第13話
「それで、人前に出る時は角を隠せないかな? と思ってさ。それを隠すだけでもできれば良いと思ってさ」
「角を隠すですか?」
「うん。角はドレイクの象徴だしね。角を隠すだけでもどうにかなると思うんだけど……」
ジークはノエルを人族の村に置くのにカモフラージュのために彼女の2本の角を隠したいと言うが角はドレイクの象徴でもあるため、ジークはノエルが怒るのではないかと少し緊張したように言うと、
「えーと、それなら、折っちゃいましょうか?」
「……」
ノエルは怒るどころかドレイクの象徴である角を簡単に折ると言い始め、想像すらしていなかった言葉にジークは言葉を失ってしまうが、
「そうしましょう。ジークさん、ご飯を食べ終わったら協力してください」
「ちょ、ちょっと待って。今、頭を整理するから」
「どうかしましたか?」
ノエルは角を折る事に抵抗がないようであっさりと言うとジークはどうしたら良いかわからないようで顔を引きつらせるとノエルはジークの表情を見て首を傾げる。
「どうかしたじゃなくてね。あのさ。ドレイクにとって角って大切なんじゃないの? 話では冒険者に角を折られたドレイクは怒りで街を一夜にして滅ぼしたとか聞いた事もあるよ」
「えーと、確かにそう言う人もいますけど、この角って折れても生えますし」
「……はい?」
ノエルに角は大切なものではないかと聞くがノエルはジークの言葉の意味がわからないようで首を傾げるとジークは改めて聞かされた事実が信じられないようで呆気に取られたような表情をすると、
「……えーと、もう1度、今のところを言って貰っても良いかな?」
「ご飯を食べ終わったら協力してください?」
自分の耳を疑ったようでノエルに角が折れた件をもう1度、聞きたいようで確認するとノエルはジークの言葉に首を傾げたまま、もう1度、角を折るのに協力して欲しいと言うが、
「もうちょっと後」
「どうかしました?」
「おしい。もう一声」
「この角って折れても生えますし」
「そこ!!」
「どこですか?」
ジークは聞きたかった言葉ではなく、何度かノエルとの会話を続け、確認したかった言葉で声をあげるがノエルはジークが何に食いついているかわからないようであり、
「つ、角って再生するの?」
「はい。それがどうかしましたか?」
「……いや、さっきも言ったけど怒りで街を滅ぼしたとか、冒険者に角を折られたドレイクとかの噂ってのは多いだろ。それにやっぱり、その角はドレイクの象徴だし、簡単に折って良いものなの?」
ジークはノエルに真相を確かめようと真剣な表情をして聞くがノエルの反応は薄く、ジークはもう1度、角を折られたドレイクが起こした有名な話をする。
「角を折られたドレイクのお話はわたしもいくつか聞いた事がありますけど、角を折った人の武勇を認めてその長さに調節しているドレイクもいますよ。先ほども言いましたけど、わたし達ドレイクは強さには憧れや敬意も持ってますから、もしかしたら、その人達は何か卑怯な事をされて角を折られたのかも知れません」
「そう言う事もあるのか?」
「少なくともわたしの伯父様は人族の方に角を折られた事を誇りに思っていました。良き武人に出会えたと」
「……ドレイクってただの戦闘好きなのか?」
ノエルはジークの話のようなドレイクばかりではないと言うと自分の伯父はその時の話を誇らしげに語ってくれたと言い、ジークは自分が持っていたドレイク像がノエルと話をする事で今日1日で崩れ去っているため大きく肩を落とすと、
「それじゃあ、角を折る事には何の抵抗もないって事で良いのか?」
「はい。問題ないです」
「それじゃあ、夕飯を食べてからだね」
「はい。お願いします」
ジークはもう1度、確認するようにノエルに聞きノエルは笑顔で言い切ると食事を再開させるがジークは何かいろいろと納得が行かないようで眉間にしわを寄せる。