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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動
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第126話

「……否定できない」


「そうだろ。周りが甘やかしすぎるから、俺がその分、厳しくしつけたんだからな」


ジークはフィーナに甘すぎるジオスのお年寄りの様子を思い出したようで眉間にしわを寄せる。その様子にカインは勝ち誇ったように言う。


「……完全に裏目に出てるけどな」


「それに関してはフィーナに人の話を聞く才能がないんだろうな」


「……それに関して言えば兄妹そろってないよ」


ジークは兄妹そろって他人の話を聞かないフィーナとカインが似た兄妹だと言いたいようで大きく肩を落とす。


「何か言ったかい?」


「何も」


「そう、まぁ、お仕置きは鉱山から戻ってきてからにする。あまり、ジークを傷めつけるとこの後が大変だからね」


ジークはカインからの重圧にとぼけるが、その行為は無駄でしかなく、カインにしっかりと聞かれている。


「あの、カインさん、この後が大変ってどう言う事ですか?」


「……性格破綻者、お前、何か隠しているな?」


カインの言葉にノエルは何か感じたようで首を傾げると、タイミング良く、アーカスもこの場所に降りてきている。


「何も隠してないですよ。だいたい、ジークとアーカスさんがいるんですから、リックさんから毒ガスの成分も聞いているんです。この先に何があるかなんて察しが付いているんでしょうし」


「毒ガスの成分?」


カインはジークとアーカスがいるから、自分は何かを言う必要もないと笑う。ジークはカインの口から漏れた言葉から、何かを探そうと眉間にしわを寄せた。


「アーカスさん、毒ガスの成分って何かあるんですか?」


「知らん。私は毒ガスに詳しくなどない」


ノエルはジークが考え込んでいるため、余裕のありそうなアーカスに聞く。しかし、アーカスは毒ガスになどまったく興味がないようで考えるような事もしない。


「毒ガス、毒ガス?」


「ジーク、思い込みは自分の首を絞める事になるよ」


「思い込み? ……マジで?」


カインはジークが考えている事は見当外れだと言う。ジークの頭はそのヒントに1つの答えを導き出したようである。だが、その答えはジークに取ってあまり芳しくないようで顔を引きつらせた。


「ジークさん、何かわかったんですか?」


「いや、ない。それはない。確かに成分は似てるけど、この毒ガスは火山性のものであってあり得ない。だいたい、氷塊あんなものに封じ込められてるくせにあんなに大量の毒ガスなんて出せるわけがない」


ノエルはジークが出した答えが知りたいようで、彼の名前を呼ぶ。ジークはそれどころではないようで首を大きく横に振り、その答えを振り払おうとする。


「……小僧、どんな答えが出たんだ。事実は何が有っても変わらん」


「そ、そうなんですけど、だからと言って」


アーカスは事実だけを伝えろと言う。それでもジークはこの答えを否定したいようで通路の先へと視線を向けた。


「行って置くけど、リック先生から使者に渡された患者の症状から、それが有力だと考えて魔術学院は王宮に正式な討伐隊を組んでのルッケル遠征を計画している。魔術学院の書物にもこの場所に封印されたものの存在が記されているからね。俺は使い魔を飛ばせるし、中を確認するための先遣隊のようなもの」


「先遣隊なら1人でくるなよ!? と言うか、わかってるなら、先に言え!!」


「いや、転送魔法は実家にマーキングしてるしね。まったく、アーカスさんの家にいたなら、村によってくれれば、馬車で俺もルッケルに来れたのに」


カインはジークの希望をあざ笑うかのように事実を伝え、ジークは声を上げた。しかし、カインはジークの反応が面白いのか楽しそうに笑っている。


「……ジーク、何を騒いでるのよ?」


「撤退、フィーナ、戻れ」


フィーナは底に着くとジークの声に呆れ顔で聞くが、ジークはそれどころではないようでフィーナに戻るように言う。


「何を言ってるのよ? 魔導機器が上手く起動してるんでしょ。それなら、結晶化した毒ガスの様子を見てこないと行けないんだから、手早く終わらせて、ジオスに帰るわよ」


「違うんだ。そうじゃないんだ。って、話を聞け!!」


「うるさいわね。早く行くわよ」


「待てって言ってるだろ」


フィーナはジークが何が言いたいのか理解する気はないようで、1人でずかずかと歩き始め、ジークは声を上げるがフィーナはどんどんと先に進み、ジークはフィーナを引き止めようと彼女を追いかけて行く。


「まったく、他人の話を聞かないなんて、誰に似たんだろうね」


「……お前だろうな」


「た、確かに」


カインはフィーナが話を聞かない様子に呆れたような口調で言うが、ノエルは苦笑いを浮かべ、アーカスは眉間にしわを寄せた。


「あの、カインさん、氷塊は毒ガスが噴き出ている場所を閉ざしているんじゃないですか?」


「そうだね。ある意味、毒ガスが噴き出している場所を塞いでいるね。それより、ノエルとアーカスさんは支援型だよね? ここで2人で残っていても良いのかな? 巨大ミミズもいるみたいだし、ジークとフィーナがいない状況で襲われでもしたら大変だよ」


「……そうだな。魔導機器の様子も気になるし、先を急ぐか? 小娘、私は先に行くぞ」


「ま、待ってください。わたしも行きます」


ジークが導き出した真実をカインが知っているのは明白なため、ノエルはカインに毒ガスの原因を聞く。カインはその質問に明確な答えを出す事なく、ジークとフィーナの後を追いかけるように言う。

アーカスはカインの言葉に一理あると思ったようでノエルに先に進むように促すと遅れてジークとフィーナの後を追いかけて行き、ノエルはアーカスの隣に並ぶ。


「さてさて、ジークとフィーナはルッケルの平和を取り戻す事が出来るんでしょうか?」


カインはこの後に起こるであろう出来事に予想が付いているようで楽しそうに笑うと、カインの使い魔は真実を見届けるために4人の後を追いかけて行く。


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