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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動
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第101話

「私も行きます」


「いや、だからですね」


ジークは遺跡の奥にはアズを連れて行きたくないため、説得を試みるが話は進まない。


「ジーク、時間がないのです。早く、案内をしなさい」


「……参ったな」


「そ、そうですね」


アズはルッケルの状況を好転させるものがあるかも知れないと聞かされ、居ても立ってもいられないようでジーク達に指示を出す。しかし、それはジーク達にとっては好ましくはなく、ジークとノエルは大きく肩を落とす。


「アズさん、考えてください。俺達は遺跡の奥に行ってくるんです。何があるかわからないんですから、領主であるアズさんを連れて行くわけには行きません。それくらい、わかってください」


「別にたい……」


「……フィーナさん、話がややこしくなるから黙っていてください」


ジークは遺跡の秘密は伏せておきたいため、説得を続けている隣でフィーナは余計な事を言いそうになり、ノエルに口を押さえられた。


「小僧、小娘、そろそろ行くぞ」


「アーカスさん」


「何だ? まだ、終わってないのか?」


遺跡へ行く準備を終えたアーカスが現れるとジークに魔導銃を手渡す。だが、ジークはアズの説得を終えていないため、どうしたら良いのかわからないようで眉間にしわを寄せている。


「……まったく、小娘、お前は小僧の言う事も聞けないのか。それなら、この話は無しだ。私は自分の研究に戻る」


「どうしてですか?」


アーカスは一向に進まない話にすでに興味は遺跡の奥より、ジークから預かった本に戻ろうとしているがアズにはその理由がわからない。


「当たり前だ。領主だろうが間違った判断をしている人間の話を聞く理由はない」


「私は領主として間違った選択はしていません」


「自分の意見を押し付けるなら、自分の領地でやったらどうだ? 少なくとも、私も小僧どもも小娘に付き合う理由はない。それもわからないなら、さっさと帰るんだ」


アーカスはアズに従わないといけない人間はこの場所にはいないと言い切り、彼女を突き放す。


「そんなわけには行きません。私には領民を守る義務があります」


「……その守るべき領民を見ずにここで何をする気だ? 小娘、お前に何かあった時にどうするつもりだ? それは無責任ではないか?」


アーカスは年長者らしく、彼女の行動の間違いを指摘する。


「……フィーナ、アーカスさんが責任って言葉を使ってるけど、夢か?」


「ジーク、空耳よ。あんた、ここ最近、まともに寝てないでしょ」


「そうだな……疲れてるんだな。ルッケルに行ってから、1日、2時間くらいしか寝てないしな」


「あ、あの。ジークさん、フィーナさん、その答えもどうかと思うんですけど」


ジークとフィーナはアーカスの口から出た言葉が信じられないよう、現実から目を逸らそうとする。その際に出た言葉はアーカスにとってはかなり失礼であり、ノエルは苦笑いを浮かべた。


「小僧を2時間程度の休憩でこき使っていたわけか? 言い方は悪いが、ルッケルの領民でなければどうなっても良いと言う事だろ」


「そ、それは」


「お前はそんな気はなくても事実はそう言う事だ」


アーカスは周りから聞こえるジーク達の会話を気にする事はなく、話を続けるとアズは自分の間違いに気が付いたようで表情は沈んで行く。


「えーと、アズさんは残ってくれるって事で良いんですかね?」


「……はい。ジーク、ノエル、フィーナ。迷惑をかけてしまい。すいませんでした」


「い、いえ。わたし達は別に」


ジークはアズが納得してくれたと思ったようで胸をなで下ろす。アズは3人に向かって頭を下げた。


「それじゃあ、行きますか? 今の時間なら冒険者ひともいないだろうし」


「……私が言うのも何ですが、こんな時間から行くんですか?」


「まぁ、ちょっと時間も関係あるんですよ」


アズは冷静になったようであり、既に日が落ちて暗闇の中を進むのは危険だとジーク達を心配する。その言葉にジークは少しだけ彼女を騙している事に罪悪感を覚えたようで気まずそうに視線を逸らす。


「そうなんですか?」


「は、はい。そうなんです。今は他の冒険者にも知られてないので色々と貴重なものもありますので内緒にしていてください」


「……」


ノエルは何もないと誤魔化そうとするが、彼女の慌てようにアズは何か引っかかるようで眉間にしわを寄せる。


「……ノエル、何か、私に隠している事はありませんか?」


「な、何もありません」


「……その態度は何かあると言っているようにしか思えないんですが」


ノエルはアズからの追及に逃れるようにジークの背中に隠れてしまう。その行動は逆効果でしかなく、彼女の視線は鋭くなって行く。


「……まぁ、アズさんも落ち着いてください。あまり、遺跡の奥の秘密は教えたくないんです。結構、妖精達が住みこんでて、奥に行くためにその妖精を力づくで排除しようとする人間も出てきますからね。あまり、それは望まないんですよ。妖精達は話が通じると色々と教えてくれますからね」


「そうなんですか? まぁ、確かにそんな話を聞いた事はありますけど」


「そ、そうです」


ジークはノエルに助け船を出すとアズはまだノエルに疑いの視線を向けたままではあるが頷く。ノエルは誤魔化せたと思ったようで胸をなで下ろした。


「それじゃあ、アズさんは留守番って事で良いのよね?」


「はい。ここで待たせていただきます。アーカスさん」


「好きにしろ。小僧ども、行くぞ」


アズが居残りを了承した事で話はまとまり、アーカスは1人で家を出て行く。


「それじゃあ、ちょっと、行ってきます。あー、あんまり、おかしな物を触らないでくださいね。爆発しますから」


「……充分に気をつけます」


ジークはアズにおかしな物を触らないように釘を刺すと3人はアーカスの後を追いかける。


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