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第七話 ダンジョン都市マルセラ

「なぁアレナ」


「なんじゃ?」


 森の道を歩きながら俺は口を開く。


「修行するなら、ダンジョン都市に行くのがいいと思う」


「ダンジョン?」


 アレナが首を傾げる。


「……知らないのか?」


「美味しいのそれ?」


「違ぇよ!?」


 天然かこいつ。


「よぉーし、それでは旅の途中のたくま先生レッスン始めます」


「先生!」


「ダンジョンってのは巨大な洞窟みたいなもんだ」


「ほうほう」


「一層から十層まであって、深いほど魔物が強い」


「つまり?」


「魔物の洞窟」


「なるほど!」


 ……本当に分かってるか?


 説明しながら、ふと思う。


 帝国の執事。


 あの髭面。


 正直性格は嫌いだった。


 でも。


 今こうして知識が役立っている。


「……あれはあれで助かったな」


「ん? どうしたのじゃ?」


「いや、なんでもない」


 昔なら。


 帝国を思い出すだけでイラついていた。


 でも今は違う。


 少しだけ。


 心に余裕ができていた。


「噂をすれば、もうすぐだぞ」


「ほんとか!?」


 アレナの耳がピンッと立つ。


「楽しみじゃ!!」


 尻尾が高速で揺れていた。


 しばらく歩いていると。


「おぉ〜?」


 下品な笑い声が聞こえた。


 数人の男たちがこちらへ近づいてくる。


 装備からして冒険者だろう。


「そっちの獣族ちゃん可愛いなぁ」


「こんなダセぇ男より俺らと来ない?」


 ヘラヘラ笑う男たち。


 だが。


「お前らみたいな雑魚とたくまを比べるな」


 アレナが即答した。


「たくまは我の夫だ!」


「……まだ夫じゃないけどな」


 小声で呟く。


 すると。


「うるさいっ!!」


 アレナが耳をピンッと立てた。


 顔真っ赤。


 男たちは呆れたように笑う。


「なんだよ、俺の前でイチャつくなって」


「しかも雑魚だぁ?」


 一人がイラついたように前へ出た。


「俺は銀級冒険者だぞ、このクソアマが!!」


 そう言ってアレナへ殴りかかる。


 だが。


 ガシッ。


 俺は男の腕を掴んでいた。


「……は?」


「やめろ」


 静かに言う。


「女に手出すのはダセぇぞ」


「っ……」


 男は固まった。


 少しして。


「……悪い」


「え?」


「酒飲みすぎてた」


 男は頭を掻く。


「最近女に振られて気が立ってたんだ」


「……」


「悪かったな」


 そう言うと男は人混みへ消えていった。


「なんだったんだあいつ」


「別に悪い人ではなかったのじゃろう」


 アレナがぽつりと言う。


 たぶんそうなんだろう。


 ただ。


 心に余裕がなかっただけだ。


 そして。


「うわ……」


 俺は思わず声を漏らした。


 巨大な城壁。


 大量の人。


 武器屋。


 露店。


 叫び声。


 笑い声。


「ここがダンジョン都市マルセラ……」


「すごいのじゃぁ!!」


 アレナは完全に観光客だった。


 大通りには大量の冒険者が行き交っている。


 重そうな大剣を背負った男。


 杖を持った魔術師。


 獣人。


 エルフ。


 見たこともない種族までいる。


「おぉ! 耳長いぞたくま!!」


「指差すな!!」


「なんじゃあの筋肉!」


「だから指差すなって!」


 完全に田舎から出てきた子供だった。


 でも。


 そんなアレナを見ていると、自然と笑ってしまう。


「まずは冒険者登録だな」


「うむ!」


 俺たちは人混みを抜け、巨大な建物の前へ立つ。


 入口の上には大きくこう書かれていた。


『冒険者ギルド』


「なんか緊張するのじゃ……」


「お前でもそういう感情あるんだな」


「あるわ!!」


 アレナが頬を膨らませる。


 俺は苦笑しながら扉へ手をかけた。


 ギィィッ――。


 扉を開いた瞬間。


「うおっ……」


 酒の匂いと熱気が一気に押し寄せてきた。


 ギルド内は騒がしい。


 笑い声。


 怒鳴り声。


 武器の音。


 いかにも“冒険者の場所”って感じだった。


 そして。


 俺たちへ向けられる大量の視線。


「……獣族?」


「しかもワーウルフか?」


「珍しいな」


 ざわざわと声が聞こえる。


 アレナは少しだけ俺の服を掴んだ。


「大丈夫か?」


「だ、大丈夫じゃ」


 強がっているが耳が少し伏せている。


 ……やっぱり緊張してるな。


「行くぞ」


「うむ」


 俺たちは受付へ向かった。

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