魔族の住処
白衣姿のアナベルと魔族であるザガンを取り巻く、白い光が薄れていく。目の前には大きな門があり、奥には大きな屋敷が見える。いかにも魔族がいそうな不気味な雰囲気を醸し出している。
「ついて来い」
ザガンはそう言うと屋敷に向かって足速に進み出す。
"嫌な予感しかしないわね"
アナベルは、周辺を見渡してゲンナリする。
「おかえりなさいませ」
屋敷の入口に近づくと、執事風の初老男性が出迎えてくれる。見た感じ人間そのものだ。
「ダン、頼む」
ザガンはそのまま、屋敷内を進んで行く。
「初めまして執事のダンダリオンと申します。主のお客様をお迎えできて光栄です。ようこそいらっしゃいました」
執事は丁寧な対応で歓迎の意を示してくる。
「それはどうも。アナベルよ。牢屋で拷問される訳ではないのね」
アナベルは少しでも情報を得ようと冷静に辺りを見回し、初老男性を警戒する。
「アナベル様は大事なお客様。丁重にご対応させていただきます。まずは、ゆっくり休まれましたら、お知りになりたいことを明日にでもお答えいたしましょう」
執事のダンダリオンは丁寧な仕草を崩さない。
「なんの為につれて来られたかだけでも教えて、気になって休むどころじゃないわ」
アナベルは、話がつなげていく。
「主のザガン様は、あなたの研究者としての能力・実績を高く買っておいでです。必要な時にご協力いただければ、快適な生活を保証されるでしょう。」
執事は、躊躇いなくアナベルに答える。
「分かったわ」
アナベルは執事に従って、案内された大きな部屋で一夜を明かすのであった。