新たな目覚め
「ザガン様、愛しの姫が起きられましたぞ」
執事のダンダリオンが主人のザガンに目配せをする。
「ここでは様はいい。ダン、成功したか?」
執事は首を傾げ、ドアを出るよう進めてくる。
「お会いになるべきかと」
執事の返事を受けて、2人でアナベルのいる部屋に向かう。
ザガンが見た女性は、静かにベッドに横たわっている。赤かった髪は、白に近いシルバーに変わって顔はザガンの美しい顔を生き写したかのような女性版。妹と言ったら誰も疑わないだろう。人並みだった体型もメリハリボディに変わっている。どう見ても10代後半から20代前半の年齢に見える。
「随分と吸収したものだな。適合率の高さに期待が高まるな」
ザガンは、興奮を隠しきれない様子で、独言を言いながらアナベルの頬に触れる。
「私が分かるか?」
ザガンは、アナベルを伺うように話しかける。
「・・・・人攫いで、いきなり私を殺そうとするクソヤロウだ」
アナベルは、無表情で視線も合わせずザガンの問いに答える。
「わはははは!適合は成功したようだな。悪いがその力すぐに見せてもらうぞ」
ザガンは上機嫌にアナベルの肩を掴み揺すってくる。
「何をすればいい?」
「我に力を与えよ!頭にイメージが浮かぶはずだ」
ザガンは上機嫌で答える。
「服と注射器を頂戴」
アナベルは、試練と体型の変化で服をつけていない。
「すでにご用意しております」
執事が用意した服に着替えたアナベルは、注射器を手に取った。
注射器で自らの血を抜き、気を巡らす。注射器が眩しく発光したところで、ザガンの左腕に注射を打つ。
「得たい力を強くイメージして」
アナベルはザガンの後ろに回り、背中に手を当てて何かを調整している。
「それは今は無理ね。次」
「それも欲張りすぎね。次」
「やっと身の程に合ったリクエストね」
アナベルは、頭のなかに流れてくるイメージに沿って、ザガンに気を送る強さを高めていく。
「気合い入れて耐えてね。今度はあなたの番よ」
ザガンは震え出し、人の姿から牛の顔に茶色翼を生やした筋骨隆々な魔族の姿に変わっていく。
激しい光が部屋を満たし、落ち着いてきたときには、頭に大きな角が2本、いままでより威厳のあるものに変化していた。
「力が溢れる。今までの力は児戯だな。よくやったDr.アナベル。これほどとは驚いた」
ザガンが力を確かように手のひらを握ったり、ゆるめたり感覚を確認している。
「私にも分からないけど、感覚で何が出来て、何をすべきなのかを感じたのよ。上手くいったみたいね。
まだ、本調子じゃないから少し休むわ」
だるそうに布団のなかにアナベルがもぞもぞと入り込む。
「あぁ、期待以上だ。今は休め」
ザガンは上機嫌で部屋を出ていく。アナベルはまた、ゆっくりと眠りの世界に落ちて行った。