第16話
小さな村のため、日が落ちると街灯がない村では月明かりを頼りに歩くしかなく、村の中ではまた家々から漏れる明かりがあるが村から少し離れた遺跡に向かっているため、すでに灯りが月明かりとジークが足元を照らすために持ってきたランタンのみである。
「……2人とも足元には気を付けてくれよ」
「わかってるわよ。そう言うジークこそ、足を滑らすとかは止めてよね」
「は、はい。気を付けます!?」
ジークはランタンで足元を照らして歩いているものの3人分の足元を照らすには光度は足りないため、後ろをついて歩いているノエルとフィーナに声をかけるとフィーナは心配が要らないと返事をするがノエルは慌てて返事をしたようで足元にあった石を踏み、バランスを崩し、
「……ノエル、言っているそばから転びそうにならないでくれ」
「す、すいません」
ジークはノエルがバランスを崩した事に気づき手をのばして彼女を支えるとノエルは申し訳なさそうに頭を下げるがフィーナの表情は不機嫌そうに頬を膨らませており、
(……面倒だな)
ジークはシルドにも話した通り、フィーナが自分に好意を寄せているのは気づいているため、彼女の反応に肩を落とすが、彼女の行動に何かを言う権利は自分にはないと思っているため、言いたい言葉を飲み込むと、
「行くよ。遺跡の奥もどうなっているかわからないし、あまり時間も無駄に使うわけにもいかないんだ」
「は、はい。ご迷惑をおかけしています」
ノエルを支えていた手を放すともう1度、先頭に出て足元をランタンで照らしながら歩き始める。
「ねえ。ノエル、暗闇を照らす魔法とかってないの?」
「えーと、魔法はあまり得意ではないので」
「そうなの? それなら、ノエルって前衛? でも、これと言った武器を持ってないよね?」
ジークの後ろを歩いていたフィーナはランタンの灯りでは歩きにくいためかノエルに何か魔法はないかと質問をするとノエルはフィーナの質問に申し訳なさそうに魔法は苦手だと言うとフィーナはノエルの装備が前衛で身体を張って戦うような装備ではないため、首を傾げるとノエルは居心地が悪そうに肩をすくめ、
「……俺はここまでノエルが付いてきたから、なるべく考えないようにしていたんだけど、運動神経も『ない』だろ?」
「は? ジーク、何をおかしな事を言ってるのよ? ノエルはドレイクよ。最高種の魔族様よ。それが運動神経がないなんてあるわけがないでしょ」
「あう……あ、あの。フィーナさん、ジークさんの言う通りなんです」
ジークはノエルの様子からあまり考えたくはなかったようだが、どうしても確認しないといけないと思ったようであり、彼女に運動神経に付いてに聞く。
フィーナはありえない質問にバカな事を言うなと言うが、フィーナのその言葉でノエルはさらに居心地が悪そうな表情へと変わって行く。しかし、真実を告げなければジークとフィーナがまたケンカになると思ったようで小さな声でジークの言葉を肯定する。
「はい?」
「……やっぱりな」
「ちょ、ちょっと待って。ノエルはドレイクでしょ? それなのに魔法もダメ、運動神経もないってどう言う事よ? 説明してよ!!」
フィーナはノエルの言葉の意味が理解できないようで首を傾げるがジークは大きくため息を吐き、フィーナは慌ててジークとノエルに聞き返す。