルト様はあの攻撃がカインだって気づいてるだろ。と言うか、あそこから俺は2人に騙されてる気しかしないんだけど」


ジークはこの場所に引っ張り出すためにカインとエルトに一芝居打たれた気しかしないようで眉間にしわを寄せた。


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