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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動
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第108話

「魔法、便利ね」


「……その前に降りろ」


「す、すいません。ジークさん!?」


光が消えると魔法は上手く行ったようで、アーカスの家の一室に移動した。しかし、移動魔法になれていなかったジーク、ノエル、フィーナは着地に失敗したようで、倒れたジークの上にノエルとフィーナが乗っかっている。


「……」


ジークは魔導機器が床に落下するのは防いでいたようであり、アーカスはジークに手を伸ばすわけでもなく、彼の腕から魔導機器を取り上げた。


「アーカスさん、どうなってますか?」


「知らん。取りあえずは時間がかかるようだからな。休んでおけ」


ノエルとフィーナがジークから降りると彼は立ち上がり、魔導機器を覗き込む。アーカスは現状では何もわからないと言い、遺跡の研究室からいくつかの正体不明のものを持ってきていたようで、本と見比べる。


「休んでおけって、言われても……」


「取りあえず、アズさんに無事に戻ってきた事を教えないとね」


「そうですね」


アーカスは研究を始め出し、3人は1人でこの家に残っていたアズが気になったようで部屋を出て行く。


「……寝てるな。それもかなりぐっすりと」


「そうね」


「アズさんも、かなり働きづめでしたし」


3人が居間のドアを開けるとアズはソファーの上で小さな寝息を立てており、3人の表情は小さくほころんだ。


「家に戻るか? 流石にもう床では寝たくないし」


「確かに、ゆっくり休みたい気はするわね。でも……帰ると朝から罠を解除しないといけないのよね?」


「……あの、罠をくぐり抜けるのは大変です」


ジークはアズの寝顔に眠気を誘われたようで欠伸をするとアーカスの家で仮眠を取るか各自、家に戻るか意見を聞く。ノエルとフィーナは朝から重労働は避けたいようでげんなりとした様子で肩を落とした。


「とりあえずはここで休憩だな。反応があるかわからないけど、アーカスさんに空き部屋を使って良いか、聞いてくる」


「わかりました」


「疲れたわね」


ジークは頭をかくと居間を出て行き、残されたノエルとフィーナも疲れているようで空いているソファーに腰を下ろす。


「アーカスさん、今日、ここに泊まるんで、空き部屋を貸してください」


「……」


ジークは研究室を覗き込み、アーカスに声をかけるが、予想通り反応はない。


「予想通りか? ん? これって」


「……どうやら、完成したようだな」


「……魔導機器の変化には気づくんだよな」


アーカスの様子にジークは小さくため息を吐く。その時、持って帰ってきた魔導機器の音が止まった事に気づく。アーカスはジークの声は聞こえてなくても魔導機器の変化には気が付いたようであり、ジークは納得がいかないのか眉間にしわを寄せた。


「何だ?」


「何でもないです。それで、できたんですよね……あれ? 色が白いですね」


アーカスはジークに気づき、首を傾げるとジークは苦笑いを浮かべて完成した魔力の結晶体を覗き込んだ。そこには魔導機器を動かすのに使った赤い結晶体とは違い、白い結晶体が光をあげて輝いている。


「失敗ですか?」


「そうじゃない。小娘の魔法の問題だろう」


「ノエルの魔法?」


ジークは実験が失敗したのだと思ったようだが、アーカスはその言葉を否定する。


「今回の魔法は小娘の魔法に小僧が借りた精霊の魔力を上乗せしたものだ」


「そうですね。俺は魔力を集められても発動させる事はできませんから」


「そして、小娘が使ったのは治癒系の魔法だ。その魔力が表に出ただけだろ。そのせいで色が違ってきたんだろう。推測だがな」


「治癒魔法? これで回復とかってできないですかね。できれば、楽になるかも知れないし」


ジークは白い結晶体を警戒する事なく、手に取ると上手く利用できないかと首をひねる。


「魔力の結晶体だからな。逆の工程を行えば、可能だろうな」


「確かに……って、簡単に納得しましたけど、そんな事ができるんですか?」


「魔導機器は魔力の結晶体からエネルギーを抽出して使っているわけだからな。構造は違うが、お前の持っている魔導銃それも同じだ」


アーカスはジークの腰のホルダに収められている魔導銃を指差す。


「それって、これで強力な魔法を放つ事も可能って事ですか?」


「可能だろうな。ただ、現時点ではその分、銃身や使用者にかかる負荷も大きくなるがな」


「……1発で銃身破壊、肩の関節が外れるとか?」


「銃身ごと、腕が吹き飛ぶも考えられる」


「……無茶だな」


ジークは魔導銃で魔法を放つと言う事にわくわくしてきているようであり、目を輝かせるが現実は甘くなく、直ぐに現実に引き戻されたようで眉間にしわを寄せた。


「まぁ、使用者に負荷をかけずにこの中にそれを可能にするものがあるだろう」


「なくても、アーカスさんが作ってくれると信じてますから」


「小僧も世事を言うようになったか?」


ジークはアーカスを立て、アーカスはその言葉に小さく表情を緩める。


「何言ってるんですか? 本心ですよ。これを作った人がどれだけ、優秀な魔道士で研究者でも、アーカスさん以上の人がいるとは思えませんからね。きっと、これ以上のものを作ってくれますし」


「……言っていろ」


「アーカスさん、俺達、今日、ここに泊まりますんで、空き部屋と寝具借りますね。後、ソファーも、流石に、3人と一緒には寝れませんから、アーカスさんも明日はルッケルに行くんですから、休んでくださいよ」


ジークは本心だと言うと照れくさくなったようで、最初に研究室を訪れた理由を言って研究室を出て行く。


「……まったく」


アーカスはジークの閉めたドアを見て、小さくため息を吐くがその表情はいつもの無愛想で無表情な彼とは違って優しげである。


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