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歪んだ箱庭  作者: パステル
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第二十話 不透明な希望

間隔が空いてしまった〜!

 地上よりも肌寒く湿気った空気が充満する、石造りの通路の奥。

 硬い靴底を鳴らして、誰かが此方へ近づいて来る。


 暫くすると、灯りを持った幼き悪意ーーつい数刻前に私から顎をかち上げられた御令嬢が姿を現すが、すぐに回復魔法を使える者がいたようで顔には痣のひとつもなかったので、罪悪感が薄れた。


「すっかり穢らわしい姿ねぇ…トワイライト様?」


 そう言い放つ彼女は、鮮烈で目に痛い赤のドレスを身に纏っている…が、このドレスを仕立てた針子達は何を考えたのか、スカートの丈は膝丈よりもずっと上で、胸元はギリギリまで開いた扇状的なデザインだったが……そもそも魅せるだけのスタイルではないし、例えスタイルがよかったとしてもあの服は誰が着ようと品のない娼婦のように見える。

 そっと目を閉じて心の中で彼女の年齢を思い出すが…確か、トワイライトと同じ歳の筈だ。

 貴族で未婚の女性の場合、膝を露わにするだけでも直ぐはしたないと言われるのに、何が彼女の貴族令嬢としての常識と美的センスを歪めてしまったのだろうか…


「今の私も、似たようなものなのか…?」


 それに対し私は、奴隷が着させられるようなノースリーブのワンピース一枚に着替えさせられており、ドレスもコルセットもドロワーズすら奪われているので、膝上の短い裾は角度によっては太腿まで見えてしまい色々と隠せていない為、トワイライトの中の常識を知った上でこの格好を自分の意思でしていれば、私と彼女はかなりの変態仲間だった。

 だが更に私には初期装備としての手枷足枷に加え、元から着けていた封魔の首輪には短めの金属の鎖で奥の壁に固定され、薄暗い地下室にある牢獄もどきに押し込められている。


 これでは最早、心を折って服従させる行為か、羞恥心を煽るそういう趣向の行為なのか、深読みしてしまって相手の感情を確認しなければ行動の意図を正常に汲み取れない。


「あんな利用価値の無い調薬士の落ちこぼれ共に誘き寄せられて、簡単に手に入ると思い上がっちゃって。本当にあなたって我慢も苦労も知らない、恵まれた御令嬢なのね?」

「申し訳ないが、それ以上近づかないでくれないかな?キミの撒き散らす負の感情は、この上なく目障りだ」

「まぁ…!この後に及んでまだ強気にいられるだなんて。奇才の頭には敵わないようだわ…」


 鉄格子の向こうの幼き悪意は口角をつり上げ嫌な笑みを浮かべると、壁に備え付けられていたレバーに手を掛ける。


「だからね…私が、あんたを、再教育してあげる!」


 ガコンっと音を立ててレバーが下がると、軋んだ歯車が噛み合い回るような音の後。

 頭上の空間からマナが消失した瞬間、大きな水の塊が生み出され落下してくると、首より上の頭をちょうど包み込むサイズと位置で静止した。


「どうかしら?ねぇ、苦しい?苦しいわよねぇッ?!」

「……」


 一人盛り上がる幼き悪意には大変申し訳ないのだが…ユウガオの頃に試したモノひとつに、酸素の代用品として周囲のマナを摂取するという魔術があり、数十分なら酸素が無かろうと生きられるように封魔の首輪に仕込み刻んである為、この精密な術式も作動した相手が私ならばだが、会話が成立しない事しか弊害は無い。


「これはね、魔法省でも一番優秀な叔父様が作り上げてくださった魔道具。私に楯突く生意気な奴を素直にさせてあげられるのよ?」


 …然し、被害者が他にもいて、これからも増えるというならば…話を聞きがてら苦しむ演技だけでもしてあげよう。


「その水は、鉄格子の奥のそっち側にあるマナが完全に消失するまでずっと残る!つまり、あんたみたいな馬鹿容量の魔力持ちは、苦しんで足掻いてみっともなく私に許しを乞うまで息もできないのぉ!!」


 なるほど。それはとてもいい事を聞けた。

 このまま待っていようともこれ以上の重要な話題も無さそうだし、術式の解読も終えて暇だから、手っ取り早くこの悪趣味な魔道具を壊してしまおう。

 彼女の言った情報が正しければ、マナをこの空間から無くせばいい筈だけど…それよりも、マナを増やしてしまう方がずっと簡単で手っ取り早い。


「なんで…もっと、恐怖に震えなさいよ!」


 魔力放出にバルブがあるとして、しっかりと閉めずにチョロチョロと漏れ出すようにしか出していなかった通常時の魔力量は、本気の三割程度と言ったところ。

 でも今は魔力の放出量の加減を大雑把に増やし、頭上の魔道具の方角へと目一杯注ぎ込む。


 小さな器に大量の水を注げば溢れ返るように、魔道具に仕込まれた術式に一度の許容量を超える魔力が押し込まれ流れればーー形を保っていた脆い器の方が先に、崩壊する。


「キャアアッ!?」

「…はぁ。大袈裟だな」


 案の定、魔道具の術式の回路は魔力暴走を引き起こして、小さな爆発音と共に魔道具の成れの果てが黒煙を上げて落ちて来た。

 魔道具の小さな破片が幼き悪意の足元に向かって幾つか飛んだが、魔力の大半を失った状態から大量のマナを含む水を浴びて若干魔力酔い気味な上で濡れ鼠になっている私よりは、幾分かマシだろう。


「何でよ、これッ…!」


 鉄格子を挟んで真正面でへたり込む幼き悪意は、頭の処理速度が追いつかない現実を見てパニックを起こしているのか、先程から目の焦点が合っていない。


「あんたは……わ、私に!危害を加えた罪人なのよ?!私は、抵抗もしなかった被害者なのに…!」

「キミ程度に反撃を許すような情け深さは持ち合わせていないし、キミは他者を傷付け卑下しては愉悦に浸り自尊心を満たす事しか脳がないの間違いだろう?」

「なっ…!生意気なのよッ!!」


 耳障りな負の感情が聞こえ顔を顰めた瞬間、バシュンっとやけに派手な音を立て、ただでさえ防御力皆無のワンピースを風の刃が所々切り裂いて、トワイライトの白く柔らかな肌に赤い線が走った。


「どうせあんたは、自分だけが特別だと思ってたんでしょッ!!」

「…精霊の加護無しでの、無詠唱か」

「私は努力して、やっと得られた…なのに!認められる筈だったのにッ!!」

「殆ど面識のない私を甚振る為に無詠唱を行使したキミが、賞賛されるべきだとでも?」

「っ…何も、知らないくせにッ!!」


 彼女の激情が吹き荒れるようにして、再び風の刃が私に襲い来る。


「ならば私も、キミに問おう」


 だが、たった()()()()だ。


「全ての者が納得する()()()()()()()()とは、存在するのだろうか?」


 彼女が攻撃魔法だと思い込んでいる風の刃が痕を残した擦り傷は、私の自然治癒力すら相殺できずに、次の瞬間には回復を終えて再生している。


「ばっ、バケモノッ…!」

「答えになっていないけれど…まぁいいや。私の考えでは、恵まれているかどうかは他者が言及し過ぎるモノではないと思う。だって、多くのモノを持っていて恵まれているのなら、その分だけ失い傷付くことも多いのだからね。そしてその痛みを知っていても、大した理由もなく他者に恵まれていてズルいと言う者は、言葉の裏では相手に対し不幸になれと願っているようにも感じる。あと、不幸自慢を延々と展開させるなら喋っていないでその瞬間に出来る事をしてくれば良いと思うし」

「…うるさぁい…!」

「喋る余裕があるなら、地上で証拠隠滅の為にこの地下空間を私達ごと処分しようと動き出したキミの父上に助けを求めたらどうだい?」


 幼き悪意の喉がヒュッと息を呑む音にすら、私は苛立ちを覚えている。


「私は弱者を甚振る輩が嫌いだし、理由もなしに他者を傷付ける趣味は無い。だから私は、キミを無知が故に犯した罪を理解出来ない愚者として見ているが…正直に言って、不愉快以外のなにものでもないんだよ」


 親が子どもを使い潰すサマを考えるだけでも…昔の記憶を想起させるからか、烈火の如き怒りが湧き上がってくる。

 だが既に退路は断たれたのか、空気の流れは私の正面の上方向にある鉄格子の先以外に音が聞こえなくなった。


「早く逃げなくては、たった一人で此処に生き埋めになるよ」


 国王から支給された国の備品である封魔の首輪を壊さないように、壁に繋がった鎖を捻じ切り手枷と足枷は床に叩きつけて金具が緩くなった部分を弄って外した。

 あとは鉄格子の隙間を力任せに広げ通路側に出て、軽い準備運動と脱出の準備を始めながら、幼き悪意に問いかける。


「キミはこのまま、死にたいの?」

「いや、よッ…!私が、なんで…!」


 幼き悪意は恐怖で腰が抜けたのか、通路の壁に背中を預け小刻みに震えて怯えている。


「はぁ…もういいよ」

「いゃ、置いてかないでッ…!」


 無言のまま、転移魔法の魔法陣を足元に展開する。


「やだぁッ…!死にたくない…!」


 転移魔法の術式構築を並行して進めながら、泣き喚く幼き悪意の意識を刈り取って、倒れたその身体へ手を翳して【収納】の中へと入れ、背後に迫ってきた崩落の音から逃れた。



 〜〜〜〜〜



「夜も間近だったのか…」


 次の瞬間、囚われていた地下室があった屋敷の屋根の上へ立っていた私は、夕闇の中から弾き出される太陽の眩しさに目を細める。


「沈むより前に…貴女だって助けを求めていれば、変わっていたかもしれなかった…きっとあの頃の私では、素直に伝えられなかったけれど」


 何処にも、誰にも、自分にすらも。

 矛先を向ける事は許されない、この行き場のない感情を持て余したまま、涙を流さないよう上を向いて誤魔化している。


「季節が何度巡ろうと…私は貴女(ニーナ)を待っているから」


 目に映るもの世界が色褪せて、幸福すら味を感じられなくなったあの日から。



 ***



 襟首を掴まれ、視界が眩い光に塗り潰された、その後。

 お仕着せの上からヴァイオレットの取り出した認識阻害の魔法が付与されたマントを羽織り目深にフードを被って、トワイライトを捕らえているという伯爵邸の敷地内の偵察をしていた。

 そして隣には私と同じく認識阻害のマントに身に纏い、双眼鏡と簡易的な術式解除の魔道具を手にしたヴァイオレットがいる…


「私まで不審者の仲間入りじゃないですかッ!」


 貴族街の煌びやかな邸宅を双眼鏡で覗き込み、もう片方の手には警備用魔道具の無効化が可能な魔道具を所持した二人組。

 認識阻害がなかったら速攻で通報されていただろう。


「僕に従いたくないなら、帰れば?」

「うっ…指示に従えば良いんでしょう?それぐらい楽勝ですよ」


 辺境伯夫人の言葉が真実ならば、今回の騒動には私の両親が巻き込まれている可能性がある。

 あの狡猾なトワイライトが私の両親の冤罪を晴らす為に働き、その結果大人しく捕縛されているというのは信じられないが……起こり得る可能性としては、私や両親に恩を売って手駒にするつもりなのかもしれない。


「私にとってトワイライトの回収作業はついでにする程度。ハイライト様の命令がなければ無視していたところですし、ヴァイオレットはお荷物の私のご心配はせずに、お二人で仲良くお屋敷へと戻って下さい」

「攻撃魔法が使えなくてもお前が自衛できることは知ってる。それに僕とトワと帰らなかったら、お前はこの事件の重要参考人として指名手配された後に屋敷まで連行されるように手配済み」


 見事なまでに吐き出した嫌味はスルーされ、何気なく別行動に誘導しようとすれば先手を打たれていた…!


「本っ当に主人に似て、用意周到なんですね?」

「それほどでもある」

「…嫌味なんですけど」

「結果的に褒め言葉になっているから許してやる」

「はぁ…」


 何を言っても無駄だと分かり、伯爵邸を双眼鏡で覗き込もうとした瞬間。

 地響きが聞こえて足元が微かに揺れ、辺りを照らしていた月光が翳る。


「トワ…ッ?!!」


 ヴァイオレットが伯爵邸の方角を双眼鏡で見て嬉しそうにトワイライトの愛称を呼ぶが、すぐさま視線を逸らしてバランスを崩し、前のめりに地面へ顔からズッコケた。

 起き上がったヴァイオレットは耳まで真っ赤に染まっている。


「なにしてるんですか…」

「…見れば分かるけど、絶対に見るな…!!」

「じゃあ見るので借りますねっ!」


 双眼鏡を奪い返そうと伸ばしてくる手を躱し、さっきヴァイオレットが見ていた方角へピントを合わせて視線を向けると…


「あぁ〜、確かにいますね。変態が屋根の上に一人」

「はぁっ?!お前の目玉は腐り落ちてんのかッ!!」

「揺〜ら〜す〜なぁ〜!」


 私の両肩を掴んで前後に揺らしてくるが、どう見てもアレは露出過多な変態の類だろう。


「猛暑の川遊びの最中ならいざ知らず、真夜中にドロワーズも履かずに布一枚しか着ないとか、変態の所業でしょう」

「そこじゃないだろッ!トワの首輪に短い鎖が付いてたの、見なかったのか!?」

「よくそんな細部まで見えましたね…でも、首輪に注目しただけの割には、耳まで赤くなってますが?」

「〜〜ッ!あっ、あの姿はしょうがないだろっ!!」


 時々ヴァイオレットの中でトワイライトは神格化されているんじゃないかと疑ってしまうが、今の反応も見て考えてみれば、まだ年相応の子どもなんだった。

 言動や能力の高さに騙されそうになるが、異性のトワイライトの身体を見て赤くなるあたりは、まだまだお子様の考え方なようだ。


「ムッツリですね」

「違うッ!断じて僕は変態なんかじゃないッ!」

「では、トワイライトだけが変態なんですね?」

「それはッ、その…刺激的だっていう意見には同意するけど…!」

「勘違いされていそうだから言うけれど、今の服装は自らの意思で着たのではないんだよ…」

「トワッ!?」


 声が聞こえたと同時に、出会った時のように空間が歪みトワイライトが現れたが、そこにヴァイオレットが突進するようにして自身の着ていたマントを纏わせて前を閉じさせていた。


「着ててッ!」

「これだと裾を引き摺ってしまって非常に動きにくいんだが…」

「もう帰るしいいでしょッ!!」

「それは…でも確かに回収も返却も終わった事だし、帰っても問題は無いか……じゃあ、寄りたい場所があるんだが、帰りの道のりは私に任せてもらえるかな?」

「トワが望むなら」

「オーロラも寄り道に付き合ってくれるかな?」


 機嫌を伺うように、私にもトワイライトは声を掛けてくるが。


「どうせ私に拒否権などないのでしょう?」


 本人が望んでの自死も許さずに他人の殺生与奪権を支配するような人間性がトワイライトなのだと、私は知っている。


「従うのは当たり前だろ。ねっ、トワ?」

「…あぁ。そうだったね」


 フルムーンの光を背にしたトワイライトの表情は影になり見えなかったが、見る価値も無いと思い展開された転移の魔法陣の上に乗って、世界が揺らめいた。



 〜〜〜〜〜



 目を開くと、見覚えのない豪華な宿屋のロビーのような場所に、たった一人で立っていた。

 振り返ると出入り口のような両開きの扉があったので開けようとするが、押しても引いてもスライドしようとしても、全く動く気配はない。


「まさか此処は、ダンジョンの内部?」


 ダンジョンの中には人類の建築物にそっくりなモノもあると言うし、此処がダンジョンだと言うならば、鍵の掛かっている様子もないドアがお飾りのダミーだと言われてもすんなりと受け入れられるし、魔物がいない事はまだ此処が浅い階層だからなのかもしれない。

 それにダンジョンには、出入り口となる魔法陣や仕掛けが必ず生成される仕組みとなっている。


「いずれにしても、出口が必ず何処かにあるはずですし…探さないと」


 取り敢えず宿屋にある受付カウンターのような場所へ近づき、この場所の案内図や鍵でもないかと漁ってみるが、それらしいものはとある一角を除けば一際無く、自ずとそこへ目を向ける。

 そこには使用人を呼ぶ時に使うようなベルと、小さな一枚のメモ書きがキートレーの上にあった。


「『夢の館へようこそ。あなたの為のお部屋をご提供します。お代には現実に差し支えの無い範囲での負の感情を』…コレを疑うなと言う方がおかしいと思いますね」

「お姉ちゃんも泊まるの?」

「ーーッ!?」


 背後から急に問い掛けられ、素早くその場から飛び退いて声の聞こえた方へ視線を向けると。


「スッゲェ!かっこいい!!」

「瞬間移動したみたい!」

「二人とも、騒いだらお姉ちゃんが驚いちゃうでしょ!」


 笑顔ではしゃぐ男の子と女の子に、その二人を叱る年長者らしき女の子が、気配も察知させずに其処に居た。


「なっ…!?いつの間に、三人もっ…!」

「さっき来たけど?」

「お姉ちゃんが先にいたから、私たち順番は守るよ!」

「いえ、言いたいのはそう言う事ではなく…」

「もしかしてお姉ちゃんは、初めて来たの?」

「いえ。来たというか、気が付いたら居ただけですけど…」

「お姉ちゃんは迷子なんだね!」

「ぐっふ…!」


 子どもは無邪気な言葉を悪意なくストレートにぶつけてくるから、苦手意識がどうも拭えない。


「だったら俺たちがお手本を見せてあげようぜ!」

「じゃあ私が最初〜!」


 女の子がカウンターへ駆け寄り、ベルを持って鳴らす。

 すると、何も乗っていなかったキートレーの上に鍵が出てきて、女の子は鍵を手にすると走って廊下の奥にある扉を開けて入っていった。


「あーっ!ズルいぞ!」


 男の子もベルを持って鳴らし、キートレーの上に鍵が出てきて手に持つと、同じように通路の奥の扉を開けて入っていく。


「それじゃあ、お姉ちゃんは私達と同じようにしてみて、自分だけの部屋を見つけてね!」


 そして最後に残っていた女の子も、ベルを持って鳴らして出てきた鍵を手に持ったまま通路の奥の扉の先へ行ってしまった。

 だが、去って行った子ども達や他の誰かの気配はすれども、段々と霧がかったように曖昧なものになっていって、不気味な筈なのに…どうしてか穏やかな気持ちの自分もいた。


「…進めば何かしら、分かるはず」


 そっとベルを持って、子ども達がしていたように軽く振って鳴らすと、涼やかな音と共にキートレーの上に銀色でアンティーク調の鍵が出てきたので、手の中に握り締めて通路の奥の扉の前まで歩く。

 鍵穴に鍵をいれ軽く捻ると、鍵は鍵穴に吸い込まれるようにして消えてしまい、代わりに蝶番が音を出して眼前の扉がひとりでに開いていく。


 やがて完全に扉が開かれると、其処はーー懐かしい我が家のリビングで、二人して白衣を着たまま調薬を続けるお父様とお母様が居て…!



「お父様ッ!お母様ッ!」


 気が付けば駆け寄りながら叫んでいて。


「おかえりなさい、オーロラっ…!」

「よく、頑張ったわね…!」


 枯れ果てたと思っていた涙が溢れ出してぐちゃぐちゃになって、そんな私を抱き締めてくれるお父様とお母様も、涙を流したままで、三人で一緒にぎゅうぎゅうと団子になっていて。


「あのねッーー」




 ***



「彼女の舞台には、もう私達は不要だね」

「…どうして、トワが笑うの?」


 三人から放出された幸せの感情を全身に浴び、つい無意識のうちに微笑んでいたようだ。


「本当に…利用しないまま消しちゃうの?」

「大切な人との時間以上に素晴らしいものなど、常世を探せどそうそう無いからね」

「悔しいし認めたく無いけど…トワにとってアイツは、大切な存在に近かったんじゃないの?」

「私にとって大切な存在…?」


 聞き取れた言葉を上手く飲み込めずに言葉をなぞった私の脳裏によぎるのは、今の私よりはやや背が高いが歳の割には小柄な少女。



『ねぇ、ユウガオ…?』


 冷えた夜風が肌を撫でて体温を奪い通り過ぎるが、私の腕の中で身じろぎもせずに段々と息遣いすら緩慢になっていく彼女の温度は、それよりも冷たい。


『アタシの、大切な妹なんだから。もっと自信を持って?それでね…いっぱい幸せに、なって…』

『ーー!』

『えへへ…アタシと、約束だよ……』


 身勝手な彼女の言い分に、私はなんと返したのだったろうか?

 怒りか嘆きか、はたまた彼女のように身勝手なお願いをしていたのか…嗚呼、そうだ。


『こんな世界、間違ってる…』


 大切だと思い知らされ勝ち逃げされたような、決して追い掛けられない後悔の滲んだ感情で心が軋んで欠けたこと。


「『罪人に選択肢は無い。それでも…償うことが叶わなくても…』」


 贖罪すらも、自分の罪悪感を紛らわせる為だけの行い。


「トワッ!感情に飲まれないで!!」

「…ヴィオ?」

「前世の記憶って、今を浪費してまで向き合わないといけない事なの?!」


 無意識下のうちに、何かを口に出していたらしい。

 …でも。


「私という人間は、ヴィオが抱く理想像よりもずっと利己的で薄情だ」


 私が吐き出すその場凌ぎの言葉に、何故かヴィオは過敏に気付く。


「そんな事信じないし、その誤魔化しもいい加減聞き飽きた」


 菫青石の瞳は私の出鱈目を易々と看破し、尚も()()を見てくれる。


「いやいや、本当の事だよ?簡易的な暗示による記憶操作はあくまでも、一時的な負の感情の発生を抑える蓋に過ぎない。つまり、未来の私にとって都合が良くなるように動いただけだ」

「…わかったよ。なら、早く帰って休もう」

「全くもって不満を隠していないよね?」

「それより…次の領内視察には、トワと僕だけで行くんだよね?」

「ヴィオが共に来てくれるのだから、怖いものなどないも同然さ」

「隠さないで、本当の気持ちで喋ってよ…」


 今でも()()()と言っては決まった形の笑顔を浮かべ過ぎて、頬の筋肉は衰えたのに微笑む事だけは得意なままで。


「漸く…お父様とお母様が前に進み始めたんだ。その背中を引き留めてしまっては二人の覚悟を無碍にしてしまうでしょう?」

「自分の子どもに仕事を押し付けて、その間に従順な新しいお人形を見繕うのが()()()()()()なの?」


 心に巣食う病魔のような私はトワイライトを侵食して喰らい尽くし、元の姿形を粗方忘れてしまった。

 だからこれは、私に与えられた責務でーートワが背負うべき罪の償いなんだ。


「…私にはどうしてもやりたい事があって、トワイライトも私にこの身を委ねてくれた。だから誰であろうと、私の邪魔もトワイライトの覚悟に口を挟む権利もないし、私に果たせない使命を押し付ける相手を作ってしまうのも仕方がない事なんだよ」


 軋む口を開いて出てくるのは、想像や妄想の域を飛び出た非現実的な己の有様とその報いを受け流す嘘ばかり。


「私は大丈夫だよ」

「…僕は、そうは思わないから」


 ごめんね、でも。


「思い願うだけじゃ、変わらない」


 法螺、早ク私ニ気ガ付イテ?



 ***



 私、オーロラ・ミルキーウェイの八歳の誕生日が巡ってきた。

 両親は私達精霊族の末裔の本家の血筋で辺境伯様専属の薬剤師。


 とても真似出来ない繊細な調薬の技術と多くの知識を併せ持つ最高の両親で、私が目指していて…いつかは、追い抜きたいとも思ってしまう人生の先輩だ。

 でも私も、この歳にしては多くの才能に恵まれており、周囲からも神童だと持て囃されている。


 なのに、こんなにも幸せなのにーー満ち足りない。


 その事をお父様とお母様に伝えた後、何故か辺境伯様とその御令嬢のトワイライト様とまで引き合わされた。

 最初こそ、圧倒的な美貌と理知的な雰囲気に飲まれて緊張したけれど、話してみればとても気さくで優しい、良い意味で貴族らしくない御方だった。

 現在では夢見が良くなるお香を調合して出してもらっているぐらいには親しい仲で、私もよく自分で作った高品質の液状薬ーーハイポーションをお礼に持って行き、二人きりのお茶会の最中にも薬学についてもよく話し合っては新たな発見を与えて下さる、私の憧れだ。


 でも、何かが胸につっかえる。

 トワイライト様は、本当にあの微笑みを浮かべていただろうか?


 愉快そうにして見守るような笑顔も、良からぬ事を企む悪戯っぽいニヤケ顔も、どこか遠くを見つめて感情を押し殺したような横顔も……今のトワイライト様は見せてくれない。


 なにもない私には、ただひたすらに眩く見えたあの意志が見えないのは、きっと……



「……んぅ…もう、朝…?」


 寝ぼけた頭のまま目を擦り、洗面台で顔を洗った。

 何かとても重要な夢を見ていた気がする…だなんて思いながら、清潔なタオルで顔を拭いた。


 お父様とお母様、それにトワイライト様だって、思い出せないならそのままで大丈夫だと言ってくれている。

 だから不安など感じるはずがないのに…胸騒ぎがしていた。



 〜〜〜〜〜



「いらっしゃい。よく来てくれたね」

「お久し振りです、トワイライト様!」


 ドアノッカーを軽く鳴らすと、いつものようにトワイライト様自らがサロンの扉を開けて出迎えて下さった。


「さぁ、オーロラも座って」

「は、い…?」


 勧められるままいつも通り一人掛けの椅子に座るが、ここで漸く普段と違う違和感の正体に気がつく。

 今日のトワイライト様のヘアスタイルは二つに分けた三つ編みではなく、編み込みが凝ったハーフアップで、服装に関しても普段のような動き易さや機能性重視の軽装ではなく、上から下にいくにつれてより濃く鮮やかな紫になる布地に銀糸で植物のレリーフが裾や袖口周りに施されている洗練されたデザインだった。


「もしかして、この後にお出掛けの予定が?」

「いや、まだ時間に余裕はあるけど…?」


 お互いの頭に疑問符が浮かぶ中、トワイライト様は私の視線の先にあるご自身に気が付いたのか。


「この格好は、私らしくはないかな?」


 ドレスの裾を持って照れたように頬を染めた。


「そんな事はないです!ただ、お召し物も勿論お似合いだと思うんですけど…なんというか、全体的に輝いているような…?」

「輝いて…?魅了系統の魔法は使っていないんだけど……あぁ、そういう事か!」

「何か心当たりでもありましたか?」

「うん、一つだけあったよ」


 そう言ってトワイライト様が取り出したのは小さなガラスのボトルで、透けて見える中身の液体は新緑色だった。


「今日の午後に招かれたお茶会に向けて、侍女達に勧められるがまま着飾ってはみたんだが…成人の儀も迎えていないというのに化粧までするというのはやり過ぎだし、若い肌にも悪いかと思ってね。代わりにこの間精製法を教えてもらったマナポーションを香油に混ぜて試してみたんだ」

「成る程、マナポーションの新たな加工法ですか…参考にさせてもらいます!」

「最も、材料にするオーロラが贈ってくれるような高品質のマナポーションを作るところが、一番苦労したし試行回数も重ねたけれどね。その代わりにとでもいうのか一時的な魔力向上の効果を生み出してくれたから、この後レシピを共有したいんだ」


 いつものように私の知らない魔法を無詠唱でトワイライト様は使い、何も無い空間から書き込まれたノートを二冊取り出した。

 お揃いの二冊のノートは新品のようで装飾に磨かれた魔石が嵌め込まれていて美しかった。


「研究日誌の内容を転写したものだから、使い心地や素直な意見を気軽に書き込んだり修正を入れてくれると助かるよ」

「良いんですか?!あっ…でもそれだと、トワイライト様にメリットが無いですよ?」

「そんなことはないさ。ポーションを理解して既に完璧に近い形で精製できているのはオーロラくらいだし、調薬の技術で言えば未熟なのは私の方だ。だからこれは友人としての個人的なお願いだし、気乗りがしなければ断ってもらっても構わない」

「いいえ!私も両親に比べれば未熟者で…じゃなくって!」

「別に今すぐ答えを出さずとも大丈夫。後で考えてくれたって構わないよ」

「いえ、そうではなくって…持ち帰って両親にも意見を聞いても構わないでしょうか…?」

「本当かい?それこそ願ったり叶ったりだよ!」

「ピャ!?」


 次の瞬間、軽い衝撃が身体の側面にぶつかると視界は薄桃色に染まり、甘い薔薇のような香りが鼻腔を擽っていて。

 一拍遅れてトワイライト様に抱きつかれているのだと気づいた。


「トワイライト様ッ?!近い、近すぎますッ!」

「あっ…と、すまないっ!けれど、嬉しかったんだ…!」


 少しだけ顔と顔の間の距離に隙間ができたと思った時、今まで見てきたどの表情よりも魅力的に、トワイライト様は微笑んで言い放つ。


「だって、着眼点はあればある程、様々な観点からの改善点を発見できるし、より良い品質の代物に仕上げられる!そうなれば消費者達の希望に沿ったものを開発する事も夢じゃないじゃないか!」


 普段よりも饒舌に語り出すトワイライト様の瞳には、微かな希望が垣間見えた気がした。



 ***



 人の群れやそれに帯びる感情の熱も、押し寄せては呆気なく戻っていく波のようなのに、底知れない不気味さも兼ね備えていてーー夜の海を彷彿とさせる。


 第一王子殿下の婚約者候補を選定するお茶会が無事に終わり、精神的に疲労困憊の私は馬場近くの待機室にて壁に背を預けていた。

 王妃様の御実家の生まれで王妃様のお気に入りの令嬢方には皆平等に素っ気なく対応をしつつも、第二王子殿下の派閥で最有力候補の御令嬢との御同席もやんわりと然しハッキリとお断りをして、派閥などには先陣を切って参加出来ないような家格や性格の御令嬢達とは、程良くつかず離れずの距離間で顔見知りになれたし、今のところは概ねヴィオの予測通りに進んでいる。


 あとは屋敷へと帰ればミッションクリアなのだが…先程から、地の底から這い出て来たような暗く重たい渇望を感じ取っている。

 城内ではこういった負の感情は飛び抜けて珍しいという訳では無いのだが、その渇望には混じりっけが一切無く、貴族特有の虚勢や建前に嘘や焦りなどの雑念も無い。


 それにただ欲していると言うよりも、もっと純粋な飢えに近く感じられてーー貴女(ニーナ)と出会う前のユウガオを体現されたような感覚だった。


「…接触する事自体が間違いだとしても、危険分子の存在は確認しておくべきだ」


 誰にとっての危険に繋がるのかは分かり得ないが、それを考えるのは後でも構わないだろう。


「でも、この服装では目立ってしまうし…」



 〜〜〜〜〜



 城の中庭の芝生に座り込んで両耳を塞ぐ、亜麻色の綿毛のような髪で目元まで隠れた少年。

 負の感情に限りなく近い強力な思念波を発している彼こそが、また一歩距離を詰める度にこの身と心を震わす渇望の発生源に違いないと確信して、背後から軽く肩をトンっと叩く。


「ぐッはぁ…ッ!!?」

「あっ…」


 しかし力加減を間違えたか、少年は勢い良く前のめりに転がって茂みに突っ込むと、地面に身体を投げ出してぐったりと倒れたままになる。


「キミっ!大丈夫かい?!」

「……」


 転がっていった少年を茂みから引っ張り出して芝生の上に寝かせるが、瞼は閉ざされたままで息遣いも殆ど感じ取れない。


「まさか…失礼、触るよ」


 今度こそ割れ物に触れるかの如き慎重さで首元に触れて脈を確かめ……小さく安堵の息を吐いた。


「…なんて危うく、脆いんだ…」


 触れただけで簡単に壊れてしまいそうな子どもが、こんなにも怖く感じるとは…



「ぅ、うぅ〜ん…?」

「目が覚めたかい?」

「…お兄ちゃんは?」


 今の私の声は、封魔の首輪へここまでの道中に組み込んだ【変声の術】が作用したお陰もあり普段よりもやや低めの、声変わりを終えた少年ぐらいのハスキーボイスになっており、女性特有の身体の凹凸は男性物に見える黒衣のローブという影としての仕事着を着て誤魔化して、煤を被った髪色は黒く一つに結い直してあるので、トワのマナの色を覚えていない限り私だとは判別はつかないだろう。


「もう日が暮れて風が冷たくなる時間だ。キミの帰路への道案内でもさせてもらおうと思っていたのさ」

「僕に帰る家は…ないよ」

「それは…辛い事を聞いてしまってすまない」


 此処は虚偽の玉座を囲うハリボテの中だが、それでも統一帝国の王城である事には変わりない。

 だけれども、嘘を言っている訳ではなさそうだし、少年の発する渇望の思念波の出力にも一切の乱れは無い。

 何より、碌に瞬きもしない青緑の大きな垂れ気味の瞳には影が差しており、不透明に澱んだ諦めが滲み出ていた。


「お兄ちゃん、優しいんだね」

「…そんな事はないさ」

「ううん。僕を下に見たり無視したりしないから、お兄ちゃんは優しい」


 いつの間にか私の羽織っていた上着の裾を掴んだ少年は、前髪に隠れた青緑の瞳で真っ直ぐに私を見つめ、泣きそうな顔でへにゃりと笑う。


「お兄ちゃんみたいになりたいなぁ…」


 とても切なげに、悲しそうに笑う。


「キミもきっと望んで行動に移せばなれるさ」

「…お兄ちゃんと僕は、違うから」


 少年に帰る家はあっても、そこは少年の望む家ではないのだろう。

 今頃はヴィオが私を探し回っているのだろうが…このまま少年を放置していても衛兵が発見すれば集まってくるだろうし、この状態では騒ぎになる事は間違いないし…どうすればいいのだろう。


「もっと、時間が欲しかったよ…」


 考えれば考えるほど深みにはまっていく沼のような感覚の目の前の惨状に眉を顰めていると、ふらりと少年がゆっくり崩れ落ちるようにして再び倒れ掛ける。


「大丈夫かい?!」


 咄嗟に腕を掴んで抱き止めると同時に、少年のお腹が魔物が唸るように鳴る。


「ぁ……」

「簡素な携帯食で良ければ、食べるかい?」

「ううん!僕が食べても無駄になるから…!」


 黒パンと干し肉でも想像したのか、少年は座ったまま私から離れて震え出す。


「そんなに身体に悪い物では無いんだけれど…」

「僕に食べ物なんてもったいないよ!だって、すぐに戻しちゃうから…本当に、大丈夫だから…」


 そうは言われても、少年は目に見えて衰弱しているようだし、栄養剤を飲んでもらうにしても断られそうだし…


「私は自分のエゴの為に生きる根無草で、名前はトワだ」

「トワ、さん…?」

「私のことは呼び捨てで構わないよ。それじゃあ今度は、キミの名前を聞いても構わないかな?」

「僕の名前…?多分無いよ」

「ふむ…それはなんとも勿体無いな」

「もったいない…?」


 当の本人はイマイチ理解できていないようだが、彼の秘めている渇望の可能性は計り知れない。

 それに…他にやるにはあまりにも惜しい、とも思ってしまった。


 なのでひとまず抱きしめて、と。


「あのっ?!な、なんでッ」

「キミの名前はマラカイトだ。そして今日は私の隠れ家に泊まってもらおうか」

「…えっ!?」

「と言う訳で、おやすみ」


 背中を抱き止め肩口に顔を埋めながら、もう片方の手でマラカイトの頭を撫でる。


「いい夢が見られますように」

「ひゃっ!?」


 この国では寝る前のおまじないとして、親しい間柄の者が厄払いに頬に口づける風習がある。


「お兄ちゃん…?なんで…」

「欲する事は悪ではない」


 昨今では婚約者や夫婦、恋人同士でのやり取りとしての触れ合いとして有名だが、私は本来の厄払いを考えながら沢山の口づけを頬に落とす。


「割り切れないとしても、マラカイトにはこれから先の未来がある」

「でも…僕は、もうすぐ……魔力に蝕まれて…」


『アタシね、魔力が多いからすぐに魔法を暴発させちゃって…その度に、アタシを何かが蝕んでいくのを感じるんだ』


 …嘗ての貴女(ニーナ)も生まれつき魔力過多で、幼い頃から魔力を暴発させては苦しんでいた。


「マラカイトは、魔力過多なんだね」

「ひっぐ…うん…」

「…私なら、マラカイトの運命を変えられる」


 涙の雫を乗せた亜麻色の睫毛がピタリと止まり、孔雀石の瞳が私に希望を向けてくる。


「新たに歩み出すのは、過酷な修羅の道になるだろう。それでもマラカイトは、生かされたいかい?」

「うん。僕は、まだ生きていたい…!」


 澱んでいた青緑の瞳が光を取り戻し、真っ直ぐと私を見据えた。


「トワ。僕の運命を変えて…!」



 数日後、リリック辺境伯家は新たな跡継ぎ候補を養子として迎え入れたと発表する。

 その者の名はマラカイト・リリック。

 亜麻色の綿毛のような髪に、その名の通り孔雀石のような瞳に強い意志が宿った、人族と精霊族のハーフだった。

良ければまた読みに来て下さい。

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