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逃亡
「くそ、どこに行った?」
先程まで、白衣の女を追いかけていた隊員が突然目標がいなくなり混乱している。
「隠し扉や魔法装置が無いか、徹底的に調べろ」
隊長らしき人物は、一緒に追走していた約10名程度の部下に指示を出す。
「ところで、先程追いかけていた女は何者ですか?」
隊員が隊長に問いかける。
「機密事項だよ馬鹿野郎。とんでもない悪なのは間違いねぇよ」
"帝国のマッドサイエンティスト"
それが彼女の呼び名だ。人体実験による兵力強化、魔物の改造、ゴーレムの製造など戦争の危険度を一段階も二段階も引き上げたと噂されている悪魔、それが彼女だ。
普段は、帝国の奥に引きこもってる彼女が前線に出てくる情報を敵対する王室諜報部である彼らが掴んだことで、実施されたオペレーション"悪魔の鳥籠"。
成功したかに見えた作戦も最後の最後で詰めが甘く、目の前で手のひらから対象が滑り落ちた。
「逃したなんて報告したら軍法会議ものだな」
分隊長のマークスは、頭を抱えるも捜索結果は芳しくなく、やむなく撤収の合図を出すのであった。