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俺の体はADHDに操作されている。  作者: アダチヒルデ
3/3

3.走る-ハシル-

更衣室の匂いは好きだ。言っておくが変態ではない。

木製の床と壁。歴代の先輩達の汗を吸い取ったロッカーは床や壁よりも黒っぽく変色し、本来ある木々の心地よい匂いは一切無い。

そんな更衣室に愛着すら感じる。


「おーし!マジで俺やってやんぞー!」

「健次!今日こそあの殺人サーブでよっさんやる気か!!?」

「今日も外すにミルクティー1個」「じゃ俺、当てるにツナマヨ爆弾おにぎり1個な!」


くだらん。そんなもん俺のVP9命中率とは比べ物にならんな。


1番端っこのロッカーで、四次元ポケットのごとくなんでも収納されている鞄に手を突っ込む。

一昨日のプリント、実は持ってきていた弁当(忘れてた)、昨日帰りに買った肉まんの紙、一度も使ったことない新品のヘアワックス…。しかし無い…無い…。カバンの隅から隅まで覗き込んでも俺の体操服が無い。


俺はしくじった。

すぐさま脳内記憶装置を発動。今朝の記憶を辿る。思い出せ、ちゃんと準備したか。母ちゃんからなんか言われてなかったか。そもそも今日の時間割ちゃんと見て準備してたか…。


「ハル、体操服ベランダに干しっぱなしだからね!自分でしなよ!」「おー」


…してねえ。

その会話の後、芸能ニュースであの女優が結婚したってのに気が逸れたんだ。気づいたら出発時間で急いで飛び出した。まさにその時の映像が約4秒ほど脳内に映し出された。


「あっはぁ〜〜〜〜…。」

「え?どしたん?」

「やったわ。体操服忘れた。あーもっと早く気づいてたらさっき友太に借りたのによお〜」

「友太、次美術って言ってたからダッシュすればギリいけんじゃね?」


美術室は体育館から渡り廊下を渡ってすぐの階段を2階、階段の2つ隣の部屋だ。

…いけるか?いや、もしこのまま体操服忘れたって言ったら授業見学できるんじゃ…。


「お前先週も遅刻で体育休んだろ。今日見学になったら補習確定だぞ。」


航介…本当にお前って奴は…


「クッ…行ってくる…」


==============================


俺は急いで靴を履き変え、コンクリートの渡り廊下を全力疾走。

寒い。着替えようとしてセーターを脱いでいた俺は薄着だ。ダセェ。

すっかり昼間も涼しくなってきた今の時期、暑がりの友太が長袖を持ってきているはずはない。


時間ギリギリな上に1人だけ半袖短パンか、恥ずか死しそうだな。だが補習だけは避けなければならない。

そんなことを考えながら階段を1段飛ばしで駆け上がり、勢いよく美術室の扉を開けた。


「ハァ…ゆ、友太は…?」

「(ゲッ寒そー…)」

「あー相田?さっきトイレ行ったけど」

「はぁ!?マジか…体操服借りたかったのに…」


「何、忘れたの?俺の使う?さっき使ったから汗臭いかもだけど」


1組のイケメンモテモテバリバリ陽キャで、女子達から好意の眼差しを集めている八神くん…!!!!


「えっいいの…?まじで…?」

「おぉ、アイツ多分ギリギリまでクソして帰ってこないって言ってたから。放課後返してくれればいいよ」


一生に数回しかない奇跡…!しかもあの超イケメン八神くんの…!

友太、ありがとうな。唐揚げ丼クソほど食ってくれたおかげで今俺は奇跡と直面してるぜ。


友太の【協調】が、八神くんを召喚したのか…。

俺の脳内がすぐに八神くんの情報をインプットした。流行りの髪型、黒髪でサラサラ。肌は白くてニキビなんて一つもない。180cm近い身長にスラっとした手足。股下何cmだよ…あと…指綺麗だな…。

この見た目で初対面の俺にこの優しさをみんなの前で躊躇なく披露するなんて…。そらモテるわ。

この間約0.6秒。


「まっじでありがと!!!!全然臭くないから!むしろフレグランス!!後で絶対返しにくるから!」


俺は八神くんの体操服をありがたく頂戴し、勢いよく教室を飛び出し、自分の教室に向かった。


ちげえよ馬鹿、体育館だろ…!

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