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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動
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第107話

「……お前達はやる気があるのか?」


「は、はい。あります」


進む気配のないやり取りにアーカスの眉間のしわは深くなって行き、ノエルは慌てる。


「とりあえず、魔法の発動を送らせるってイメージで魔法を使ってみたらどうだ?」


「そうですね。やってみます」


あまり深く考えてなさそうに言うジーク。ノエルはその言葉に不安そうな表情を見せながらも大きく頷き、気合いを入れるように両手で杖を握り締めた。


「……ジーク、今更だけど、ノエルにできると思う?」


「微妙」


ジークとフィーナはノエル気合いが空回りする気しかしないようであり、眉間にしわを寄せる。


「……ここまでできない奴も珍しいな」


「あ、あう。すいません」


しばらくの間、ノエルは魔力維持を目指して魔法を使っていたのだが、ジークとフィーナの予想通り、上手く魔力を維持する事は出来ない。


「ジーク、あんたがやった方が良いんじゃないの?」


「そうかもな……って、言っても、俺、ルッケルに着いてから、肉も魚も食ってるしな」


フィーナはため息を吐き、ジークは先日のように精霊達の協力を仰ごうと瞳を閉じた。改めて、精霊達の力を借りられるのかと首を傾げる。


「良いから、やりなさい」


「わかってる……」


ジークは身体の中にある酸素を吐き出すと集中し、そばに存在している精霊達の声をかけて行く。


「……ほう」


「わたし、役立たずです」


しばらくすると、ジークの声に精霊達が子与えてくれたようで、ところどころに光の球が浮かび上がり、アーカスは感心したのか声を漏らし、ノエルは自分に価値がないと思ったようで肩を落とす。


「ノエル、役立たずってわけじゃないから、ノエルも精霊の声に耳を傾ければすぐにできるから」


「すいません」


ジークはノエルの様子に苦笑いを浮かべる。ノエルはその言葉に申し訳なさそうに頭を下げる。


「小僧、もう少し精霊達の手を借りられるか?」


「足りないんですか?」


「あぁ」


アーカスはこの程度の協力では足りないと言い切った。


「そうなると、ノエル」


「は、はい」


「ノエル、目を閉じて」


「目、目をですか!?」


ジークはやはりノエルの協力なくして必要な魔力には足りないと思ったようで、彼女との距離を縮める。ノエルは縮んだジークとの距離に何か勘違いしたようで顔を真っ赤にして慌て始める。


「……ノエル、おかしな勘違いしているみたいだけど、魔力を集めるだけだから」


「そ、そうですよね」


ノエルの反応にジークは気恥ずかしくなったようで彼女から視線を逸らし、ノエルは落ち着こうと大きく息を吸い込む。


「……目を閉じて、息を整える」


「はい」


ノエルはジークの指示に従い、魔力の集中を開始する。


「と言うか、何で、魔法を使えるノエルにジークが魔法の使い方を教えてるのよ?」


「……資質の問題だろ。小僧は魔導銃で戦うよりももっと、適した戦い方もあるだろうからな。わざとかどうかは知らんが、両親の戦い方とは別の戦い方を選んでいるように見えるな」


フィーナは2人の様子に大きく肩を落とす。アーカスはジークの中にある歪みを言い当てると魔力が集まってきたため、魔導機器を動かそうとする。


「維持って考えると難しいけど、集まった魔力を空間に置くって感じにならないか?」


「空間に置く? ですか?」


「魔法の発動は誰かを対象にするわけだろ。それをこの辺を狙ってみるとか?」


「この辺ですか?」


ジークの適当なアドバイスはノエルに合っていたようであり、ノエルの目の前には光の球が漂う。


「で、できましたよ。ジークさん」


「そ、そうだな」


ノエルは目の前に浮かぶ、光の球に嬉しさのあまり、ジークに飛び付く。ジークは突然の彼女の行動に顔を赤くし、どうして良いのかわからないようで声が裏返っている。


「……まぁ、これだけあれば充分か?」


「な、何が起きるのよ!?」


アーカスは魔導機器を起動すると浮かび上がっていた光の球が魔導機器に吸い込まれ、大きな音が上がり、フィーナは警戒するように魔導機器とアーカスから距離を取った。


「魔力の結晶化が始まるんだろ」


「そ、そうですね」


ノエルは魔導機器の音で少し冷静になったようでジークから離れる。ジークの顔は彼女と同様に赤いのだが、ノエルの感触が名残惜しいように見える。


「ジーク、鼻の下が伸びてるわよ」


「そんな事はない。そ、それで、アーカスさん、できそう?」


ジークの様子にムッとするフィーナ。ジークは彼女の言葉に何もないと首を横に振り、魔導機器を覗き込んだ。


「少し時間がかかるだろう。時間はどれくらいかかるか、わからんし、戻るか?」


「……運ぶのは俺なんですね」


アーカスは魔力が結晶化できるまでの時間がわからないため、魔導機器を手に持ち、ジークの前に出す。ジークは反論しても無駄だと諦めているようで素直に魔導機器を受け取った。


「戻りますか?」


「そうですね」


「これから戻るの? 面倒ね」


「……おい。お前達はどこに行くつもりだ」


ジーク、ノエル、フィーナは研究室を出て行こうとする。しかし、アーカスは3人の様子に眉間にしわを寄せる。


「どこって、アーカスさんの家に戻るんじゃないの?」


「あぁ。戻るな。魔法で」


「……そんな魔法があるのか? 便利な魔法ってあるんだな」


アーカスが魔法で家に帰ると告げると、その答えは3人の頭になかったようで微妙な空気が流れる。


「歩いて帰りたいなら、好きにしろ。俺は戻るぞ」


「ま、待った。戻ります。連れて行ってください」


「帰るわよ。もう今日は疲れたんだから、歩いて帰りたくないわ」


「……」


アーカスは魔法の詠唱を始め、光がアーカスを包み始める。その様子に3人は慌ててアーカスの近くに移動し、アーカスはその様子に小さく頷く。魔法の対象を拡大したのか最初はアーカスだけを包み始めていた光は4人を包み込んだ。


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