第131話
「他に倒す方法はないのかよ。そのお前の卑怯で姑息な頭はそのために!?」
「……口の利き方に気をつけろと何度言えばわかるんだ?」
ジークはカインにもっと安全な方法はないのかと聞こうとして、カインの使い魔の体当たりを喰らって、後方に吹き飛ぶ。
「……性格破綻者、それでポイズンリザードに攻撃ができるんじゃないのか?」
「何を言ってるんですか? 質量的に無理ですよ。それに魔力の塊とは言え、何か、毒液まみれになるのはイヤじゃないですか?」
「……できるのね」
アーカスはジークを吹き飛ばすカインの使い魔の様子に1つの疑問が浮かんだようで眉間にしわを寄せる。アーカスの仮説は正しいのかカインは楽しそうな口調で答え、フィーナは底意地の悪い兄の様子にため息を吐く。
「あ、あの。すいません。良いですか?」
「ノエル、どうかしたの?」
「えーと、どうやら、怒らせてしまったようです」
その時、ノエルは申し訳なさそうな表情で声をかけ、彼女の視線の先にはノエルの攻撃魔法に腹を立て始めたポイズンリザードがこちらを睨みつけている。
「あー、ジーク、出番」
「……選択権はなしだよな」
ジークはふらふらと立ち上がるとすでに自分に選択肢がなくなっている事にぽりぽりと首筋をかく。
「ノエル、魔法の制御はどんな感じ?」
「……自信ないです」
ジークは自分の生存確率をあげたいようでノエルに声をかけるが、彼女はまだ上手く攻撃魔法を制御できていないようで顔には不安の色が見える。
「大丈夫よ。治癒魔法はアーカスさんもノエルも使えるから」
「……フィーナ、お前、背中を押したいなら、普通は俺が魔法を喰らわない方向で言わないか?」
フィーナはジークの背中を押すが、彼女の背中の押し方はおかしく、ジークの不安が拭われる事はない。
「小僧、そろそろ、行かないとまずそうだぞ」
「わかりましたよ。ノエル、任せるぞ」
アーカスにはジークとフィーナが遊んでいるようにしか見えないようで、ジークにポイズンリザードの相手をしてくるように言い、ジークはしぶしぶ頷く。ジークはポイズンリザードの前に出る前にノエルの肩に手を置くと不安げな彼女を励まそうと笑顔を見せた。
「は、はい。頑張ります」
「おう。頑張ってくれ」
ノエルは声を震わせながら返事をするとジークはポイズンリザードの前へ駆け出して行く。
「性格破綻者、今更だが、あの作戦はタイミングが重要だが、小僧と小娘でタイミングが合うのか?」
「あー、きっと、大丈夫でしょ」
「……無責任だな」
アーカスはカインの作戦の穴に気が付くが、カインは気が付いているもののどうにかなると言う。
「無責任も俺はジークを信じているだけですよ」
「その言葉を聞いても小僧はイヤそうな顔しかしない気がするな」
「それ以上に嘘臭い言葉よね」
カインはジークを信じていると言うが、その言葉は酷く胡散臭くフィーナは肩を落とす。
「あ、あの。わたしはいつ、魔法を唱え始めたら良いんでしょうか?」
「……と言うか、詠唱時間とか考えたら、タイミング何か合わせられないでしょ」
ノエルは魔法を放つ、タイミングをどう合わせたらよいのかわからずに不安そうな表情で聞く。フィーナは本当に作戦が上手く行くのかと疑問の声を上げた。
「……小娘、魔力を留めておく方法は小僧に教わっただろ」
「は、はい」
「すぐに準備しろ」
アーカスはノエルにはすでに魔法を直ぐに放つだけの力量があると言い、ノエルは思い出したようで大きく頷くと直ぐに魔法の詠唱に取りかかる。
「後は放つタイミングよね」
「そこはほら、フィーナの仕事、ほら、ジークとポイズンリザードの様子を見る」
「へ?」
ノエルの魔法が準備されて行く様子にフィーナは後はタイミングを合わせる方法を探そうとする。カインは冗談を言いながらも最初からタイミングを取るのはフィーナの仕事だと思っていたようであり、フィーナは予想もしていなかった言葉に間の抜けた声を出す。
「ジークの攻撃のタイミング。この中で感覚でわかるのはお前だけだろ?」
「そう言われるとわかるような気もするけど、いくらなんでも無茶よ。あり得ないわよ」
「それでも、いくらお似合いでも、会って1ヶ月程度のノエルじゃ、わからないだろ。腐れ縁のお前にしかできない仕事だ」
「……いちいち、勘に触る言い方ね」
「俺はタイミングの事をジークに言ってくるから」
驚きの声をあげるフィーナの事など気にする事なく、カインの使い魔はポイズンリザードと対峙しているジークに向かって飛んで行く。
「……タイミング、取れないよ」
ジークはポイズンリザードの攻撃をかわしながら、ノエル達と同じようにタイミングを合わせる方法がない事に気が付いたようで眉間にしわを寄せた。
「もう、毒液を喰らうしかないのかな? なるべく、被害に合わないようにして、フィーナじゃないけど、ノエルの不安定な攻撃魔法より、回復魔法の方が期待できそうだし」
「ジーク、ドМ?」
「……おかしな事を言わないでくれ」
ジークは魔導銃の1丁を腰のホルダに戻すと手に持っている魔導銃の出力を最大まであげ、覚悟を決めた。その時、ジークの覚悟をあざ笑うかのようにカインの使い魔が彼の頭の上に舞い降りる。
「ノエルは魔法の準備は整ってるから、ジークのタイミングで攻撃をしても良いぞ」
「そんな事を言ったって、ノエルじゃ、タイミングを取れないだろ。結局、俺が毒液くらい損じゃないか」
「まぁ、そのタイミングはフィーナが見てくれるから、俺はそれを伝えにきたんだよ」
「……どうして、そんな不安になる事を伝えにくるんだよ。むしろ、俺は止めを刺される気しかしない」
カインから伝えられた言葉はジークの不安をあおるだけでしかなく、彼は大きく肩を落とし不満を口に出す。それでも、すでに覚悟は決まっているようで、自分に向かって大口を開いたポイズンリザードの口の中に魔導銃の照準を合わせると迷う事なく引鉄を引く。
「ノエル」
「はい」
その時、ノエルの杖からはポイズンリザードに向かって魔法が放たれる。
「タイミング、バッチリ?」
「……そうだね」
「おい。どうして、少し残念そうなんだ?」
ジークの魔導銃はポイズンリザードの頭を撃ち抜き、それと同時にポイズンリザードの毒の血液が飛び散り、ジークへ向かってくるがノエルの風の魔法は血液を吹き飛ばす。