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歪んだ箱庭  作者: パステル
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第十四話 元通りなんて

 私は断じて味音痴では無い。

 ただ単に、食事はそれほど摂取せずとも一週間程度なら飲まず食わずで生きられる生命力を、記憶とともに毎回引き継いでいるからだ。

 そのちょっとした特異体質に気付いた私は、それはもう食に関する時間自体を無駄に感じてしまい、極限まで手抜きを行っていた。

 そういった生活習慣の名残りや原初の私の生活環境から、食べても毒物にならなければ別にいいやという考えが定着し、現在に至る訳だ。


 お客様のいつもの三名と特別ゲストの獣人少女三名がいない場所で、身内三人にそういった理屈を語ってからお茶菓子を作ろうと厨房に入ろうとしたところ。


「残念ですが、世の中では姉上のような技量や味覚をお持ちの人を、味音痴と呼ぶんですよ?」

「トワは調理、駄目〜!!」


 信じていた義弟と悪友に全力で止められた。


「如何して二人は邪魔をするんだい?」

「ここ数日の日程変動によって乱れた占いの結果から。トワに料理はさせないと決めた」

「ヴィオによると、姉上の望まない形でその周囲の者に今日は受難が降り注ぐのだそうです」

「それは私のお茶菓子作りと、関係があるかな?」


 言い返されるとは承知の上で、腰に手をあて余裕を気取るが…


「姉上の料理は効能は良くても、味が人類には適していません」

「トワが作る調理は錬金術に近いし、調理工程で何が起こるかも予測不可能」

「流石にそれは言い過ぎじゃないか?!」

「栄養素と付与される追加効果以外も気にしていたら、少しはマシになるかと…」

「練習の時は基本の材料のままで分量もしっかりと守る。なのに、本番では材料を無駄に高品質だったり上位互換の希少な素材で代用して、隠し味を必ず追加する。その上、屋敷の使用人達に配っても有り余って賞味期限切れ不可避な量を作って、毎回【収納】に入れて保存食にする運命」


 散々な言われようなのだが…事実、今まで体験させてしまった出来事の数々がそうさせているのだろう。


「そこまで言うのなら、今回はやめておく…」

「あとはこのオーロラに、お任せ下さい!」

「あぁ、よろしく頼むね」


 そういった途端、安堵の息を吐きあからさまに気が抜けた様子のマラカイトとヴィオが見え、見返してやりたいという気持ちがむくむくと膨らむ。


「では、いつも通りお茶菓子()オーロラに託すよ」


 別に今すぐ厨房だけで調理を行わなければいけない訳では無いのだし、代打案はまだまだあるさ。



 *****



 お昼休憩で『モフモフ天国』の配信も休憩時間になっている間、一番機材に詳しいるーママから配信者登録に伴い無料で運営から貰えるようになっている簡易型カメラの初期設定を、オーロラさんからいただいたクッキーを齧りながら弄り教わっていた。

 ベリィとダークくんとアトラクトちゃん達は、ぴことなっつんも交えて色々なボードゲームを遊んでいる。

 今はアトラクトちゃんが全員にルールを説明しながら、僕達と同じくクッキーを堪能しつつマンカラを遊んでいるようだった。


「休憩はしないの?」

「「ひゃっ!?」」


 気配無く頭上から降ってきた声に驚いて振り返ると、悪戯っぽく笑ったトワさんに頬をつつかれた。


「ふふっ。二人揃っていい反応だね」


 そう言われて視線をるーママへ向けると、滅多に見れないトワさんの激レアな笑みに見惚れて言葉も出ないようだ。

 普段、画面越しにリスナーとして見ている時とは違うるーママを見れて嬉しい反面、ファンとしての心境からするとるーママのキャラ的なイメージが、冷静沈着でおっとりしたまとめ役から普通の少女へと変わっていって、少し複雑だ…


「ところで。随分と熱中しているようだけど、その玩具は何処で拾って来たんだい?」

「まだ設定保存してなーー」


 言い終えるより先に、トワさんの指先が簡易型カメラのタッチ画面に触れた瞬間。


「あっ…【峰打ち】!」


 トワさんの声が聞こえたとほぼ同時に。


 ーーちゅどーん!!


 視界が真っ白に塗り潰され、妙な浮遊感を味わい……



 〜〜〜〜〜



 トワさんが色々と規格外なのは、前々から知ってはいた。

 でも、幾ら何でも、限度と言うものがあると思う。


「まさか地上に高濃度の瘴気の結晶体があるとは思わなくてね。つい知的好奇心から、分析しようと【鑑定】してしまったんだよ」

「それで、そのついでにお屋敷の一角を吹き飛ばせる?」

「あっはっは。決してわざとでは無いんだけれど、そうなるのかもしれないね?」


 だから、朗らかに笑って誤魔化すトワさんがアトラクトさんに正座させられたまま説教を受けていても、自業自得にしか思えない。

 実際に、さっきトワさんの指先が向いていた二階の出窓があった筈の場所にはなにもなく、通気性が良いどころの騒ぎではなくなっている。


「しかも全員のHPをデスポーン寸前の、残り一割まで削ったと?」

「咄嗟に発動させた【峰打ち】が正常に働いたという事は、私が放った爆破系統の範囲攻撃だと見做されたんだね。死傷者も出なくて本当に良かったよ」


 使用人の皆さんが今も倉庫から往復して持ってきてくれている上品質ポーションを飲んでもらっていなければ、少なくともまだ能力値の弱い僕達三人は今頃、燃焼の持続ダメージで客室にデスポーンしていただろうけど。


「アタシが言いたい事、分かってて茶化してるよね?」

「…私以外が一時的にボンバーヘッドになったのは、誠に申し訳なかった。こればかりは身体の純粋な能力値の差であって、意図して行った訳では「ちっがーうッ!!」…ソフラン達の貴重品を壊してしまって、申し訳ない」


 一応悪いという自覚はあったらしく、深々と頭を下げられた。

 でも、配信直前に僕達のカメラを爆発四散させるのは、悪意が無くても幸先が悪くて流石にへこむ。


「トワちゃんはソフランくん達が配信者デビューしようとしてたタイミングで、最低限必要になる機材を木っ端微塵にさせたんだから、責任を取れるんだよね?」

「アトラクト様。姉上の失態を挽回できる案があるのですが、少々よろしいでしょうか?」


 僕の代わりにトワさんを叱ってくれてるアトラクトちゃんの前に、マラカイトくんが名乗り出る。


「別にアタシ相手にだけ様付けしなくっていいって言ってるのに…それで、この状況をどうやって挽回するつもりなの?」

「いえ、僕には出来ません。ですが姉上ならば、現状を変える事は容易いのではないかと思います」

「…それって、簡易型カメラが直るって意味?それとも代わりの魔道具があるって意味?」

「両方ともですよ。修復に関しては…そうですね。実際に見て頂いた方が分かりやすいのではないかと思いますし、姉上を一時的に解放して頂いても良いでしょうか?」



 *****



「ねぇ、マラカイト?助かったのは確かだが、アトラクト達に後で説明しなければいけない内容が増えたじゃないか…!」


 解放されるなり僕の袖口を引いて部屋の隅に引き寄せると、姉上が拗ねた子どものように責任転嫁をしてくる。


「少しずつ解析してから説明の後に【浄化】すれば良かった危険物を、姉上が魔力操作を見誤って爆破させた所為ですよ?」


 あの場に僕が先に居れば、姉上が【浄化】しても尚、これ程までに濃度の高い瘴気が形を保っていた以上、僕達も同じように【浄化】しようとして今以上の惨劇になっていたのは確実だったろうが。


「うぐっ…まぁ、そうなのだけれどさぁ…」


 最近ではすっかり姉上の関心をアトラクト様が独占しているので、久し振りに自分だけを深紫の瞳に映してくれるだけで、歓喜から震えそうになってしまうが、理性を総動員して感情を押し留める。

 正直異国人の獣人三名が姉上にしだれかかった時は、ドス黒い感情が魔力の流れを乱れさせた。

 だが、少し考えればわかるように、僕の姉上は元から人に限らず無自覚にたらし込んでしまう性質なのだ。


「もう少しぐらい…優しくしてくれても、いいじゃないかぁ…!!」

「…姉上、やめてください」

「へ?」


 現に今も、頬を紅潮させ涙で潤んだ瞳でジッーと見つめながら、訳がわからないといった様子でつま先で立って疑問符を浮かべながら無防備に顔を近付けて、僕の心を掻き回しているのに自覚症状がないのだ。


「お願いですから、魅了系統の魔術は研究したり気軽に行使しないで下さいね」


 熱を帯びた顔面を両手で覆って震える声で訴えながら姉上から距離を取ると、心臓の鼓動音が少し緩やかになった。


「マラカイト、流石に精神支配に関する魔法は危険だし、気軽に放ったりはしないよ…」

「それくらい理解しています、けど…」


 然し僅かとはいえ冷静になった事で、周囲からの視線が集中している事に気付き、また悶える事になる。



 *****



 修復作業に使う精霊魔法は、現在では知識も殆ど失われた古代魔法と呼ばれている。

 なので、普段からダーク達にも見られないように屋敷の修復を私とマラカイトと気分が良い時はヴィオも手伝ってくれるのだが…


「それでは皆様。姉上の華麗な魔力操作をご覧下さい」


 魔法の効果だけを説明しても信じないだろうと言われ、今回の修復作業は七名の観客立ち合いのもと行う事となった。

 華麗な魔力操作だとか言っているが、防御に関する魔法では私を遥かに上回る技量を持つマラカイトが視線を私へ集めさせる。


「私もあまり、手の内を晒したくないのだけれど」

「中途半端が嫌いなトワちゃんなら、完璧に直せるよね?」

「あのね、アトラクトは簡単に完璧に直すなんて言うけれど、私の魔法はそんな出鱈目な奇跡の如きモノではなく、タネも仕掛けもあるから成立する手品に近いんだ。魔術として安定して発動できるように確立した机上論のもと編み出した魔法で、物事の完璧な修復なんて此の世には無いんだと思うんだ」


 出来て当たり前のように尋ねられたので、私が知り得る現実を掻い摘んで語る。


「ふぅん、そうなんだ?」


 だが、アトラクトは興味が無いとばかりに瓦礫の欠片を靴先で蹴った。


「じゃあ、普段から偉そうなトワちゃんにも結局、出来ないんだね〜?」

「【巻き戻し(リワインド)】に対し【効率強化】と【浄化】」


 月並みな煽りの常套句に反応してしまい【魔眼化】を発動させると、吹き抜けになってしまったが元は壁があった付近の空間に対し、精霊魔法三つを同時に進めさせていた。


 すると、屋外まで爆散していた瓦礫の粒が集まってきて段々と塊になっていき、その名の通り爆破により吹き飛んだ部屋が巻き戻されるようにして元の位置へと戻っていく。

 直後に訪れる、気の抜けるような脱力感と倦怠感に辟易とするが、無計画に魔法を発動させたのは私だし、自業自得だ。


「やっぱり、挑発に乗って気軽に魔法なんて使うものじゃないね」


 数十秒もすれば爆破させた簡易型カメラを除き、私の記憶内の光景に忠実な部屋へ修復されていた。


「姉上、お疲れ様です」

「私に出来る事をしただけだよ。でも、労ってくれてありがとうね」


 案の定、呆然と立ち尽くしていた観客の中にいるアトラクトの前に立つ。

 先程ついでに発動させた【浄化】の効果とよく併用している通常の魔法ーーマナを魔力に変換して行使する方ーー【鑑定】の結果で、簡易型カメラの構造は瞬時に理解できていたので、気付かれないように【収納】の中でのエネルギー源を私の魔力を物質化させた結晶に書き換え、再構築した簡易型カメラ改を、ソフランの手の中に渡す事も忘れない。


「どうだったかな?私の扱う魔法は」


 だが、折角派手な演出の後に笑って見せても、誰一人としてフリーズから復帰しない。


「…いやいやいや!絶対おかしいってッ!!」

「あ、復活した」

「こんな魔法、アタシでも見た事ないんだけど?!っていうか、今のって全部魔法っ!?」

「さっきも言ったけれど、正真正銘魔法だ。私のオリジナルではあるけれど」

「えぇっ!?魔法ってオリジナルとかあるんですか?!!」


 今度はソフランが復活したが、何を今更言っているのだろうか?


「古来からの魔法を基盤として、追加効果を私が独自に織り交ぜ編み出した魔法を勝手にオリジナルと呼んだだけで、アトラクトだって最近はよく練習しているじゃないか?」

「それってまさか、もしかして…!」

「まさかも何も【収納】に決まっているだろう?」


 時を司る精霊は滅多に存在しない為、光と闇の二つの属性で代用できると教科書にもしっかりと記載してあるし、読まずに授業を受けられる訳のないアトラクト達四名が気付いていなかった訳があるまいし、どうして白々しい演技をしているのだろうか?


「あり得ないとは思うけれど、アトラクトも普段から精霊…達に力を借りて、古代魔法を行使している事に気付いていなかったの?」

「初耳だよっ?!というか、味覚が迷子以外にトワちゃんの弱点は無いのっ!!?」

「うぐっふ…」


 別に、いつかまた掘り返されるとは分かっていたから、精神的なダメージは負ったが大したことはない。


「才色兼備で物理魔法問わずに最強なトワちゃんとか、料理の腕と甘えっ子時代のネタでしかイジれないじゃん!!」

「ちょっと、アトラクト?!」

「アタシとのスペックの差が激しい!」

「それは生きた年月の差だから!」

「たった十年と少しじゃ、大差ないじゃんっ!」

「それは……違うんだ」

「何が違うの?アタシには何も無いのに、トワちゃんばかり恵まれてるじゃん!」

「…返す言葉もない」


 どう応えれば、これ以上貴女を苦しませずにいられるだろうか?

 その事だけに考えを集中させていた所為で、私達の周囲の空間だけがヴィオの魔力で塗り替えられていく事しか、気付いていなかった。


「こんな違ったら…比較されるだけだよ」

「そのお気持ちは私も、深く理解出来ます」

「…オーロラ?」

「トワお嬢様。少々の間、アトラクト様にお聞きして頂きたい内容があるのですが、よろしいでしょうか?」


 過保護な身内の中でも、特に部外者への殺意が高い傾向にあるオーロラが、静かに涙を溢しながら尋ねてくる。


「…度を過ぎる場合は、容赦無く止めさせるからね」

「ありがとうございます。それでは、私の過去の話ですが…幼少期の私は、トワ様の存在を憎しみの対象だとしか思っておりませんでした」

「オーロラちゃんが、トワちゃんを…?」

「僕が知る限りの話では、オーロラは致死量の劇薬を呷る事により自殺未遂を行い、オブザーバー家の子息であるヴィオに救われたと、記憶にあるのですが?」

「マラカイト様…えぇ、そうですね。ヴィオにも幾度も助けて頂きました。ですがトワ様が真っ先に、その場へ駆けつけてくれたのです。そもそもその時点では分家の子どもである事以外、私とヴィオに接点はありませんでしたし、当時のヴィオはトワ様以外は見えていなかったのですから」

「そして僕が養子に迎え入れられたと同時期に、専属侍女に着任していましたね」

「主人と同い年の専属侍女など異例ですから、お飾りの召使いとマラカイト様にも言われましたが…仕方が無かった事だとは、私も理解しております」


 紅玉のような瞳が零れ落ちてしまいそうになる程涙を溢すオーロラは、立ち尽くすアトラクトの手を繋ぐ。


「トワ様を憎んだ者同士、私もアトラクト様もこの場に居る権利は、本来ならば有りはしないのです」


 そして、全力のアトラクトの抵抗すらものともせずに抱え上げ、自らも含めて【収納】の中へ入って閉じこもった。




「結局、言いたい事はそれだけなのかな?」

「いひゃいッ!ひょわひゃまっ、いひゃいれすっ!!」

「瞬間とは言え、私の編み出した魔法を使って私から逃げられるなど、もう二度と思い上がらない事だね」

「わひゃりまひらっ!!」


 返事を聞き、私の【収納】から両頬を摩るオーロラと目を白黒させるアトラクトを取り出す。


「思い出して欲しい。私が専属侍女に望んだのはオーロラだけで、対等な気心を許せる同性の友達は長い歳月を経ても、オーロラ以外に欲しいとは思わなかったんだ。それだけオーロラは私を形成する大切な存在だ。でも、アトラクトの事も、失いたくないんだ」

「…わかりました。トワお嬢様の唯一の存在であり続けたいです……これからも専属侍女として仕えていいでしょうか…?」

「勿論だ。簡単に逃れられると思わないようにと、いつも言っているだろう?」

「トワお嬢様…!」


 今度は感情を隠さずにしゃくり上げながら泣き出すオーロラを抱き締め、暫く背中をさする。


「そろそろ結界が崩壊するけど…大丈夫?」

「あぁ。結界を張ってくれてありがとう、ヴィオ」

「別に…オーロラに昔つくった借りを返した。だから、これでチャラ」

「ヴィオ、あなたという人は…【範囲指定】をこれだけ使い分けて借りを返しただなんて、本当に魔力の底が知れません…」


 それについては私も薄々ヤバいなぁ、と思っていた。

 ヴィオは現在に至るまでの間、私とオーロラとマラカイトとアトラクトに【思考加速】と【身体強化】を付与し、逆に結界外で室内に居る六名にだけ、精神干渉系統の状態異常付与魔法である【自失】を付与して、私達には擬似的な時間加速空間を与えながらも、その他の対象の体感時間を狂わせ【威圧】を自失状態の六名にのみに触れさせてひれ伏すようにさせていたのだ。

 この様な状況下では、六名は実質的にヴィオの傀儡と化していたと言ったところだろう。


「トワはこれなら、困らない?」

「…うん、ありがとう」


 背後で目まぐるしく変わる状況と現実に戦々恐々としたアトラクトの感情が、ガンガンと打ち付けられてくるが…今回は仕方ないだろう。


「これからもよろしく頼むね」


 感情や思い入れを一切排除しても、心の底からヴィオと敵対していなくてよかったと思うのだが……何故か背後で、コソコソしながら静かに怒りを放つという妙技で、マラカイトが何かを運び出そうとしている。


「トワちゃ〜ん!助けてぇ〜!!」


 それはどうやら、最近過保護にし過ぎて若干増長した挙げ句に、簀巻きにされたアトラクトだった。


「こらっ!マラカイトもこの後、教師役として授業の準備があるだろう!」

「そうじゃなぁ〜いっ!っていうかそれならアタシも生徒だよ〜!」


 正論を言っているように聞こえるが、アトラクトだけを特例に置き換えていた所為で、オーロラだけでなくマラカイトもヴィオも、その身に纏う魔力の色合いからするに、心のガス抜きが出来ない精神状態を強いていたようだ。


「オーロラ。早速で悪いが、マラカイトが暴走しないか見ていてくれるかい?」

「トワお嬢様の望みとあらば、喜んで!」

「だからっ、そうじゃなぁ〜い!!」


 エコ贔屓は良くないと、再認識させられたな。



 *****



 結界を維持していて特に話を聞けていなかったヴィオを主軸とした、アトラクトへの黙秘権の無い質問コーナーが行われて、終わった後。


「ぐげぇえええ〜!!!」

「召喚のスクロールを四つ持ってるって、コイツ…アトラクト様に詰問したついでに聞き出した」


 風属性と地属性の混合魔法では最上位魔法とも言われる【重力操作】で、アトラクトを空中に浮かせながらグルグルと高速回転させるヴィオが、教壇に立った。

 今回は私とマラカイトとオーロラも生徒達の後ろの席にて、ヴィオが凶暴化した事態に備え待機している。

 念の為、マラカイトには隠れて鎮静剤の代わりに手作りのクッキーを渡しておいたので、大丈夫だとは思うのだが…


「ダークとベリィは一つずつ、ソフランとアトラクト様に渡して。残りはこっちで用意しといた召喚魔法のスクロールを使っていいけど、一人一つまでしか用意してないから」

「ギブギブ、ギブ…」


 ダーク、ベリィ、ソフランはポカンと開いた口をそのままにして言われた通りにスクロールの受け渡しを終え、ぴこちゃんとるんるんちゃんとなっつんちゃんも、ヴィオからスクロールを受け取り席に着く。


「それじゃ、なんかいい感じの使い魔候補を数体見つけたら言いに来て。相性とか測定するから」


 非常に分かり難いのだが、私達以外もいる前では今までにないぐらい緊張した様子のヴィオは、必要最低限の説明を言い【収納】からラッピングして渡したクッキーの袋を取り出して、恐る恐る紐を解くと中身のクッキーを見つめーーおそらくだが【鑑定】してーー硬直する。

 きっとヴィオの保持する【鑑定】よりも真実を見抜く事に特化した祝福(ギフト)の【慧眼】も発動しているのだろうが、見える結果は変わる事はない。


「本当に、トワがやった…?」


 私だって、真面目に取り組めば意外とできる子なのだ。

 まぁ、かなりの試行回数を要したが。


「出来栄えはどうかな?昼休憩の最中に焼いたんだけれど、保温効果のある袋に入れていたからまだ温かいと思うんだ」

「…味見役は、無事?」

「専属侍女の私が、全ての味を一番に、焼き立てをあ〜んして頂きました!」


 余計に煽るオーロラすら無視し、視線をクッキーへ戻し再び硬直するヴィオ。

 そしてその様子を見てまたポカンとする六名と、遠心力で気が遠くなって白目を剥くアトラクト。

 因みに先に味見していたオーロラからは、味も栄養素も追加効果も極めて優秀だと言われているし【鑑定】の結果からもクッキーの味の品質はオーロラのクッキーよりも劣るが、食した味によって変わる追加効果の付与により、錬金術により作成された食べ物に分類されるらしいのは少し不服だ。


「あの、ウチ達にも説明とかは…?」

「…もう言った。他の内容については随時説明の機会を設ける」


 午後一番の授業はいつもの三名は勿論の事、特別ゲストの三名も楽しみにしていたと言う、魔法実技の使役についてなのに、ヴィオの感情を読み取れない生徒七名は皆一様に暗い雰囲気だ。


「表情筋が動いていないよ?」

「…うん」

「ヴィオ?」

「いただきます…」


 サクッ、サクッ、サクッ…


「あ、思考を放棄した」

「なんで、美味しい…??」

「姉上、酷いですっ!ヴィオもオーロラも、僕は貰ってないのに狡いですよっ!」

「ご安心下さい。マラカイト様の分は、私が責任を持って全て美味しくいただきましたので!」

「オーロラぁああッ!!」

「大変美味で追加の効能も大変優秀で、この通りマラカイト様の攻撃など掠りもしません!」


 ハチミツ味の【身体強化】を食べたオーロラがマラカイトの周囲に残像を見せて忍者ごっこをしているんだけど…これ、まだ残りが【収納】にあるって言わない方が良いかな?



 *****



 此の仮想現実世界【Egoism and the chaos】の運営会社に雇われた子飼いのネズミーー現在は、ウサギ獣人の少女で企業勢配信者グループ『モフモフ天国』のリーダーぴこは、現状を冷静に分析していた。


 モフ天の残念リーダーと呼ばれるぴこは、あくまでも地道に作り上げてきた表向きの自分の顔であり、パーティーメンバーの二人ですら自分の本来の姿は殆ど知らない。

 前提として、真っ当なホワイトハッカーとしても生活を送れていた彼女が何故、この様な騒がしい表舞台に出てまで間抜けの仮面を被っているかと言うと、理由は単純にして明快。


 此の世界(ゲーム)にすっかり魅入られて誘導されるかのように重度の課金を繰り返し、四六時中没頭してダイブする為電気代も大幅に増えてしまい、世帯主である父親から勘当される寸前なのだった。

 預金残高も残りの額は五桁を切りそうであり、職を手にしない彼女は大いに焦り、なんとかその場では自立してみせると心にも無い宣言をしてやり過ごしたものの、もう既に彼女には父親に宣言した際のタイムリミットが迫ってきていた。

 …実のところ彼女の父親は、いま現在も変わらず愛おしい妻との間に生まれた可愛い愛娘を鼓舞する為に迫真の演技を打っただけで、家から追い出すつもりは毛頭無かったのだが。


 ともかく、そんな心境の最中でもやはり彼女は此の世界に入り浸る事は止められず、個人勢では中堅程度の配信者となっていた【ぴこ】に舞い込んで来た高額な長期契約の配信者活動は大変都合が良く、そして最も先に受けていた【Egoism and the chaos】開発チームの代表から言われていたその息子にゲームの仕組みや抜け穴について入れ知恵をしてやる事も同時に遂行出来たのだから、これほど美味い話は中々あるまい。


 そして今回の任務を終えれば、開発チーム代表の息子との契約も打ち切りとなる代わりに、配信者として所属する事務所からはより待遇の良い本腰を入れた契約の延長の話も上がっており、今後は割と性に合っていた配信者活動を本職に移そうとも考えていた。


 要するに、彼女は舞い上がっていたのである。



 〜〜〜〜〜



「リスナーのみんな、やっほー!初見さんもいらっしゃ〜い!」


 トワイライト・リリックと実際に関わりを持ち、感じたままに報告すること。


 それが今回、ぴこに与えられている簡単過ぎる最終任務だった。


「もっと!もっと食べる〜!」

「なっつちゃんは自分の分を食べたでしょう?」

「でもぉ〜!」

「申し訳ないけれど、もう手土産用に包んだ分以外は残ってないんだ」

「だったら我慢する〜!」


 ネタなのか本気なのか判別がつかないレベルで恋した者特有の盲目状態に見える、パーティーメンバーのるんるんとなっつが両腕にくっついていて動きづらそうな美少女ーートワイライト・リリックへ一瞬だけ視線を向けた。

 腰下まで届く緩く編まれた薄桃色の三つ編みが揺れる度、ふわりと優しい香りの香水が漂い、例え電子の海で生まれ没する存在だと理解していても、女性としての格は遥かにNPCの彼女の方が高いと感じ、周囲の視線を独占する美しい折々の所作には関心すらしていた。


「るーママも、なっつんもっ!配信中は抜け駆け禁止だよっ!」


 だが依頼主は、所詮は人の手によってプログラムされた思考回路しか持たぬNPC相手に何を警戒しているのか?

 頭の回転の良さには自信のあるぴこにも理解は出来なかったが、たったそれだけで漸く平穏と適度な刺激が両立した生活を手に入れられる。

 そう考えれば、いつもより負担の増えたパーティーのまとめ役など苦にもならないし、更に笑みだって溢れ出る。


『待ってました!』

『珍しくぴこがリーダーしてる』

『昼休憩長めだったね〜』


 今回の任務は間も無く終わるし、お土産として配られたクッキーは特別ボーナス扱いに該当するだろうし、プレイヤーズマーケットで売ればかなりの儲けが手に入る。

 感想を言うだけの、至ってシンプルな任務だと気軽に捉えていた。


 ーーピシュンッ!!


 カメラの画角内には一瞬入ったが、アバターには触れなかったから出血はなくギリセーフだとして…

 メイドさんが手の中に出現させる投げナイフを次々と投擲し、貴族の弟さんの方は無詠唱で不可視の【魔法障壁】でしっかり弾いて、軌道が逸れた投げナイフをローブさんがさっきの一本を除けば全て落下するより前に素手で回収している。

 あ、トワさんも素手のまま回収側に加わった…


『今の何!?』

『戦闘の授業は無いって午前中に聞いたんだが!?』

『モフ天はなんだかんだ言って実力派だしな』

『分析してる場合じゃないだろ!』


 目視も許されない速度の投げナイフです、私も聞いてないよ、私達じゃ敵う訳ない、ナイスツッコミetc…

 それ以外にもツッコミどころ満載な最高に撮れ高となりそうな戦闘シーンだったのだが、彼方へカメラを向けないで詮索無用と、事前にクッキーの見返りとして約束してしまった。

 なので、心の中だけでコメントへ言葉を返して配信者の職業病なのか、みすみす撮れ高を逃さなければならない事に涙腺が熱くなるのを感じ、カメラの裏手に回る。


「いっつもッ!義弟の立場を利用しては、トワお嬢様に甘えまくっている癖にッ!!」

「そっちだってッ!専属侍女で同性が云々と語って、美味しい思いをしているじゃないかッ!!」


 字面だけなら醜い争いなのに、目を閉じたとしても双方ともに声がイイので許してしまう自分が悲しい。


「損な役回りなの、僕達だけ?」

「いや、ヴィオはもう休んで。仕方ないから残りは私が取る」


 なんだか精神的な疲労を感じさせる会話も聞こえたが、私の知る由はない。


「後編では冒頭に、今回のコラボ相手さんのご紹介をするよ〜!」


『待て待て待て笑』

『カメラ裏にて怒号が飛び交う配信』

『流石ぴこ、話を聞かない』

『これぞ我らのぴこクオリティ』


 コメ欄へ下手に反応はせず、ダークくん、ベリィちゃん、ソフランくんの三人だけを映す。


「それじゃあ、早速自己紹介へいってみよー!」

「は、はい!っていうより、誰から自己紹介をするんでしたっけ…?!」

「本物のぴこに無茶振り(ファンサ)してもらえてるぅ!」

「二人とも落ち着いて。ぴこさん、僕達も配信始めてから自己紹介に移ってもいいでしょうか?」


『タイプの違う美少女三人組だと!?』

『なにこのかわいいの化身は…!』

『あまり場に慣れてない感じが初々しくてよきよき』


 コメ欄もかなり好感触のようだし、先輩であるならば後輩の申し出にも寛容になるべきケースだろう。


「もっちろん!るーママはサポートに回れる?」

「私は大丈夫だけれど、お手伝いしても構わないかしら?」

「はい!よろしくお願いしますっ!」



 *****



 監視用魔道具を経由して、自室からみんなを観察している。

 この部屋に居る私と控えさせているオーロラ、そして静かにしていると約束をした代わりに隣に座るアトラクト以外の八名は教室におり、授業の準備を進めている教師役のマラカイトも現場で監視役を務めるヴィオも、大画面モニター五つの内三つに映っていた。


「そろそろかな…」


 やがて、カチャンっと音を立ててからソフランの持っていた簡易型カメラ()()()高性能の最新型カメラが起動する。

 私が作った魔道具の中でも現時点では最高傑作と言える作品の、干渉特化タブレットも殆ど差が無く起動した。


『わこつ〜』

『二窓待機してました』


 コメントもしっかりと流れているし、実験は成功と言えるだろう。


『画質が初期カメラのじゃなくないか?』

『言われてみれば確かに』


「まぁ、そうだろうね」


 修復と称してバレないのを良いことに、上位互換の素材の魔鉄で骨組みを作りながら軽量化や容量上限も魔力量にものを言わせて増やしたのだから、品質が上昇していなければ困る。

 と言っても、誤作動を起こしていないので今のところは問題はない。


「二人とも、配置について!」

「おっけー!」

「はいっ!」


『美形しか映らなくて、顔面偏差値の暴力に震えてる』

『後ろに控えてる使用人っぽいNPC達ですら美しい』

『美しきモノだけが生きる世界』

『コッチから見るとぴこが緊張してるような?』

『貴族の後ろ盾があるコラボ相手だからね。コミュ力お化けのぴこでも仕方ないね』


 見ている限り、全員とも問題は無さそうだ。


「オーロラ。アトラクトと経過観察を頼めるかな?」

「はい。お任せくださいませ!」

「私は一足先にダイブして、種を撒いてくるよ」

「お気をつけていってらっしゃいませ」



 ***



【エゴカオ】ゲームまとめスレ7【押し活交流場】



 561:名無しのプレイヤー

 ぽまえら、今日のモフ天の配信も見たよな?


 562:名無しのプレイヤー

 もちろん見たぞ

 新顔の方も最初からな


 563名無しのプレイヤー

 >562

 新顔って?

 残業続きで見られなかった俺にも誰か教えてくれ


 564:名無しのプレイヤー

『ブロッサム』

 本日午後に『モフ天』とのコラボを切っ掛けとして始動した三人組配信者グループ。

 パーティーとしてのレベルは高いが、ほのぼのとした雰囲気で革製のブーツをお揃いで履いている仲良しトリオ。

 突筆すべき点は、全員が魔法適性を二つ保持しており、そのうちのひとつは初期設定で取得しない限りシークレットシナリオ達成報酬でのみ獲得方法が発見されている闇属性である事と、メンバー全員のアバターはフルスキャンであの美形である事。

 当人達曰く、闇属性の獲得方法を喋る事は出来ないが、アバターに関してはリーダーのソフランが北欧系のハーフでキャラクリをするとアバターが変になるので諦めてフルスキャンのアバターにしているのだが、ベリィの負けず嫌いに火がつきダークも巻き込まれてカラーリング変更のみと明言されている。

 ーーーーー

 ・ソフラン

 グレージュでストレートのロングヘアで前髪はセンターパートにしており、パッチリとした大きなペリドットのような瞳が特徴的な美少年で、ブロッサムのリーダー的存在。

 カメラに向かって放つ爽やかな笑顔が特徴的な美少年だが、意外とコチラ側の民でネット用語にも詳しく、一時期別ゲーで噂されていた【神秘的で目立つ情報屋】の容姿と酷似しているが、真意は不明。

 白のハイネックに抹茶色のニットとライトブラウンのガウチョパンツを履いている。

 ・ベリィ

 内巻きにしたフランボワーズのボブヘアに黒に近い青色のキャッツアイが魅力的な美少女で、魚の形をしたバッジが付いた黒の猫耳帽子を被っている。

 最もノリが良く気さくな性格だが、勝負事になると必ず本気で勝ちにいくタイプ。

 緩めの白Tにデニムの上着を着てライトブルーのショートパンツの下にレギンスを履き、スポーツ用の黒い手袋をしている。

 ・ダーク

 緩くウェーブのかかった漆黒のエアリーボブで蜂蜜のような濃い金色の垂れ目が庇護欲を唆る美少年で、焦げ茶のキャスケットを被っている。

 かなり内気でメンバーとの交流でも強く主張はせずにいるが、一歩引いた視点で物事を見ている為か中々鋭い指摘をしたり暴走しがちなメンバー二人を抑制している。

 黒のハイネックの上に白のパーカーを着てデニムジーンズを履いている。


 あくまで俺の主観だが参考にしてくれ


 565:名無しのプレイヤー

 >564

 情報サンクス


 567:名無しのプレイヤー

 今日の座学と実技を見た感じ情報は正確だな


 568:名無しのプレイヤー

 実技対決でブロッサムがモフ天に逆転しかけたシーンには驚いた


 569:名無しのプレイヤー

 配信者としてもプレイヤーとしてもモフ天とのコラボが切っ掛けでこれから開花していくだろうな


 570:名無しのプレイヤー

 今後はブロッサムにも要注目って訳だな



 ***



【エゴカオ】ゲーム内設定考察スレ3【情報求む】



 46:名無しのプレイヤー

 第一回イベント前の仕込みイベは一通り検証し終わったが、発端となった『チュートリアルの悪魔騒動』の実行犯が未だに謎のままだよな


 47:名無しのプレイヤー

 だがその件は、検証班達の一つでも確たる証拠を持って来ない限り、俺たちに出来る議論もただの水掛け論に過ぎないだろう


 48:名無しのプレイヤー

 もっと大々的に検証組を募集してみるか?


 49:名無しのプレイヤー

 >48

 結果的に先生の情報網を掻き回されるだけなので反対

 入ってくる情報の量が増えても質が低下するなら情報の価値も下がる


 50:エタニティ

 今北産業

 遅くなってすまない


 51:名無しのプレイヤー

 噂をすれば影だな


 52:名無しのプレイヤー

 wktk


 53:エタニティ

 今回は手間取った訳ではなくリアル多忙で来れなかったが、それなりに有益な議題の種は見聞きしてきた

 簡潔に言っても興が冷めるだろうし、まずは『チュートリアルの悪魔騒動』の実行犯の正体だが


 彼女は昨晩更新された第一回イベント最凶キャラの中に居る


 54:名無しのプレイヤー

 >53

 なかなか焦らすね


 55:名無しのプレイヤー

 それじゃあ、殺戮の冒険者の正体は、今後実装予定で邪道シナリオのシークレットルートの最凶キャラ且つ、ワールドクエストのキーキャラクターでFA?


 56:名無しのプレイヤー

 言い方から察するに、目撃証言の通り女性キャラNPCなのも確定だな


 57:名無しのプレイヤー

 当時はガセネタ認定されていた証言が正確ならば『小柄な子どもで素早い』『不意打ちなのに一発も攻撃が当たらないでやられていた』『武器は何も装備していなかった』『美幼女様』の四つだな


 58:名無しのプレイヤー

 四つ全てが真実だとすると、該当するNPCは一人も居なくなるんじゃないか?


 59:エタニティ

 今回の情報もその証言四つも、そのプレイヤー達の主観的な意見ではあるが、全て事実だ


 60:名無しのプレイヤー

 全てが事実って事は、魔法薬だな


 61:名無しのプレイヤー

 あぁ、あのご都合主義大好きな奴らが最近記事にして取り上げていた、魔法薬な


 62:名無しのプレイヤー

 それなら確証があるのは、武器も防具も装備していないって事だけか?


 63:エタニティ

 悪いが私用にて今晩は落ちる

 それと、別の話題に変わる為、キミ達が信じる信じないは自由だが


 今回のイベントで『火狐』が戻ってくる


 64:名無しのプレイヤー

 最後の最後で大粒の情報投下するのは、最早先生の十八番だよな


 65:名無しのプレイヤー

 でもまさかここで、検証プレイヤーとして先生を紹介した前任者の名前が出てくるとはな


 66:名無しのプレイヤー

 配信者グループの『九尾』から以前脱退したメンバーだよな?


 67:名無しのプレイヤー

 あれ?『火狐』って少し前に失踪したんじゃ…



 ***



「トワお嬢様。夜更かしをしていては、明日の朝に響きますよ?」

「そろそろ実ってもいい頃だし、今日はもうやめておくよ」

「何事も適度な手入れが一番の養分になりますし、トワお嬢様の仰る通りだと思いますよ」


 星域が重なった事による、偶然からの繋がりだとしても…当時の彼女にとっては、最も頼れる大切な家族だったのだろう。

 そんな存在を私は利用しようとして、その挙げ句…


「トワイライトは頑丈だが、魂の摩耗ばかりは避けて通ることは不可能で、次は恐らく禁術を用いても器となる肉体が耐え切れずに消滅すると、メイからもほぼ確定だと断言されている」

「はい。存じておりますよ」

「オーロラは私の意見に…反対しないのかい?」

「私にとっての今世は、既に失われていたも同じもの。そして二度目の命と父母の命は貴女様の世界での知識があったが故に、今を生きているのです。勘違いなされないで頂きたい点は、私のトワ様への忠誠心は本物だという事です!」

「…そうか」

「反対した方が良かったでしょうか…?」

「いいや、それはオーロラ次第だ。だけど…ありがとうね」

「はいっ!」



 *****



「『火狐』が、俺の箱庭に戻って来る…?」


 紺色の髪の青年は、深みと透明感のあるダークブルーの瞳で羅列された文字の集合体を読み直してから、タブレットのホーム画面にパスワードを打ち込み、幼い少女が笑っている様子の写真を眺める。


「そうか…ゲーム好きなお前らしい選択だよ。俺達も…『九尾』も、強くなったんだ」


 狂気の混じった愛情が、どろりと蕩け出る。


「お兄ちゃんが、迎えに行ってやるからな…『火狐』」

良ければまた読みに来てください。

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