第102話
「……なるほどな」
「アーカスさん、すいません。ちょっと、寄りたいところがあるんで、先に行っててください。ノエル、フィーナ、案内を任せるぞ」
遺跡の奥まで移動し、遺跡内部に灯りが点く様子に感嘆の声を上げた。ジークはノエルとフィーナにアーカスを任せると暗闇に向かって歩き出そうとする。
「ジークさん、どこに行くんですか?」
「この間の石人形の外装を取ってこようと思ってさ。一先ずは魔導銃も直ったけど、万が一の事もあるし、材料になる物は確保しておかないと」
「そう言えば、後で取りに来たいって言ってましたね」
ノエルはそんな彼の行動に首を傾げると、ジークは振り返り、自分の目的を話す。
「石人形か? ……行くか」
「……そっちに興味が湧くのね」
ジークの言葉にアーカスは石人形にも興味が湧いたようでジークの後を吐いて行こうとする。フィーナはアーカスの姿に大きく肩を落とした。
「アーカスさん、こっちにきても何もないですよ。石人形だってコアを取り外したから、動かないはず……動かなかったら良いな」
「……そうですね」
ジークは石人形は破壊されたため、材料を集めに行くだけだと言いかけるがその背後から、地響きのような音が聞こえ、その音はジーク達に向かって近づいてくる。
「……あの石人形って1体だけじゃなかったの?」
「そうみたいだな……参った。ギドもいないし、攻撃する手立てがない」
「そうよね。私の剣じゃ、確実に折れるわ」
「斧借りてたもんな……中には入って来れないだろうし、奥の部屋に行くか?」
石人形と実際に戦闘を行ったジークとフィーナは状況が不利としか思えないようであり、ジークは石人形の外装を諦めようとする。
「あの、アーカスさんは攻撃魔法は使えないんですか?」
「あー、アーカスさんもどっちかと言えば、ノエルと一緒で支援魔法が得意なタイプ。後は弓を使うけど、俺の魔導銃でだってまともにダメージを当てられないんだ。矢は刺さりもしないだろ」
ノエルはアーカスの戦力を確認しようとジークの服を引っ張る。ジークは言いにくそうな表情をすると現在、この4人では石人形にダメージを与えられる戦力はないと首を横に振った。
「そうですか……あの、ジークさん」
「どうした?」
「わたしの気のせいかも知れないんですけど、アーカスさんが音のする方に歩いて行ってるんですけど」
「……マジ?」
ノエルはジークの話に納得したようで、彼の提案の通り、遺跡の奥の部屋に移動しようと考えたのだが、その時にすでにアーカスの姿が暗闇の奥に消えて行こうとしている事に気づく。
「ちょ、ちょっと、アーカスさん、他人の話を聞いてくれよ!? 戻って、石人形の相手をできるほどの戦力はないから」
「……ジーク、今更言うのもなんだけど、それは無理でしょ」
「……それでも言う権利はあるだろ」
ジークはアーカスに戻るように叫ぶ。しかし、アーカスが戻ってくる事が絶対にない事をジークとフィーナは誰よりも知っており、顔を合せて大きく肩を落とす。
「あ、あの。ジークさん、フィーナさん、追いかけなくて良いんですか?」
「追いかけないといけないだろうな……もしかしたら、また、壊れるのかな?」
「出力全開だとぶっ飛ばせたわね」
ジークは直ったばかりの魔導銃を見てため息を吐いた後に3人でアーカスの後を追いかけて行く。
「ほう。こうやって、並んでいるとなかなか圧巻だな」
「あ、圧巻だな。じゃないです。逃げますよ。こんなの勝てるわけがないでしょ」
ジーク達がアーカスに追いつくと彼らの視線の先には5体の石人形が歩を合せて歩いており、ジークはアーカスの腕を引っ張る。
「倒せて2体ね。材料はあるから」
「おい、フィーナ、冗談でもむちゃくちゃな事を言うな!!」
フィーナはジークの魔導銃を最大出力にすれば何とか、2体を撃つ抜けると言うが、ジークに取ってはそんな事はできるわけもない。
「小娘、何を言っている。今回、修理したのはあくまで仮だ。あんな一般的な鉱石でこの前までの最大出力で放てると思うな」
「と言う事は1体ね」
「あの。フィーナさん、どうして、倒す事になっているんですか」
アーカスは修理した魔導銃は以前ほどの威力はないと言い切り、ノエルはいつの間にか石人形と戦う事になっている今の状況に顔を引きつらせる。
「アーカスさん、戻りますよ。石人形は動きが遅いから、追いつかれる事はないんですから」
「とりあえず、あの巨体に質量だ。重心を崩す事が第一だな……小僧、出力は標準で良いな」
「……本気ですか?」
アーカスの頭はすでに5体の石人形を倒す算段を付けているようであり、ジークに指示を出す。しかし、ジークはこの間、やっとの思いで1体を倒したため、勝てるとは思っていない。
「狙うのは右足。小僧の攻撃に合わせてうるさい小娘が剣で薙ぎ払え」
「無理、剣が折れます」
アーカスはジークの事など気にせずにフィーナに指示を出すが、フィーナはジークの魔導銃が壊れるのは良くても自分の剣が折れるのはイヤなようで首を横に振った。
「折れなければ良いのだろ。小娘、うるさい小娘の剣に耐久力をあげる支援魔法を使え」
「へ? 剣に支援魔法ですか?」
「……早くしろ」
「は、はい。わかりました」
アーカスはノエルにも指示を出すと自らも魔法の詠唱に移り、ノエルはアーカスに続くように魔法の詠唱を始め出す。
「……結局、戦うのか?」
「そうみたいね……剣、折れないわよね?」
「……お互いに、武器が無事なら良いな」
その様子に前線に行かなければならない、ジークとフィーナは大きく肩を落とすが、石人形の攻撃は当たる気もないようで心配事はお互いの武器の安否である。
「……取りあえず、魔法が発動するまでの時間でも稼ぐか?」
「そうね。任せるわ」
「あぁ。行ってきたら良いんだろ」
ジークは乗り気ではないが、撤退の2文字がない事は理解できているようでため息を吐くと腰のホルダから魔導銃を抜き取り、投げやり気味に石人形に向かって駆け出して行く。