3.謎の電話
●3謎の電話
放課後になった。
先輩をからかいに部室に行こうとしたら下駄箱の前にある公衆電話の前に先輩がいた。
さらさらとした髪はその綺麗な横顔を少し隠しているのがまたいい。いかん変な妄想が頭から出てくる。健全な男子高校生なのだ許してくれ。
くだらないのは横に置いといて、先輩の表情は真剣で声をかけるのをためらう。
「ん?どうしたのコータ」
気付いたのか受話器を置いて出てきたテレフォンカードを抜き取りこちらを向く先輩。
「なんかマジな顔してたんですけど何かあったんですか」
学校の公衆電話を使用するのは大概が帰るのに迎えに来てもらうためで、他は家族が入院していてよくない状態で心配でかけているのが少数でいるぐらいだ。彼氏彼女にかける猛者もたまにはいるが職員室が近くにあるのですぐにお縄になって説教になる。
先輩の電話をかける顔は真面目だった。
おそらく家族に何かあったのであろう。先ほどまで先輩をからかいに行こうとしていた自分を恥じる。
「先輩大丈夫ですか。気をしっかり持ってください」
「?」
「今日は無理せず帰りましょう、部長さんには俺が伝えておきます。たしか電車通学でしたよね。ちょうどいい時間の汽車はありますか?俺は友達から自転車を借りてくるので二ケツして送ります」
ああそれよりも先生に事情を話せば車で送ってくれるだろうか。
「待って。いったい何を言っているの?」
「え、だって危ないんでしょ」
「?」
「??」
二人そろって首を傾げた。下校のために近くを通る生徒たちは変なものを見る目で見ていた。
「どうしてそんなアホな方向に考えがいくの」
俺の行動の原因を聞くと呆れる先輩。
どうも勘違いだったようで家族はみんな元気だそうだ。俺の間違いでよかったよかった。
「でもどうして真剣な顔で電話してたんですか」
そのまま流して一緒に部室に行けばよかったのについ興味本位で聞いてしまった。そしてすぐに後悔することなる。
「知りたいの?」
ニィヤァーと笑みを浮かべる先輩。
あ、ヤバい。この笑みを浮かべるときの先輩に付き合うと碌な目に会わないのだ。逃げることは出来ない。
「どうすれば逃がしてくれますか」
「残念、ラスボスからは逃れないの」
以前にゲームでラスボスからは逃げることがシステム上出来ないことを教えたら絶対に逃したくないときに行ってくるようになった。振り切れれば普通に逃げられるがその後の部室にふてくされた先輩が登場するので非常に面倒くさくなる。
「わかりました。どうすれば解放してくれますか」
降参したのに満足したのか先輩は俺の手を取り公衆電話の場所に連れていく。白い手は小さく力を込めると壊れてしまいそうだ。
「いまから電話を掛けるからそれを黙って聞いてて」
そう言って先輩は俺に受話器を渡してテレフォンカードを入れて電話番号を押していく。
怪しい、怪しすぎる。
最後のボタンが押されると呼び出し音が鳴り始めたがすぐに繋がった。
『迷える子供達よ私の声が・・・』
「ひっ!」
ガチャン。
思わず通話を切ってしまった。
おっさんのだみ声を機械で高くしたような声の不快感に脳が拒絶したのだ。
「あれ~怖くて切ったの?」
ニヤニヤ笑う先輩にイラっとする。
「急に変なおっさんが出たのでちょっと驚いただけです。もう一度かけて下さい」
しょうがないなともう一度かけてくれる先輩。
『迷える子供達よ私の声が聞こえますか』
気持ち悪い声に全身に鳥肌が立つ。
『私はあなた達の心に直接声を届けています』
何言ってんだこのおっさん。
『私は宇宙の意思の代行者です』
やばいぞおっさん。
『今から宇宙の意思によりあなた達の心を浄化しましょう。耳を澄ませてお聞きなさい』
期待してしまうじゃないかおっさん。
『あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』
「・・・」
『あーーーーーーーーーーーーーーーー』
ガチャン
「・・・」
無言で受話器を置いた。
今の俺の表情は先ほど受話器を置いた先輩と同じように真剣な表情に見えているだろう。
「部室に行きましょうか先輩」
「ん」
何も聞かずに二人で部室に向かった。
嫌なものにはさっさと忘れるのがいいのだ。
筆者「他にも大地の女神と海の神がありました」
俺 「実話?」
筆者「実話です。友人お勧めでした」
先輩「どこからその電話番号を知ったの?」
筆者「友人はある筋から入手したと自慢気でした。まともだと思っていた友人にいきなり理解不能なのを勧められたときはショックだったな・・・」
俺&先輩「筆者の学生時代も十分理解不能だと思う」




