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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
お家騒動?
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第154話

リックの診療所から出ると日は落ちかけており、3人は防具を見るのを翌日にしてジルの店に戻る。

夕飯の時間には少しだけ早いため、ホールのテーブル席にジークは腰をかけた。


「……ライオネットって、もう少しなかったのかよ。慌てたとは言え、そのまま過ぎるだろ」


「ジークさん、どうかしたんですか?」


ジークは診療所で出会った少年ライオネットが偽名を使っていると思ったようで眉間にしわを寄せてつぶやく。ノエルはジークのつぶやきは聞こえなかったものの何かあったのかと思い、彼の顔を覗き込んだ。


「いや、何もないよ」


「そうですか? 何かあったなら、わたしにも話してくださいね」


「ジーク、ノエル、こっちを手伝ってくれるかい? そろそろ、お客さんも帰ってくる頃だからさ」


「は、はい。わかりました」


ジークは苦笑いを浮かべて、首を横に振るとノエルは自分では力になれないと思ったようで少し寂しそうな表情をする。その時、ジルがジークとノエルを呼ぶ。


「状況で考えると俺がキッチンか? ノエルは料理苦手だし」


「あれ? そうなのかい。てっきり、ノエルはフィーナと違って家事は完璧だと思ったんだけどね」


「あー、ノエルは魚や肉の調理が苦手と言うか」


「……血が得意じゃないんです」


ジークは席から立ち上がるとキッチンで料理の下ごしらえを手伝おうとする。ジルはジークの行動に首を傾げ、ノエルは申し訳なさそうに視線を伏せた。


「そうなのかい? 菜食主義者ベジタリアンって事は聞いてたけど、そう言う事だったのかい」


「はい」


「となると、ジークがこっちだね。ノエルは酔っ払いの相手を上手く交わせないと思ったから、ホールに立たせたくなかったんだけどね」


ジルはホールにノエルを立たせる事が不安なようで小さくため息を吐く。


「ほら、その時は暴力担当のフィーナがいるから」


「誰が、暴力担当よ!!」


ジークはノエルが酔っ払いにからまれた時はフィーナに頑張って貰うと言うが、その言葉には嫌味が混じっており、フィーナは怒りの声をあげる。


「まぁ、下準備が終われば、ジークもホールに出すから、それまで、頑張るんだよ。ノエル」


「は、はい。頑張ります」


ジルはフィーナの事など気にする事もなくノエルに声をかけ、ノエルは大きく頷いた。


「……あのさ。こんなところに来て、大丈夫なのか?」


「大丈夫。大丈夫」


「ジーク、席に案内してくれるかい?」


ジルの店は夕飯時になると宿泊している冒険者達が集まり、ホールがにぎわっているなか、カインとエルトが現れ、ホールの仕事に移ったジークは大きく肩を落とした。


「それで、何にする?」


「ジル、この従業員、態度が悪いよ」


「カイン相手なら何も問題ないよ」


「カイン、お前はここで何をしたんだい」


ジークの態度にカインは冗談交じりでジルに声をかけるが、ジルのカインへ対する扱いも悪く、エルトは苦笑いを浮かべる。


「別に何かをやった記憶はないんですけどね」


「……胡散臭いな。と言うか、2人に聞きたい事があったんだよ」


「ジーク、最近、私への扱いがぞんざいになってきてないかな?」


ジークは診療所で出会った少年の事を2人に聞こうと思ったようで、席に座るとエルトはジークの態度に小さくため息を吐いた。


「いや、こんな場末の冒険者の店に王子様がくるなんて事はあり得ないんだ。下手に敬語を使っても不味いだろ?」


「まぁ、そう言う事にしておくよ。それで聞きたい事とは何だい?」


ジークは状況が状況だから仕方ないと苦笑いを浮かべると、エルトも彼の言い分がわかるようで、ジークの非礼を責めることはない。


「あぁ。昼間にライオネットって奴と出会ったんだけど」


「ライオネット?」


「あぁ……」


ジークはライオネットと名乗った少年の特徴をあげて行くと、エルトは苦笑いを浮かべ、カインは珍しく眉間にしわを寄せている。


「それで、俺の予想では十中八九、ライオ王子だと思うんだけど」


「間違いなく、ライオだね」


「……護衛も付けずに1人で出歩くか?」


ジークはライオネットとライオが同一人物ではないかと言うと、やはり、ジークの予想通りである。


「いや、護衛1人で歩きまわる兄貴の事を考えるとあまり変わらないんじゃないのか?」


「それを言われると少し痛いけど、私はカインの能力を買ってるからね。警護は騎士を付けてくれと言われるんだけど、彼らは腰が重いから、街を歩くときにはカインのような平民出の人間が使いやすい」


ジークはエルトにももう少し自分の身の安全を考えて欲しいと言うが、エルトは状況を多少なりとは考えているようでくすりと笑う。


「まぁ、私の口から、それとなく伝えてみよう。流石に自重して貰わないと危ないからね。ライオはシュミットを疑っていないはずだから、変な事件に巻き込まれても困るし」


「頼む。最終日前にライオ王子が事件に巻き込まれるとかは本当に止めてくれよ。ルッケルがとんでもない事になるからな」


「そこは注意しておく。何かあったら、ライオ様探索を任せるから」


エルトは自分の苦言をライオが聞きいれるか不安がある物の何もしないわけにはいかないため、それとなく伝える事を約束するとカインは笑顔でジークに難問を押し付ける。


「そうならないようにしてくれ」


「気を付けるよ。それでジーク、注文良いかな?」


「あぁ」


ジークはカインの言葉に小さくため息を吐くと2人はメニューを選び終えたようで注文をし、ジークはジルに2人の注文を持って行く。


「しかし、ライオも無茶をするね」


「ライオ様は王都以外に出るのは初めてですから、仕方ないとは思いますが……もう少し考えて欲しい物です。アズ様に話をして優秀な私兵団を数名護衛に付けて頂きましょう」


「そうだな。付けてきた騎士だとライオがみたい物を見落としてしまうだろうからね。と言うか、ジークに頼むのが1番速いと思うんだけど、私との繋がりを考えると難しいしね」


エルトはライオの様子に小さくため息を吐くと臣下の顔になったカインはライオの気持ちもわかるようだが問題になっても困るため、アズに援助要請をする必要があると言う。


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