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『夕日に遊ぶ』【2】夕焼けと友

第二話では、美咲の内なる世界と現実が交錯します。夢の中で空を飛んだ体験は、のちに文ちゃんを救う直感へと繋がっていきます。そして新たな登場人物・大野五月。力強さと繊細さをあわせ持つ彼女との出会いは、美咲の世界を大きく広げていきます。この回は、家族と友情、そして未来への伏線が散りばめられた大切なお話です。

【2】夕焼けと友

二人枕を並べて眠りについた。

母との再会と、素敵だった夕焼け空を思い浮かべると、直ぐに夢の世界に入った

美咲は鐘楼の横に立っていた。

境内の木々は風で葉を揺らしている。

夕陽が沈みかけた山々は赤い雲を帽子のように被り、

麓の村の家の灯りを点けさせる、見ていて湧き上がってくる思いが在った。

「夕陽が沈む前に茜の空を飛びたい」「鐘の音と一緒に飛ぶことを想像した」

その時と同じ気持ちが強くなりどうすれば良いか模索した。

手を鳥の翼の様に動かした。

思い切って大きく深呼吸をした。

両手を肩の高さに広げ手の平を下に向け押すように5回ほど上下させた。

体がフワーと浮いた。

一瞬ひるんだが飛びたい気持ちの方が強かった。

同じ動作を続けると段々と上がって行った

両手を肩の高さに伸ばし足を後ろに上げた。

風に乗り前に移動をして行った。

両手を上に向けるとスピードが上がり風を受け飛び始めた。

私は空を飛んでいた意外と落ち着いて下を見た。

右の手を上げると左にカーブする。

夕陽に染まってゆく山々を見ながらゆっくりと飛んだ。

雲の中に入ると夕陽が眩しい。

そこから離れゆっくり飛んだ。

鳥になると言うことは何て素晴らしい事なのだろうと思いながら楽しんでいた。

夕陽が落ちて暗くなり家々の灯りが見えるようになって来た。

不安を感じ始めたので、急ぎ鐘楼の上まで来て両手を下に向けた。

ゆっくり上下させると静かに降りた。

足を下ろして立った。

ホッとして空を見た。

夕陽は山に隠れ山際の雲が赤い帯の様に広がり次第に色あせてゆく。

待っていた星が輝きを増してゆく。

星空を見ていたら目が覚めた。

部屋は暗く、横に母が寝ていた。

美咲は暫く眠れなかったが、いつしか眠りについた。


翌朝「お母さん、空を飛ぶ夢を見たよ」

「空を飛ぶ夢を見るとい良いことが有ると聞いた事があるから、楽しみだね」

「解った」と起きて本堂に行ってご本尊に挨拶をした。

朝食を終えると美咲は胸騒ぎがした、

「文ちゃんが気になるから帰る」

「美咲有難う、文子さんを頼むね」美咲は大きく頷いた。

リックの中に野菜を少しとお菓子を入れてくれた。

バスがきた直ぐ飛び乗った。

白峰駅に着くと走って家に向かった。

「文ちゃんただいま」

「お帰り」小さな声が聞こえた。

文ちゃんは寝ていた。

「文ちゃんどうしたの」

「少し頭が痛くて」

「それだけ手足もしびれている」

「お母さん、文ちゃんが・・・」と電話をした

「美咲、直ぐ119番に電話をして」

「おばあちゃんが病気です、直ぐ来てください」

「了解しました」、10分ほどして救急車が来た

美咲は一緒に乗り病院に行った。

「早く発見できてよかったですね」

「もう少し遅れると後遺症が出る所でした」

『早く帰った、これが良い事』だったと思った。

文ちゃんは美咲の機転で1週間の入院で退院ができた。

『これからもっと文ちゃん大切にしたい』と美咲は思った。


森川美咲の教室は2階にあり席は窓際の後ろに在った。

5月30日転校生が紹介された。

「今日から2年3組に入った大野五月さんです。」

「仲良く一緒に勉強しましょう」

「森川さんの横の座って下さい」

「大野五月です、よろしくお願い致します。」と頭を下げた。

美咲は五月を観察した。

短髪で体格が良い、身長が一七〇cm程、有りそうに思えた。

男の子みたいな感じがした。

皆は近づき難い雰囲気を感じ避けていた。

休憩時間になっても、誰も大野の近くには行かない。

「森川美咲です、よろしく」

声をかけると振り返った。

「大野五月ですよろしく」

声をかけられて驚いて目を大きく開き、五月を見て口元がほころんだ。

歯の白さが印象的だった。

「身長はどれくらい」少しムッとした表情が見えたが直ぐに元の表情に戻った。

「直ぐに伸長の話になるんだね、仕方がないか、172㎝だよ」

「バスケやっているの」

「背が高いと直ぐにバスケと言うけれどテニスをしていたよ」

「友達になってね」とピョコンと頭を下げた。

笑顔が可愛い五月だった。

美咲もニッコリと頷いた、友達になりたいと思い

「お昼の休みにお話しない?」

「いいよ」「グランドの奥に大きな楡の木があるから、そこで待ってるね」五月は頷いた。

お昼の弁当を食べ終わり、五月はグランドの楡の木の向かって歩いていた。

急いでグランドに出た、手を振って走って楡の木に向かった。

楡の木は風でゆらいでいる少し汗をかいた。

「ごめん遅くなって」

「私も今来た所、同じだよ」

木陰のベンチで座わった。

「五月はさっき、北海道と言っていたね、どこ」

「小樽」「小樽は良い所だと文ちゃんが言っていた」

「文ちゃん、誰」

「おばあちゃん、今は二人で暮らしている」

「お母さんは、満願寺の住職、いつか行ってみる?」

「いいよー」

五月の声は明るく通る声だった、ひそひそ話には向かないと思った。

その後は、五月とは廊下で話をする事が多くなった。

大柄の五月だが繊細な神経の持ち主で話をしていても、相手の事を思って話をしてくれる。

『五月とは親友でいた」と思った。

今日の授業が終わったが美咲の陸上の練習が見たくて、ベンチに座り練習を見ていた。

美咲は陸上部でトラックを黙々と走っていた、近くに来た時、五月が声を掛けてきた

「美咲、終わってから話がある」、美咲は手を降って手で丸を作り走っていた。

6時に練習が終わった、着替えを終わり美咲が部室を出ると五月が待っていた。

「お待たせ、用事はなーあに?」

「私は部活はしていない、何かしたらと考えているんだけど」

「陸上、陸上が良いよ、五月が陸上に入ったら、歓迎するよ」

「これから走ってみようよ」

少し嫌がる五月をスタートラインから100mを一緒に走った。

「五月早いねー」

「走りが奇麗だね、陸上向きだよ」

「美咲とだったら一緒にやれそうに思う」

「そう言ってもらえると嬉しいよ、顧問の先生に紹介する」

先生はまだグランドに居た。

「先生、五月が陸上に入ります」

「さつき走るのを見ていたが良い走り方しているから歓迎する」とニッコリと笑った。

二人は帰り道連れだって帰路に着いた。

「明日の土曜日予定ある?」

「午後から美咲の家に来る?」「ああいいよ」

「地図を描くね」リックからメモ用紙を出して簡単に書いた。

「午後2時で良い?」

「有難う、必ず行くから」と五月の明るい声がグランドに響いた。


土曜日の午後は雨が降っていた。

美咲は二階の部屋から小雨に煙る川を見ていた。

川下は小雨に霞んで見え気持ちが沈んでくるのを感じられた。

チャイムが聞こえた、暗い気分が吹っ飛んだ、階段を駆け下りた。

ドアーを開けると、五月が傘の下で手を振っていた。

傘の下から丸い目を細くして美咲を見ていた

「五月、雨が降っているのに、来てくれてありがとう」

「私の部屋は2階なの上がって」笑顔で迎えた。

五月は、瑠璃色のパンツに黄色のセーターに茜色の上着を着ていた。

「失礼致します。」と大きな声で言うと

「五月さんいらっしゃい」と文ちゃんが顔を出した。「お土産を持ってきたので」

「どうぞ」というと五月は手提げからお菓子を出した。

体についている雨をハンカチで拭いてから、上がった。

細かい事に注意をする五月が好きだ。

2階の部屋に案内した、五月は部屋を興味深そうに見ていた。

「アイドルの写真は貼ってないね」

机の写真建てには女性の写真が飾ってあった。

「この人は誰あれー」「お母さん」

下に降りてコーラとお菓子を持って上がった。

二人はお菓子を食べながら他愛のない話が楽しかった。

「お母さんは満願寺の尼さんこの前言ったよね」

「万願寺に泊まりに行こうか」

「お寺で泊まるの? 怖くない?」

「大丈夫だよ」少し考えて

「行っても良いよ」次の土曜日に行くことにした。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

夢の飛翔と現実の出来事が重なり合うことで、美咲は「大切なものを守りたい」という気持ちを強くしました。そして、新しい友・五月との出会いは物語に新しい色を添えていきます。次回は、五月との関わりを通して、満願寺での物語がさらに広がっていきます。どうぞご期待ください。


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