第10話
(……まったく、どうして、あの人達は俺をからかう事しか考えないんだよ。確かにノエルはちょっと……いや、かなり、可愛かったけど、会って直ぐにそんな事になるわけがないだろ。それに彼女はドレイクなんだからあり得ないだろ?)
ジークは店に戻る途中でシルド達から言われた事にため息を吐きながらもノエルの顔が頭によぎったようで顔が熱を帯びて行くのに気づくがノエルはドレイクだと思いだして首を振り、自分の考えを振り払い、
(……しかし、どうすりゃ良いんだ? ドレイクだって知れ渡ったら、下手したらうちの村、王都から討伐隊や有名どころの勇者御一行様とかがきて村ごと潰されるぞ。だからと言って、ノエルは村を出てきそうにないし……と言うか説得できる自信がない)
ノエルが村にいる事で考えられる最悪の事態が思い浮かんだようで村から追い出す方法を考えようとするが彼女の泣き顔が目に浮かんだようで自分にはどうしようもできないと思ってしまったようでため息を吐くと、
(……一先ずは目立つあの角を隠す事を考えないといけないよな? あれを隠せばそれなりにごまかせるかも知れないんだけど、どうすれば良いかな?)
ノエルを村から追い出す事より、ドレイクだと隠す事に考えを変えようと考え始め、眉間にしわを寄せながら歩いていると店の前に着き、
「……どうするかな?」
「どうするって何かあったんですか?」
「お帰り、いつまでも遊んでいるんじゃないわよ。早く片づけを手伝いなさいよ」
ため息を吐きながら店のドアを開けるとエプロンをつけたノエルとフィーナがジークを出迎える。
「……何をしているんだ?」
「何って、後片づけに決っているでしょ。おばあちゃんの部屋、物置にはなってなかったけど、ジークの事だから掃除はまともにしてないと思ったら案の定だったからね」
「掃除? フィーナが? ノエル、フィーナは物を壊さなかったか?」
「えーと、だ、大丈夫です。何も壊れてないです」
ジークは2人の様子に眉間にしわを寄せるとフィーナはため息を吐くがジークはフィーナに掃除などできるわけないと思っているようでノエルに聞くとノエルは申し訳無さそうな表情をし、
「……やっぱり、フィーナ、お前はガサツなんだから店の物を触るな。ったく、ばあちゃんの大切にしてたものだってあるんだ。お前に壊されてたまるかよ」
「な、何よ。私だって、少しくらい手伝おうと思ったのに、だいたい、そんな事を言うなら、掃除くらいしておきなさいよ」
「ジ、ジークさん、フィーナさんはわたしのために」
ジークは頭を押さえるとフィーナにおかしな事をするなと言うとフィーナは不満そうな表情をしてジークが悪いと言いだし、2人の間にはピリピリとした空気が漂い始めるとノエルは2人の間に割って入るが、
「ノエル、甘やかすな。だいたい、俺の経験上、こいつに関わるとろくな事がない。悪いけど、片づけは俺1人でやるから、奥に入ってくるな。フィーナ、お前は邪魔だから帰れ。ったく、今日中に遺跡に行って来たかったのに無理じゃないか。余計な事ばかりしやがって」
ジークはシルドの店でからかわれた事もあるせいかイライラしているようで迷惑な行動しかしないフィーナの相手をしたくないようで1人で奥の部屋に入って行く。
「フィ、フィーナさん?」
「……大丈夫よ。慣れているから」
ノエルはフィーナがジークの言葉に眉間にしわを寄せているのを見てフィーナに声をかけるがフィーナは自分の怒りを落ち着かせるために大きく深呼吸をすると、
「私、帰るわ。ノエル、ジークにおかしな事をされそうになったら、全力で攻撃しなさい。消し炭にしてもかまわないわ」
「おかしな事ですか?」
「……良いわ。ノエルのそんな顔を見ていると毒気を抜かれる」
ノエルにジークに襲われそうになったら、躊躇する事なく攻撃しろと言うがノエルは意味がわかってないようで首を傾げており、フィーナはノエルの様子にため息を吐き、
「私は一先ず帰るわ」
「は、はい。今日はお世話になりました」
フィーナは自分の家に帰ると言いノエルはフィーナに頭を下げる。