第140話
「と言う事なんですけど」
「……それがどうした?」
ジーク達はいつも通り、何とか罠をくぐりぬけてアーカスの家に着くとアーカスにエルトとライオの事を相談するが彼の答えは予想していた通りである。
「それがどうしたじゃないくて、何かないですか? 流石に話を聞いちゃうと何かしてあげたいって気にはなるんですけど、ノエルの件もあるし、王都に行くのは不味いですし」
「ジークは目立ちたくないってわがまま言うしね」
ジークはそれでも何かないかと聞き、フィーナはノエルは仕方ないとしてもジークが助けないのはただのわがままだと言い切った。
「まぁ、実際、それに関しては自覚はある。けどな。俺はお前と違って冒険者じゃないんだ。変に騒がれたって嬉しくないんだよ」
「何よ? 別に良いでしょ。それにあんた自身が有名になればこの過疎ってる村だって人が来る可能性もあるでしょ?」
「それが薬屋の仕事だとしたらまだ良いけどな。今回のようなわけのわからない仕事だったら本末転倒だろ。俺は薬屋なんだからな」
ジークは仮に有名になるのなら冒険者ではなく、薬屋として有名になりたいと言い、フィーナは納得がいかないのか眉間にしわを寄せる。
「あの。アーカスさん、やっぱり、いくらこの魔導機器を持っていても王都に行くのは不味いですよね?」
「知らん」
「知らんって、他に言い方ないんですか?」
ノエルはエルトの力になりたいとは思っているが、自分がドレイクである事でエルトを助けられない事がもどかしいのか、アーカスにペンダントにしている魔導機器の効果を聞く。
しかし、アーカスはそんな事になど興味がないと言い切り、ジークは大きく肩を落とす。
「何度も言わせるな。その魔導機器に関して言えば、効果や範囲はわからん。小僧どもが持ってきた本にも載ってはいないからな。調べたければ自分達で調べろ」
「そんな事を言われたって、どこまで離れたかもわからないし、どうしようもないよな?」
「そうね。あのクズみたいに使い魔でも居れば、確認できるけど」
魔術書の解読自体もあまり進んでいないようでアーカスはジーク達を突き放すが、ジーク達には効果範囲外に出た事を知る術がなく、ジークとフィーナは頭を抱える。
「あ、あの。カインさんにわたしがドレイクだと言う事を正直に話してみてはどうでしょうか?」
「却下だ」
「却下ね」
その時、ノエルは何を思ったのか、自分の正体をカインに話してみてはどうかと言い、当然、ジークとフィーナに却下された。
「ダメですか?」
「当たり前だ。危険すぎる」
「そうよ。あのクズの事よ。何をするかわからないわ」
「ふむ……案外、あの性格破綻者に話すのは悪くはないかも知れないな」
ノエルは2人の反応は予想できたようで苦笑いを浮かべて、もう1度、確認を取る。ジークとフィーナの答えは変わらないが、アーカスは何かあるのか小さく頷いた。
「アーカスさん、何を言ってるんですか?」
「そうよ」
「……静かにしろ」
ジークとフィーナはアーカスが何を言っているのかわからないようで声をあげる。アーカスは2人の反応に小さくため息を吐く。
「アーカスさん、あいつに話すのはあり得ません。話したら、どんなむちゃくちゃな事を言ってくるかわかりませんよ」
「そうだろうな。ただ、あの性格破綻者の事だ。小娘がドレイクだろうが、そこに有効性を見出せば、捕縛をして処刑はない」
「……確かに」
アーカスのカインの評価にジークは反論をしようとするが、カインは性格に難はあっても合理的な部分も多い。その点を考えればこのままノエルの事を隠しているよりはメリットも多く、ジークは眉間にしわを寄せた。
「心配なら、王子にも話して小娘を免罪にして貰えば良い。その王子の性格ならば、それくらいは誤魔化せるだろう」
「……そう言われると、いくらでも騙せそうだ」
ジークはアーカスの言葉にエルトの利用価値を見出してきたようで口元は小さく緩み始める。
「ジーク、あのクズと同じ笑い方をしてるわよ」
「そ、そんなわけないだろ!?」
「……慌てると自覚があるように見えるわよ」
フィーナはジークの表情がカインと重なったようで大きく肩を落とすとジークは慌てて否定する。
「あの、ジークさん、それなら」
「……そうだな。少し、話す事も視野に入れてみるか? あいつは信用できないけど、エルト王子は何となく信頼できそうだ」
「あれですね。拳を交わした間だからですね?」
「……いや、ノエル、それはちょっとと言うか、かなり、イヤだ」
ノエルはジークとエルトが拳を交わして得た、信頼関係だと思ったようだが、当の本人であるジークは否定したいようで首を横に振った。
「一先ず、参考になりました。ありがとうございます」
「礼を言われるような事はしていない。それより、小僧」
「はい? あ、試したい事って終わったんですか?」
ジークはアーカスにお礼を言うとアーカスは興味なさそうにジークに向かい魔導銃を投げて渡す。ジークは受け取った魔導銃を眺めるがどこ変わったのかわからないようで首を傾げる。
「……見た目でわかるような事はしていない」
「そうなんですか? なら、試し撃ちしてみればわかるかな?」
「ちょ、ちょっと、ジーク、こっちに銃口を向けないでよ!?」
ジークは魔導銃の性能を確かめたいと思ったようで、口元を緩ませると冗談交じりでフィーナに魔導銃の銃口を向けた。
「まぁ、冗談だけど、出力があがったくらいですよね? 石人形の外装を使ったから、重くはなったけど、この間、出力を上げれるって言っていましたし、これで何度も壊れなくて済むよ。正直、こいつがないと商売あがったりですからね」
「いや、この間、手に入れた魔力の結晶体をカスタマイズしてみただけだ」
ジークは魔導銃を腰のホルダに戻した時、アーカスから魔導銃が予想より性能をあげられている事を知らされる。