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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
お家騒動?
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第162話

「で、ジーク、これはいったいどう言う事だ?」


「……俺は悪くない」


昼食の時間が過ぎ、ジルの店の客足が落ち付いた時、眉間に青筋を浮かべたカインが店に訪れるなり、ジークの胸倉をつかむ。しかし、ジークは既に説明する気力もないように見える。


「カイン、一先ず、落ち着こう」


「そ、そうです。落ち着いて下さい」


カインに遅れてエルトが店のドアを開け、ノエルは慌ててカインを落ち着かせようと彼の腕に抱きつく。


「で、ジーク、いったい、どう言う事でこうなったんだい? ジークの性格上、武術大会のような目立つ事に参加はしないだろう?」


「……ラースっておっさんのわがまま、俺だって好き好んでこんなものに出ようとは思わない」


エルトの仲介でジーク、ノエル、フィーナ、カイン、エルトはジークの部屋に集まり、ジークが武術大会に参加する事になった理由を聞くがジークの答えは1つでしかない。


「そんなもので納得すると思うか? こっちはお前のせいで、発表直前まで言っていたトーナメント表の書き直しと印刷業務が増えたんだぞ?」


「だから、文句なら、あのおっさんとライオに言ってくれ」


「ライオに?」


カインは終わりかけていた仕事が白紙に戻ったようであり、かなり頭に来ているように見えるが、完全に被害者であるジークに取っては自分に言われてもどうしようもない事である。


「あぁ。エルト様、あいつをどうにかしてくれ。勝手に人を護衛にするとか言い始めて、そこにあの脳みそのないおっさんが関わってきて……」


思い出したくもないが、説明しない事にはどうしようもないため、ジークは1つため息を吐くと、朝にライオに再開したところから、武術大会に参加する事になった流れを2人に説明して行く。


「まぁ。ジーク達が護衛に就くのは反対しないんだけど、流石に状況がねえ」


「……」


ジークの説明にエルトは苦笑いを浮かべるが、カインの眉間にはくっきりとしたしわが浮かんでいる。


「俺としてはライオ様の護衛はおっさん以外の騎士とアズさんの私兵団半々くらいでやって欲しいんだけど」


「うーん。そうなんだけどね。どうしても騎士の中には特権階級意識が強いのが居てね。それだと上手く行かない気がするんだよね。現に今、その衝突でカインとアズさんの仕事が溜まってるわけだけだ」


「……本当に騎士団は大丈夫なのか?」


ライオも言っていたが、騎士の中には自分達を特権階級だと思っている者も多いようで、その衝突でカインとアズは仲裁に奔走しており、ジークは騎士団に不安しか感じないようで眉間にしわを寄せた。


「実際、武術大会には思いあがった騎士達を叩きのめして、立場を思い知らせる意味もあるから、ジークが参加してくれるのは良い事なんだけどね。カインに付いて、先行してルッケルにきたんだけど、アズさんの私兵団は良く訓練されてるし、統制も執れている。地震と毒ガス騒ぎで混乱はしたけど、彼女でなければもっと大きな被害になっていたかも知れないし、カインからの提案も直ぐにメリット、デメリットを理解してくれたしね。正直、内政の上手く行っていない他の土地を任せたいくらいだよ」


「アズさん、有能なんだな」


「てんぱっているイメージしかないんだけど」


エルトはかなりアズに高評価を付けているようであるが、ジークとフィーナは普段見ている彼女からは想像できないようで苦笑いを浮かべる。


「しかし、特権意識ね。面倒なもんだな。と言うか、俺が出てくとさらに面倒になるだろ。俺は騎士でも領主の私兵でもない。ただの薬屋だぞ」


「何、武術大会優勝者となれば流石に反対できないよ。アズさんの私兵団は君の実力を認めているし、上手く行くと思うんだけど」


「いや、まずは優勝なんか無理だから、それにそんな無駄な高評価はいらない」


ジークに取っては家名で優越を付ける意味がわからないようで頭をかく。エルトはジークの実力を認めているようだが、ジークはどこか自分の評価を自分で下げるところがあるため、エルトからの評価を否定する。


「そんな事はないとは思うんだ」


「ジーク、俺の仕事を増やしたんだ。あのバカどもに力の差を思い知らせてやれ。家名に力なんてないってな」


「……だから、俺は優勝なんで無理だから、と言うか、そこまで騎士の鼻っ柱を叩き折りたいなら、カイン、お前が出場しろよ」


騎士達の意識開拓のためにも、騎士以外の人間の優勝をカインとエルトは望んでいるように見えるが、ジークはやる気がないばかりではなく、良い事を思いついたと言いたげにカインにも出場するように言う。


「そうね。あんたなら、優勝も狙えるんじゃないの? 認めたくないけど」


「いや、カインは出場できないんだよ。カインはすでに今回、ルッケルに来ている騎士の半数を血祭りにあげているから、そのせいか、変な恨みを抱えているしね。そのせいか、武術大会もカインが出場しないって約束で騎士達を武術大会に参加を約束させたんだから」


「あ、あの。カインさん、血祭りって、いったい、何をしたんですか?」


エルトのカインが出場しない理由にノエルの顔は引きつる。


「家名もないなら、実力で示せと言うから、魔法で騎士団の1部隊を吹き飛ばしただけだ」


「……それはまた」


「あの事件で王都の魔法学園と騎士団は現在、対立関係にあるわけだし。まぁ、ほとんどは家名で優越感を持っている人間の行いのせいなんだけど」


カインは騎士達の言う通り実力を魔法で示した。しかし、彼の実力の示し方には問題があったようであり、王都の中には火種がくすぶっているようである。


「……カイン」


「まぁ、そのおかげで、騎士団以外に魔法の有効性を理解し、魔法兵団を正式に作ろうと検討されているわけだ」


「それは良い事なのか。わかりませんね」


「魔法兵団は国内から魔法学園入学に集められた人間達だからね。割と実力主義だし。競い合えば良い結果にはなると思うよ」


カインが点けた火種は頭の固い人間達を動かす結果になっており、エルトは今の騎士達の意識を変えるには有効だと笑った。


「そんなものかな?」


「今回の武術大会も同じ、騎士でも冒険者でもないジークが優勝は無理でも上位に入り込んでくれるとどれだけ口先で言っても、周りの評価が決まる。ジーク達には悪いけど、庶民にバカにされるのはプライドが許せないだろうからね。だから、ジークとフィーナには頑張って貰わないと」


「へ? 何で、私?」


「いや、2人ねじ込むなら、3人、4人ねじ込むのも変わらないと思ってね」


エルトはラースが取った行動に便乗して何か仕掛けてきたようであり、ジークだけではなくフィーナも武術大会にエントリーさせている。


「カイン、本当にエルト様は脳筋なのか? おかしな知恵が付いてきてないか?」


「……そうかもな」


エルトの言葉にジークは眉間にしわを寄せると、カインは何かあるのか眉間にしわを寄せている。


「まぁ、そう言う事で、ジークとフィーナの活躍を期待しているよ。カイン、時間もないから、戻ろう」


「わかりました」


エルトは目的は達したと思ったようでカインに声をかけると2人はジルの店を出て行く。


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