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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
お家騒動?
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第144話

「って事なんですよ。あいつ、王子様の兄弟ゲンカを見世物にしようとしてるみたいです」


ルッケルから村に戻った翌日、ジークとノエルは頼まれた物を届けにアーカスの家に足を運ぶとアーカスにルッケルで事を話す。


「そうか」


「それだけですか?」


アーカスは相変わらず、興味などないようで空返事をするとジークから渡された荷物を眺めており、ジークはため息を吐く。


「ジークさん、アーカスさんにアズさんの話をしないと」


「あぁ。そうだったな。アーカスさん、アズさんからなんですけど」


「知らん」


「アーカスさん、話くらい、聞いて下さい!?」


ジークとノエルはアズから頼まれた事を伝えようとするが、アーカスは拒絶すると奥の部屋に入って行こうとする。


「って事で、魔導機器をルッケルにいくつか卸して欲しいんですけど」


「私が作ったものはすべてシルドの店に預けてある。欲しかったら、シルドの店に行け。あいつにすべて任せる」


「そ、そうですか? 本当に?」


「あぁ。これでもう用はないな。私は忙しい。さっさと帰れ」


ジークはアーカスを引き止め、アズからの受注の話をするが、アーカスはここには何もないと言い、ジークとノエルを追い出す。


「と言うやり取りがアーカスさんの家であったんです」


「そのやりとりが手に取るようにわかるな。アーカスさんは相変わらずだな」


ジークとノエルはアーカスの家から追い出されるとシルドが経営するジオス唯一の冒険者の店兼宿屋に顔を出し、アーカスの家であったやり取りを話す。それを聞いたシルドはその時の情景が目に浮かんだようで苦笑いを浮かべた。


「あの。シルドさん、それでルッケルとの取引の件なんですけど」


「あぁ。元々、この店に置いてるのは仲介でしかないからな。そんなに売れるもんじゃないし、少し残しておけば良いんじゃないか?」


「か、軽いですね」


「遺跡探索の冒険者も減ってきたしな。そんなに置いておいても売れないしな」


遺跡の秘密に辿りつける冒険者はいないようで、シルドは別にかまわないと言い、あまりの簡単な交渉にノエルは戸惑っている。


「確かに大部、さびれましたね」


「さびれたって言うな。こっちは死活問題なんだからな。まったく、せっかく、遺跡が見つかったと思ったのに何もないんじゃ、客引きにもならない」


「そ、そうですね」


ジークは改めて、店の様子を確認すると先日までにぎわっていた店のホールにはぽつぽつとしか客はおらず、シルドはため息を吐く。ノエルはそんなシルドの様子に遺跡の秘密を知っている事が居たたまれないようで視線を逸らした。


「今はルッケルに人が集まってるから、こんなところに人も来ないでしょうしね」


「ジーク、こんなところって言うのは悲しくならないか? お前のところだって客が減ってきてるだろ?」


「まぁ、少し、それでも、今はルッケル取引を始めたから、それほど困ってないですけど」


ジークも冒険者の客が少なくなってきているのは感じていたようだが、ルッケルとの取引で収入自体は安定しているため、気にしていなかったようである。


「しかし、ルッケルでイベントか? カインもそんな事を考えるなら、村の復興イベントでも考えてくれれば良いのにな」


「いや、あいつに任せるのは危険でしょ。気が付いたらとんでもない事になってそうですよ」


「確かにそれはあるかも知れないな」


シルドはルッケルの復興イベントが少し羨ましいようだが、カインに何かイベントを任せるのは危険な匂いしかしないようでため息を吐く。


「それじゃあ、アーカスさんの魔導機器の取引は問題なしって事で良いですか?」


「あぁ。その代わり仲介料は貰っても良いよな?」


「良いんじゃないですか? 元々、ここで売ってる魔導機器って他の街より相場が安いでしょ。アーカスさん、儲けを出す事を目的にしてないし。それに全部、シルドさんに任せるって言っていたし」


「そうだな。邪魔になった物を卸してくるって感じだしな」


「ほ、本当にアーカスさんは世捨て人なんですね」


シルドはわずかでも収入が欲しいようであり、ジークはアーカスの話からもシルドに一任するとの返事もあったため、投げやり気味に頷く。ノエルは今更ながらアーカスの生き方にどんな反応をして良いのかわからないようである。


「それじゃあ、魔導機器の取引の話は、アズさんの使いの人に言っておきます。明日当たり、正式な使者がくると思いますけど」


「ん。了解」


「ノエル、戻るか?」


「そうですね」


ジークは話も決まったため、ノエルに声をかけると2人で店に戻ろうと立ち上がった。


「あ、そうだ。ジーク、ノエル」


「どうかしましたか?」


「いやな。簡単に帰れなさそうだぞ」


「へ?」


シルドは2人を呼び止めると、店の中に残っているわずかな冒険者達を指差す。ジークとノエルはシルドの指差す方を見ると冒険者達が2人を手招きしている。


「どう言う事?」


「まあ、あれだろ。お前達2人の進展具合を酒の肴にしたいんだろ」


「し、進展具合って、わたしとジークさんはそんな、あの。その……」


ジークは冒険者達に呼ばれる理由がないため、首を傾げるとシルドは楽しそうに笑うがノエルの顔は真っ赤に染まって行き、冒険者達の元に駆け寄ると全力でジークとの関係を否定する。


「ジーク、なんだ。ごちそうさま」


「いや、違うから、何もないから」


しかし、ノエルの反応を見れば彼女がジークに好意を寄せているのは明らかであり、シルドはその様子にニヤニヤと笑う。


「それはそれで男としてどうかと思うんだけどな。1つ同じ屋根の下に住んでいるわけだし」


「俺の事は良いから、だいたい、人の事を言う前に自分の事をどうにかしてくださいよ。ノエル、帰るぞ。変に反応するからからかわれるんだ」


「で、でも、こう言うのはきちんと説明しないと」


「良いから、帰るぞ。あんた達も昼間っから酒飲んでないで、冒険にでも行けよ」


シルドはジークが進展してないとはっきり言った事に大きく肩を落とすが、ジークはシルドに反撃するとノエルの首根っこをつかんで店から出て行く。


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