2.昼食は焼きそばパンに〇アでしょ
2.昼食は焼きそばパンに〇アでしょ
「ふんふふーん。運良く焼きそばパンとジョ●を買えたな」
機嫌良く廊下を歩く。微妙にスキップ気味なのは購買部で一番人気である焼きそばパンが買えたからだ。
昼休みが始まると同時に起こる購買部前での餓えた生徒たちによる阿鼻叫喚の中から買えたのは奇跡に近い。
中庭にでも行って食べようかなと考えていたら通りがかった職員室のドアが開いた。
「おや?どうして職員室から先輩が」
ドアから出てきたのは先輩だった。
その表情はどんよりとしていて暗い。
俺に気付いたのかトテトテやって来る先輩。
「なんだろういつもはツンツンしていたのに久しぶりに会いにったら嬉しそうに寄って来る野良猫のような」
「誰が野良猫よ」
「ふぐっ」
聞こえていたのか近寄ってきた先輩はそのままローキックをかましてきた。
最近〇―1が人気なのか俺の周囲の人達の武力が上がっているような気がする。断トツに一位は部長さんだ。
「どうして職員室から出てきたんですか」
「・・・」
小声で聞こえなかった。
「え、なんですか?もしかして授業をサボったから呼び出し受けて注意されてへこん痛い痛いっ足を踏むのはダメですっ」
「聞こえているなら聞くな!」
的中してしまったようだ。サボり癖がある先輩が職員室から落ち込んで出てくるのを見たらそれぐらいしか浮かばないのに理不尽だ。
クウゥと先輩のおなかから鳴る。
「おなかへった」
「・・・あげませんよ」
ロックオンされた焼きそばパンとジョ〇を背中に隠す。この先輩は本能に従って動くことが多いので警戒が必要だ。
「・・・いらない。買ってくるから一緒に食べよう。先に部室に行ってて」
そう言って先輩は購買部に向かった。
こちらの返事は聞いていない。
俺が行くことは決定されているようだ。しょうがない後輩は先輩の言うことは従うしかない。
「しょうがないしょうがない」
俺は部室に向かった。
「開かねぇ」
部室を開けようとしたら鍵がかかっていた。
そりゃそうだ部室は音楽準備室でもあるから様々な楽器がある鍵をかけてあるのは当然だ。隣の図書室にある司書室に行けば貸りることは出来るのだが残念ながら部室に存在する部のどれにも所属していないので貸してくれない。
仕方ないのでドアの前で体育座りして待つことにする。
「待った?」
そうしないうちに先輩がやって来た。階段の方からではなく図書室から来たので鍵を持ってきたのだろう。
「ごめん今日は司書がいて貸りられなかった」
すまそうな顔をする先輩。
司書の人は部活がある放課後しか鍵を渡してくれない。昼は殆どおらず生徒の図書委員だったら部室の部員か吹奏楽部なら貸してくれるのだ。残念ながら今日はたまたまいる日だったようだ。
「それは仕方ないですね。なら今日は気持ちいい日差しですから外で食べませんか」
すぐそばにある外廊下に続くドアを指差す。
別棟は外廊下で移動するので普通のベランダよりも広くて所々に休憩用のベンチも設置してある。
先輩もそれしかないと考えてくれたのか同意してくた。
二人で外廊下に出る。運良く近くのベンチには誰もいなかったので座った。
ようやく昼メシが食べれる。
そこそこ腹が減っていたのでさぞかし焼きそばパンは美味しく感じられるだろう。
座ると同時に我慢できずにパンの袋を開けた。そこで先輩が昼食に何を買ってきたのか気になったので先輩の手元を覗き込む。
「おぅ・・・」
先輩が持っていたのはダントツのトップの不人気であるコッペパン。常に購買部の角に最後まで残り続けるもう売らなくてもいいじゃないかと生徒間で話されるパンだ。
「これしか残っていなかったの。ジャムも全部売り切れていて、おまけに牛乳を貰ったけどお腹を壊すからあんまり好きじゃない・・・」
呼び出しされたおかげで先輩の昼食かなり貧しいものになったようだ。
さすがに女子高生には可哀そうだ。
「はい、半分個です。牛乳も〇アと交換しましょう」
仕方ないので焼きそばパンを半分に割り、先輩の持っていた紙パックの牛乳を取ってジョ〇を渡す。
先輩がこちらを見る顔が困惑しているが無視だ無視。
「そっちのパンも半分下さい。さすがに男の俺は食べないと午後の授業が持ちません」
「・・・ありがと」
先輩もパンを割って半分を渡してくれた。大きい方をくれたのは感謝の証だろう。
「あ~ポカポカして気持ちいいですね。このまま昼寝したくなる」
「ん、わかる。でも午後は出ないと反省文を書かされちゃう」
「それは嫌ですね。では予鈴がなるまではゆっくり日向ぼっこしましょうか」
「それいいね」
食べながら二人でだらだらと喋りあう昼休み。これもまた青春かと思った。
「先輩の食べる姿はハムスターみたい」
「私はげっ歯類か」