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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動
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第124話

翌日、ジーク達は毒ガスを結晶化する事ができたか確認するために鉱山に入った。ジークとアーカスが書き足した地図の出来は素晴らしく、灯りがあるとは薄暗い鉱山の中でも迷う事なく、目的の場所に向かって進んでいる。


「……ここまでは順調だな?」


「そうですね」


ジークはここまで順調に進んでいる事に何か嫌な感じがしているようで眉間にしわを寄せた。対象的にノエルは純粋に何事もなく進んでいる事が嬉しいのか笑顔を見せる。


「順調って事に何かありそうな気がするのよね」


「フィーナもそう思うか?」


「ええ。昨日までなら、素直に喜んだんでしょうけど、今はルッケルにあのクズがいるから、絶対に何か仕掛けてくるわ」


ジークとシーナはカインがルッケルに来ている事が引っかかっているようであり、フィーナはすでに巨大ミミズの事などどうでも良くなっているのか、時々、真剣な表情をして後ろを振り返り、カインの気配がない事を確認している。


「あ、あの。流石に警戒し過ぎじゃないでしょうか?」


「ノエル、そんな事はない。俺としては作業の邪魔をされないように罠を設置して行きたいくらいだ」


「ジーク、今、良い事を言ったわ!! アーカスさん、家の前にある無駄な罠の1つでも持ってないんですか? むしろ、息の根を止めるくらいの罠を鉱山の中で1人なら事故で処理できるわ」


ジークとフィーナはカインがアズの屋敷に留まっている事は絶対にないと思っているようであり、フィーナにいたってはカインの息の根を止める事まで考えているようで彼女の瞳の奥には怪しい光が宿った。


「……バカな事を言ってないで、歩け」


「そうです」


アーカスは2人が言いたい事もわかるのか眉間にしわを寄せるも、先を急ぐように言い、ノエルは頷く。


「わかってますよ。あれなら、俺達が鉱山の中に居ようと入口をふっ飛ばし、毒ガスを漏れないようにした。鉱山は廃坑だで終わらせそうだからな」


「そうね。生き埋めはごめんよ」


「……性格破綻者を生き埋めにしようとしていた小娘が言うか?」


カインなら鉱山を潰す事など何とも思っていないとジークとフィーナは言い切り、アーカスは先ほどまでの会話もあるのか大きく肩を落とす。


「まぁ、あれを始末する方法はおいおい考えよう。それで、アーカスさん、鉱山内の毒ガスの濃度って下がってるんですかね」


「知らん。それは本職に聞かなければわからん。私はあくまで、魔導機器の実験をしに来ただけであって地質調査は専門外だ」


「専門外? そうよ。あいつが鉱山の中に入る事はないわ。なぜなら、あいつは精霊に好かれるような人間じゃないから」


フィーナは自分達が鉱山の中を歩けるのはアーカスの精霊魔法があるからだと思いだし、カインは精霊魔法を使う事が出来ないのは勝ち誇ったかのように高笑いを上げた。


「まぁ、精霊魔法は使えなくても中の様子くらいは見えるけどね。フィーナ、戻ってきたら、お仕置きだよ」


「ど、どうして、カインさんの声が?」


そんな彼女の様子をあざ笑うかのようにカインの落ち着いた声が聞こえ、フィーナは顔を引きつらせると直ぐに後を振り返る。

しかし、カインの姿はどこにもなく、ノエルは慌てて周囲を見回すと洞窟内では見る事のない小鳥が飛んでいる。


「カインさん?」


「……性格破綻者、使い魔に後を追いかけさせたわけか?」


「そうです。一緒にくるなと言われましたから、使い魔を出しました」


ノエルは小鳥を覗き込んで首を傾げると、アーカスは小鳥がカインの使い魔だと言い、小鳥からはカインの声で彼の言葉を肯定する。


「……この鳥を握りつぶせば」


「フィーナ、言っておくけど、この鳥は俺の魔力でしかないからな。握りつぶそうと何も痛くはない」


フィーナは良からぬ事を考えるが、既にカインにはばれており、小鳥はフィーナをバカにするように彼女の頭の上に降りる。


「くっ、ムカつくわ」


「まぁ、本体がいない分、まだ、マシかな……それで、ここの様子がわかるなら、毒ガスの濃度!?」


フィーナは頭の上にいる小鳥にイライラし始めるとジークは諦めたようでカインに何かを聞こうとした時、小鳥はフィーナの頭の上から飛び上がり、一直線にジークに向かって飛んで行き、くちばしはキレイにジークの額に刺さった。


「口の聞き方には気をつける」


「ジ、ジークさん!? だ、大丈夫ですか? す、直ぐに回復魔法をあれ?」


ジークは額を押さえ、しゃがみ込み。ノエルは慌ててジークに駆け寄ると回復魔法を使おうとするがくちばしが刺さったかのように見えたジークの額はキズ1つなく、ノエルは首を傾げる。


「結局は魔力の塊でしかないから、ダメージは与えられても属性を変換していないんだ。キズはつかないよ」


「そうなんですか?」


「……それでもしっかりと意識は刈り取られそうだったけどな」


カインの説明にノエルは驚きの声をあげるが、ジークはかなりの衝撃だったようでふらふらと立ちあがった。


「口の聞き方を知らないジークが悪いね。それで、ジークがしたいであろう質問の毒ガスの濃度は人体に直ぐに影響が出るとまではいかないけど、昨日、俺がルッケルに到着した時に入口周辺で調べた時よりは下がっているね」


「そうか? それなら、上手く起動していると言う事だな」


カインは自分で中断させたジークの質問内容を推測して返事をする。アーカスはその回答に魔導機器が上手く機能していると思ったようで小さく頷いた。


「まあ、あの魔導機器については後で詳しく聞かせて貰いますけどね」


「断る。行くぞ。進行具合を確認しないといけないからな」


カインはすでに使い魔を鉱山の奥まで送っていたようで、魔導機器の事を聞くがアーカスは短く答えると1人で奥に進もうとする。


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