四天王第三席、君の心に筋肉を!
次の四天王の元まで直接来た訳なんだけど……。
「んんん!!マッソーー!!」
「いいぞお前達!!その調子だ!あともう100セットだ!」
「「おおおおおおおおおおおお!!!!」」
「さあ!唸れ筋肉ーー!!」
「「「マッソーーーー!!!」」」
なんだこの空間……。
「……」
あまりの光景にフロストさんもめっちゃいい笑顔で固まってるし。
ハズキさんはなんかめっちゃ獰猛な目付きで何かやる気だし。
伊達さんは何に当てられたのかえずいてるし。
「おや!君達は勇者一行!成程彼を倒して来たか!!それならば良かろう!私と勝負だ!!」
ようやくこっちに気付いたみたいで、耳が痛くなりそうな大声で宣言して、最後には決めポーズ、その格好のまま全身の筋肉が一箇所づつ異常な速さで動いてる………。
俺も気持ち悪くなって来た……。
「しかし私達は戦闘は好みではなくてね!今回は試練としてみた!」
「試練?」
どうやらこの人は戦闘ではなく試練を与えて来るみたいだ。
「そうだ!そしてその試練の内容とは!!」
そこで一拍置いたタイミングで上から何かがとてつもない衝撃と爆音で降ってきた。
「これは私の愛武器!肉体言語くんだ!!君達にこの武器を10秒間持ち上げられればクリア!なあに簡単な重量挙げさ!!」
そう言って笑いながら片手で持ち上げているのは、異様な程に巨大な重り、しかもその重りからは何故か湯気が立ち上ってる謎のバーベル。
いやこれ持ち上がるわけないでしょ。
「今回は特別にこの武器の能力を見せてあげよう!」
そう言って来たので遠慮無く見させてもらう。
肉体崩壊圧殺鬼 神器 品質SS+
名前:肉体言語くん Lv32
耐久値:2,929,292,929 攻撃力:筋力値依存
スキル:攻撃力上昇(極)、気力強化、ビルドアップ、鬼神
加護:筋肉神の加護
見せてもらって驚いたのは、まさかの神器だった事、この人サラッと凄い武器を持ってるけど、これってそもそも持ち上がるのかが分からなすぎる。
てか筋肉神ってなんだよ!?そんなんいるのかよこの世界!?
「ただやっても持ち上がりはしないだろうからな。その武器のスキルを使うことは許可しよう!それでもダメなら他の手を使って頑張るんだな!」
説明は以上だと言うように、また元の位置で筋トレを始めてしまった。
「どうする?」
「先ずは普通に持って見るか……な!くっ……」
取り敢えずということで素の状態でハズキさんが持ち上げようとしてみたけど、全く動きすらしなかった。
「これは中々に骨が折れそうだね」
こうして色々と試行錯誤していく中で、一つ分かった事があった。
実はこのメンバーの中では俺が一番筋力値が高かった。
と言うのも、フロストさんは全体にバランスよくステータスを降っていて、ハズキさんは槍を扱うために器用値や敏捷値に振り分けていて、伊達さんは魔法職だからそもそも論外。
という事で俺は、3人から出来る限りの支援を受けつつ、自分でもステータス上昇系のスキルを多用する。
「後はこいつのスキルを使って……はあぁぁぁぁ!」
すると今度こそ武器は中に浮き、俺の頭上で揺れ動く。
やばい!これ重すぎだろ!
目の前には試練のだろうカウントダウンが表示されて、あまりにも長く感じる10秒間を、俺は必死に耐え抜く。
「3!」
「2!」
「1!」
「うおおおおぉ!!」
「「「0!!」」」
部屋中に謎のファンファーレが鳴り響く中、やっと終わったことで一気に脱力すると、当然支えを無くしたバーベルはとんでもない質量で落ちてくるわけだけど。
いつの間にか隣にたっていた四天王の……ガッズさんが、今さっきまで必死になって持ち上げていたバーベルを軽々と抱えて、倒れそうな俺の体を掴んで支えてくれた。
「ナイスマッソー!いい筋肉だ!これからは君も我が人体切断体操クラブの会員だ!」
いや……それは遠慮したい……。
この時俺は、このゲームで初めてのユニークスキルを取得していた。
肉体言語
日々筋肉で語り合ってきた者に与えられる勲章。
常に筋力値が倍になり、一部効果をアクティブにする事で、常に体からは湯気が立ち上り、動く度に輝く汗が漲る特殊スキル。
正直に言おう、めっちゃ要らない。
最初の効果はいい、別にマイナスにはならないし、だけのあと二つがマイナス過ぎる。
この機能がアクティブになる事は永遠に無いだろうと心から誓った。
何にとは言わないが。
「これで君も見事な筋肉が身に付いたことだろう!」
「そ、そうですね……」
「さあ!次の筋肉の扉はあそこだ!より一層筋肉に励むといい!!」
もう筋肉しか頭に入らないから何言ってるのか全く分からない。
示された場所まで向かうと、また同じ転移陣が置いてあったから、今度はそのまま転移して行った。
と言うか、早くこの場から離れたい……。




